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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
7/19
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12:00

今日は祝日だから平日よりお客さんが普段より多く来る。

俺は昼からシフトに入り、今日の予約客の名前を見て驚く。


マサキさんがこんなお昼から予約を取ってさらに14時から21時までのロング指名。


…また、好きな人とあったんだろうか?


俺は不安のままフリーのお客さんを終えてマサキさんが待つ、ホテルにいく。

インターフォンを押すとすぐにマサキさんは出てきて、少しクマが出来てしまっているのに目がつく。


マサキさんをベッドに座わらせ俺がどうしたのか聞くけれど、少し待ってと言って自分の気持ちを整える時間が欲しいと訴えたので俺はマサキさんが話出すまでずっと手を握ってマサキさんの横顔を見つめ続けた。


マサキ「…今日ね、好きな人とデートしてくる。」


重い空気の中、明るい情報を俺に教えてくれるマサキさん。


夏「良かったね。向き合う事に決めたの?」


と、聞くとマサキさんは首を振った。


マサキ「その子の将来のためにきっぱり気持ち切る事にしたの。」


夏「…デートするのに?」


マサキ「うん。初めて好きな人とちゃんとしたデートしに行くの。それでその子が私が嫌いになってくれるように気持ち切ってくる。」


マサキさんは話しながら大粒の涙を流し始める。


マサキ「恋人になれなくても友達ではいたいって思ったけど…、そんな事したらあの子はずっと私の側にいちゃいそうなの。だから今日で会うのはおしまいにする。」


言葉の決意と反比例して離れたくないと言わんばかりの涙を流すマサキさん。


俺は涙ですっぴんになってしまった目元を拭いて、マサキさんが落ち着くまでひたすら抱きしめて手を握り返す。


夏「マサキさんは本当に会うのやめちゃうの?」


俺はマサキさんの初恋の人を想う気持ちを見てもらい泣きする。


好きなら会える時に会ってほしい。

会えなくなってしまった時の寂しさは痛いほどよく分かるから。


俺のこの質問で思いとどまってほしい。

そう、俺は思ってしまった。


マサキ「その子のことずっと見てるって約束したり、その子が頑張ってることを応援しに行くって言ったけどそれは会わなくても出来ること。

この時代はどんな人もネットで追えちゃうから便利だよね。」


無理して笑うマサキさんの顔は俺の涙で歪んでまともに捉えられない。


夏「会いたいなら会おうよ。会えなくなってから会いたいって思ってもどうしようもないよ?」


マサキ「…優くんはどの子にも優しいね。でも、その子の前では女の子の“さきちゃん”で一生生き続けたいの。

だから、私は女の子のままその子の前からいなくなろうと思う。」


どんなに涙が出てもマサキさんの決意は揺るがないらしい。


少し昔に起こったトラウマがマサキさんの心境を変化させた話を聞いたけれど、それはマサキさんのせいではない。


けど、自分の心と体が合わなくなってたくさん悩んだのも、人を信用しにくくなってしまったのも、マサキさんが好きと思える人なら受け取ってくれると俺は期待していたけど…、ダメなのかな。


マサキ「だから、今日はめいいっぱいおしゃれするんだ。」


マサキさんは自分の膝にティッシュを置き、自分の顔と俺の顔に流れた涙を拭き取る。


マサキ「優くんにギリギリまで元気つけてほしくてロングにしちゃったの。…いいかな?」


マサキさんは泣き晴れた顔で笑顔で俺を見てくる。


夏「もちろん!うんと綺麗になろう!」


俺はマサキさんの今思う願いを叶える。

それだけのために呼ばれたんだ。


俺たちは仮眠を取る前に冷蔵庫で冷えた水で腫れた目を冷やす。


少しでもマサキさんがその時間を楽しめるように俺は腕利きの美容室予約、お世話になってるBAさんに連絡してメイク方法を教えてもらい、いつも以上に可愛いマサキさんを作った。





→ fish

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