7:00
「俺、分からないです。」
この言葉を何度言っただろうか。
俺は社長に合宿終わりのクラス会があった夜のことを尋問されながら時間が早く過ぎろと願うしか、出来ることは無い。
社長「背格好も、髪型も、首の後ろにある可愛いホクロが一緒でも別人なのかしら。」
…知らなかった。
俺の首にホクロがあるなんて。
俺は手で反応してしまい、そうになったのをとっさに隠して自分の手を組む。
夏「んー…、その人にゴミがついてたのかもしれませんね。俺は仕事で群馬の方に出張していたので。」
社長「…そう。そこまで偽るには何かしら理由があるのよね?」
と、社長は携帯の画面を俺に見せてくる。
その画面には愛海のお父さんの車がバッチリ写っていて、ナンバーも後ろの扉に貼られているポップな犬のシールも綺麗に写っていた。
社長「お友達にこの仕事の事、知られてもいいのかしら。それとも呑みすぎて忘れちゃったのかしら。」
社長は楽しそうに証拠で俺を攻撃してくる。
なんでこの人は俺を追い詰めることばかりしてくるんだ。
そんなことしても俺はお前の手の内に入らないことは決めているのに。
夏「仮に俺だとして、それをどうするんですか?」
社長「チラシでも配りに行こうと思ってるわ。」
そう言って楽しそうに計画を口走る社長。
夏「…社長は俺にどうしてほしいんですか?」
社長「…買ってる間は、名前呼びって言ってるでしょ?」
社長の声が低くなり、高圧的になる。
少しでも対応を間違えるとこの社長は俺を睨みつけて心を潰そうとしてくる。
…早く、時間過ぎてくれよ。
夏「すみません。…ナツメさん。」
社長「私と一緒にお金儲けしましょう。」
社長は俺の手を取って気持ち悪い力加減で握りしめてくる。
弱くも強くもない、中途半端にけれど俺からは離れられない力強さがあって社長にはあんまり手を握られたくない。
社長「ひたむきな優治はいい仕事が出来る人だと見込んで言ってるの。安定するまで生活費は保証するわ。」
生活費は保証するから私の物になりなさいってことか…。
俺は瑠愛くんから聞いたツツミさんという存在を思い出した。
まだ会ったことないツツミさんにこう思うのは失礼だと思うけど、俺はあなたみたいな人にはなりたくない。
どんなに金や生活を安定させたくたって、人の言いなりになる人生を選ぶなんて俺には選べないし選びたくない。
それならやりたいことをやって野垂れ死にたい。
金がなくても最低限、自分のやりたいことや自分が大切な人と思える人が側にいてくれれば人生が幸せと感じられた俺はその選択肢を選べない。
夏「ごめんなさい。今の昼職が楽しくてしょうがないんです。それが落ち着いてからゆっくり考えさせてくれませんか?」
社長「…じゃあ、また来週ね。」
社長がそう言うとちょうどアラームが鳴り、この地獄の時間が終わってヨダレでべたついた体を洗い流し俺は家に帰ってすぐに眠りについた。
→ High Hopes




