22:00
今頃、マサキさんは初恋の人と最後のデートに向かってる頃なんだろう。
俺は休憩室の時計を眺めながらマサキさんの告白が成功するように祈っていると瑠愛くんが仕事を終えて帰ってきた。
夏「瑠愛くん、おはよ。」
瑠愛「おはよぅ!優くんあと1時間で終わりだね。」
夏「うん。多分もう入らない気がする。」
瑠愛「俺も思った。」
と、瑠愛くんはお茶を作り、俺を誰もいないベランダに急に連れ出して合宿の話を色々と聞いてくる。
その中で1日目の夜に起こったことが頭にちらつき少し顔を歪めてしまうと、瑠愛くんは不思議そうに俺の顔をまじまじと見てきた。
瑠愛「なんか嫌なことあった?」
夏「あるけど…。」
瑠愛くんに言うべきなのか?
でも、もしかしたら瑠愛くんは酔ってて覚えてないかもしれないし、好きな相手は男の子らしいし…。
瑠愛「悠ちゃんじゃないの?」
俺はその名前に驚き、素直に反応してしまうと瑠愛くんはその様子を見て笑う。
夏「…瑠愛くんはホテルで起きたこと覚えてるの?」
瑠愛「覚えてるよー。あんな可愛い子の記憶なくしたくない。」
冗談交じりな話し方で何が本当で嘘なのか区別をつけるのが難しい瑠愛くん。
それでも悠はキスをしてもらったと言ってたからそれは本当の事なんだろう。
瑠愛「なんで悠ちゃんがあんな子になっちゃったか、分かる?」
夏「え?そういう事してるのが好きなんじゃないの?」
瑠愛くんは口をへの字にしながら違うと言う。
けど、俺にとって好きだからそう言う事するって知識しかなくてどんなに頭の中で考えても答えは出てこない。
瑠愛「きっと、悠ちゃんは自分の体を使って自分が生きてるって実感が欲しいって思ってるんだよ。」
夏「どう言う事?」
瑠愛「悠ちゃんは少し心の風邪を引いてるんだ。それが少し変わった行動を取らせてる。お客さんの中でも体に傷が同じ部位に複数ある子とかいたでしょ?その子たちと一緒。」
夏「…自分で自分を傷つけにいってるってこと?」
瑠愛「うん。女の子なりのリスクがありながら不特定多数の人とホテルに行っちゃうのはそのせいだと思うよ。」
夏「なんで自分の体を傷つけるんだろうね。自分しか大切に出来ないものなのに。」
俺は痛くもない二の腕をさすり、昔の思い出を取り払う。
瑠愛「悠ちゃんになにが起きたのかは知らないけど、小さい頃に性的なことされてトラウマになったり、周りの人間から愛情を受けられてないって感じる子とかがそうなりやすいんだって。」
瑠愛くんは自分の服をめくり、お腹を見せてきた。
するとそこには綺麗に割れてるお腹の上に細くも長い1本の傷跡があった。
瑠愛「若気の至り。腹筋で隠してるけど、明るいと見えやすいんだよね。」
瑠愛くんは俺の手を取ってその傷口に触れさせる。
瑠愛「こんなに浅い傷じゃ死ねないって分かっててやってるんだよ。でも死にたいほど嫌になることがたくさんあって耐えられなくなる。
その時に自分を傷つけた痛みでやっと自分の存在を認識出来るんだ。」
真剣な顔をした瑠愛くんはそのまま俺の手を握り、話を続ける。
瑠愛「悠ちゃんも自分の体を快楽に溺れさせることで現実逃避してる。体に残さないけどしっかりと自分を傷つけちゃってるんだよ。だからあんまりきついこと言ってあげないでね。」
夏「…分かった。」
瑠愛「悠ちゃんに誘われたら俺も呼べばいいよ。優くんの代わりにたくさんしてあげる♡」
瑠愛くんはいつも通りの笑顔を俺に見せて、お茶を飲み干した。
俺は悠に冷たくしてしまったことを反省し、瑠愛くんが知るその感情について時間が許す限り聞いて見ることにした。
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