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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
7/22
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7:00

仕事が終わったのが明け方になってしまったので、同じ時間に上がったキャストたちと一緒にカフェのモーニングを食べて家に帰宅する。


すると、ふわっと生暖かい風がそよいだのを感じ、俺は焦って部屋に入るとベランダの窓が開けっぱなしになっていることに気づいた。


いつも注意しているのに時々忘れてしまっているのか、数cm開いた窓に謝罪しながら閉める。


これから戸締りしたかしっかり覚えておくために外出する度に写真を撮るかと戸締りの案を考えながら、服を着替えて昨日天ちゃんと約束した公園に行く。


少し早めに着いてのんびりしてると、携帯に電話がかかってきたのですぐに出る。


『ご、ごめんなさい!今起きました!』


ドタバタと足音が聞こえながら天ちゃんが謝る。


夏「おはよう。ゆっくりでいいよ。」


天『時間は有限なので!10…、7…、5分で行きます!』


と言われて、そのまま電話を切られた。


時計を見ると待ち合わせ時間の15分前。


全く慌てなくていいのになんであんなに慌ててたんだろうと考えていると、大きいカバンを持って息を切らした天ちゃんがやってきた。


夏「待ち合わせ時間、余裕に間に合ってるよ?」


天「父に待ち合わせ時間の30分前が本当の集合時間だと言われてたので…。」


他にどんな教えを受けているんだろうと興味を持ちつつ、近くにあった自販機で飲み物を買って天ちゃんにあげる。


天「いいんですか!ありがとうございますっ!」


朝起きたてなのによくそんなに元気でいられるなと羨ましがっていると、天ちゃんは早速カバンを広げて俺の浴衣を見せてくれる。


その浴衣はモスキーな水色の生地で袖口が淡い虹色になった不思議なデザイン。

天ちゃんに手渡されて、太陽にその袖口を照らしてみるとラメが輝き、金の糸が蜘蛛の糸のように見え隠れする。


夏「こんな生地あるんだね。」


天「子どもの用の帯って可愛い色合いの多いんですよ。」


夏「これ帯なんだ!すごいなぁー…。」


俺は感心しながら天ちゃんにされるがまま、浴衣を着せられる。

帯は表が淡い茶色で裏が黒に近い濃い茶色のもので、濃い方を少し見せて差し色効果を狙ってるらしい。


夏「すごい!これ、1人で作ったんだ?」


天「はい!第1号です!」


夏「え!?俺のが第1号で良かったの?」


天「人生の恩人さんなので当然です。」


天ちゃんは目を輝かせて、俺の嬉しくて笑ってしまう表情を見て笑顔になる。


夏「俺、幸せ者だなぁ。」


ずっと思っていたことを口に出すと天ちゃんが驚いた顔をする。


天「こんなので幸せだなんて…」


天ちゃんはなぜか俯き、体を縮こませる。

まだ、自分の作った作品に自信がないのだろうか。


夏「天ちゃんが作った服を着られる俺は幸せ者だよ。今度、お友達の分が出来たら写真送って?」


天「…はい!」


顔を上げた天ちゃんは目を潤ませていた。

まだ自分の作品を誰かに見せたことがなくて自信がなかったのかもしれない。


俺も初めて絵の具で描いた絵は隣にいた子より下手くそで、家族の誰にも見られたくないって思ったけど熊谷さんがたくさん褒めてくれたから自信を持って見せられるようになった。


元々俺はたくさんの色があるのが好きだから天ちゃんが取り入れてくれたこの透けてる虹の袖が1番のお気に入り。


俺は天ちゃんに作ってもらった浴衣をカバンに大事に閉まって、今度お礼にご飯をご馳走する約束をして家に帰った。





→ 未完成フューチャー

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