7:00
昨日なんで社長に気づかれてしまったのか、声をかけられてしまったのかが気になって眠りが浅く酒を呑んだ朝でもしっかり眠ることが出来なかった。
俺は仕方なく、気を紛らわせるためにまだ涼し気な時間から近所を散歩することにした。
じめっとしているけど日中よりはるかにマシな気候でまだ地面も暑くない。
この間の公園まで行って美味しいお弁当でも買おうと思い、この間家出少女に出会った公園に向かう。
ゆったりと歩いているからか時間が進むごとに俺を差す熱は高くなってきて、汗が出てくる。
帰ったらシャワー浴びとかないとベタついてしょうがないな。
俺は持ってきた保冷剤をハンカチで包んで顔の火照りを取りながら目当ての公園に着くと、この間行った時より賑わっている声が聞こえ、覗いて見ると公園全体を使って朝市をやっていた。
朝採りたての野菜や小さい瓶に入った黄金のはちみつ、弁当やドリンクはもちろん雑貨を売ってる人もいた。
たまに散歩には来ていたけど、土曜に朝市を開いてるとは知らなかった。
俺はいろんな店の物に目を奪われながらその朝市の時間を楽しんでいると後ろから俺の名前を呼ばれ、後ろを振り返るとあの家出少女の天ちゃんがいた。
この間は長袖を着て暑そうだったけど、今はレース生地でふんわりとした淡い黄色のノースリーブワンピースを着て嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。
天「夏さん、この間はありがとうございます。」
と、お礼を言って頭を下げる天ちゃん。
夏「いえいえ。あの後お兄さんと会えた?」
天「はい!色々あって夏休み中は兄の家にいることにしたんです。」
夏「そうなんだ!仲直り…?出来たみたいで良かった。」
天「…あの!この間のお礼させてください。朝ご飯まだ食べてないですか?」
夏「別にいいよ。ご飯がまだだから弁当買いに来たんだ。」
天「じゃあ、一緒食べましょう!オススメのハンバーグ弁当あるんです。」
と言って、天ちゃんは俺の手を引いてオススメのハンバーグ弁当を買ってくれ、空いていたベンチで食べることになった。
夏「天ちゃん、服作るんだ。すごいね。」
俺は肉汁をお米に降らせるハンバーグを食べながら天ちゃんの将来の夢に向けての話を聞かせてもらう。
天「全然。まだ3つくらいしか作ったことないです。」
夏「それでもすごいよ。じゃあ、将来はデザイナーさん?」
天「んー…。デザイナーじゃなくても可愛い服と関われるお仕事がしたいです。」
夏「いいね。今のワンピース、可愛い天ちゃんに似合ってる。」
天「…!夏さん、恥ずかしいです。」
天ちゃんは少し恥ずかしそうに頬を染めながら嬉しそうな声でそう言った。
俺はいつも他人に気に入ってもらうために良いものをすぐ褒める癖が今の仕事で身についてしまった。
可愛いも、好きも、1番も、お客さんや周りの大人にはスラスラと言えるようになっていた。
そんな俺の言葉にこんなにも純粋に受け取ってくれるなんて、この子はまだ無垢なんだろうな。
夏「そんな可愛い天ちゃんの夏休みの予定は?」
天「もう、やめて下さいよぅ…。浴衣作りです!」
夏「浴衣も作れるんだ。すごいな。」
俺は驚きながら、合宿中に花火大会行った時に愛海の甚平を借りたことを思い出した。
天「今度、兄の友達たちと一緒に花火して遊ぼうって思ってて。」
夏「いいね。夏休み満喫してるね。」
天「でも浴衣作るために花火を提案しただけなんですけどね!」
と、天ちゃんは笑顔でどんな浴衣を作るか構想したことを話してくれる。
その話はこの間、ここで泣いていた子とは思えないほど輝きに満ちた顔と言葉で楽しそうに話す。
こんな人が作る服を1番に着れる人たちはとても幸せ者だと感じてしまった。
1作品に対して、まだ出来上がってもいないのにこんなに語れると言うことは本当にその人の事を思って作ろうという意思が強いんだと思う。
夏「…いいな。」
俺は、思わず本音が出てしまう。
天「ん?…あの、夏さん。よかったら浴衣作らせてもらってもいいですか?」
天ちゃんが俺の思いに気づいた訳でもなく、そう言ってくれた。
天「この夏休み、たくさん服を作って将来のために練習したいんです。私のために協力してもらえないでしょうか?」
天ちゃんは俺に頭を下げてそうお願いしてきた。
夏「俺、天ちゃんに浴衣作ってもらえるの嬉しい。よろしくお願いします。」
と、俺も頭を下げて天ちゃんにお願いした。
天「やったー!ご飯食べたら採寸しますね!」
天ちゃんは嬉しそうに笑いながら、後3口で食べ終わる弁当を食べ進める。
俺も弁当を食べて天ちゃんに採寸してもらい、出来上がりを教えてもらうために連絡先を交換してから俺は安眠が出来そうな家に帰った。
→ Carnival!




