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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
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12:00

雨音を聞いて、昨日洗濯物を干したままにしてしまったことを思い出し飛び起きる。


土砂降りの雨で水浸しになってしまった合宿で着た服たち。


俺は最悪な起床をしてまずは洗濯機を動かし、朝ご飯を食べてキャンバスを準備する。


今日は夕方から終電頃までの時間だけのシフトにしてもらったからJ ORICONNの絵に集中出来る。


俺は道具をもろもろ準備を終え、普段より大きめのキャンバスを目の前に少し頭を悩ます。


なにを表現して天の川を描いていくか。


それが俺の中で絵を描く時にいつもつまずく所であって、応用力のない所。

普段はネットでテーマの一言を検索し言葉遊びされたものを上手く利用してきたけど今回はそれをやらず、今の自分を頭を使って表現していきたい。


日本最大級のアートコンクールだからこそ、普段やってる事では入選なんかしないだろう。


…けど、いいアイデアが思いつかない。


俺はその場で寝そべって窓から外の空を見る。


雨が降るのは地上の世界と天の世界との秩序を保つために海の神が降らしてると熊谷さんが言っていたことを思い出した。


熊谷さんはそういう作り話が好きでいつも一緒に暮らす家族を楽しませていた。


俺もその話を楽しんでいた家族の1人。


けど、中学を卒業するまでに経営難と度重なる不幸なことがあり、みんなとバラバラになってしまった。


何度か文通をしていた子たちとはもう連絡はつかない。

俺が何度か手紙を送っても返ってこないからきっと引っ越してしまったんだろう。


俺はそのまま高校生になって1人暮らしをしてぎりぎり暮らせていたけど、ふとみんながいるあの熊谷さん家に帰りたいと思ってしまう。


俺はみんなのことを思い出して涙で空が歪む。


ずっとみんなといれるって思ってたけど、時間が進む度一緒にいることが難しくなってきて最終的にはいなくなってしまう。


それは今でも大切な莉李と同じ。


卒業しても一緒だよと言ってくれた莉李は突然別れを告げられ、知らない間に引っ越してしまった。

どうして大切な人はどんどん俺の前からいなくなってしまうんだろう。


失わないように言葉選びも行動もしっかり考えてやっているのに、それでも俺には何も残らない。

俺の手元にあるのはお金で買った物たちと自分が描いた作品くらい。


今は沙樹や愛海たちが側にいてくれてるけど、社長に俺の仕事をバラされたらきっと離れていっちゃうんだろうな。


俺なんかを遊びに誘ってくれる存在がやっと出来たのに、2年も保たないないなんて悲しい。


もっとみんなと遊びたいし、出来るなら卒業旅行も何の心配もなく行きたかった。

沙樹と初めての飛行機に乗りたかったし、愛海の親戚の家でソーキそば食べたかった。


3人で行くために貯めている旅行費も意味がなくなんて思いもしなかったな。


…もし、旅行に行けなかったら何に使おうかな。


俺は絵を描くことを忘れ、数ヶ月後の自分を考えながら日暮れまで時間を無駄にした。






→ ひとりぼっちと未来

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