7:00
晴れた朝日の元で沙樹たち班長が前に立ち、ラジオ体操の手本を見せるのを俺の少し前で愛海とダラダラ動いている悠が真似する。
その様子を体を動かしながら見ていると、普段より悠の笑顔が多い気がする。
昨日のことがあってから、どうしても悠の背中を目で追ってしまう。
…なんで泣いてまで俺を求めたんだろうな。
すっきりした悠の横顔を見ながら他人の欲について考えていると、隣にいた永海が俺の顔を覗き込んできた。
永海「夏って付き合ってる人いるの?」
と、突発的な質問をする永海に俺は驚き、体操がぎこちなくなってしまう。
夏「いや、いないよ。なんで?」
永海「カナエの彼氏が4時から電話掛けてきてずっと喋ってたらしいんだよねー。」
と、永海は俺の質問を答えずにクラスメイトの話をしてきた。
永海「いつも夏は携帯いじってるから彼女いるのかなーって思ってた。」
ああ、そういうことか。
俺はみんなに見えないようにお客さんとメッセージをやりとりしてたけど、結構時間使ってたんだな。
夏「仕事先から色々とメッセージ送られてくるから返さないといけないんだ。」
永海「そっかー…。いつもお疲れ!」
永海は明るい笑顔で俺に労いの言葉をくれる。
その笑顔が俺の悩みを飛ばし、元気づけてくれるから心強い。
夏「ありがとう。永海もこの間バイト大変だったんでしょ?お疲れ。」
永海「ん?ありがとう。」
永海は少し疑問がありげな表情をして首を傾げながらお礼を言う。
永海「そういえば、悠とどこ行ったの?」
夏「え…っと、どこ…?」
昨日の夜のことを思い出し、つい悠に視線を向けてしまう。
正直に話すことはないけど、突然のことに俺は分かりやすく焦ってしまった。
永海「あー…!告白?」
いたずら好きな子どものように無邪気な笑顔で永海は俺の事をいじる。
この感じが莉李と似てとても落ち着く。
永海の笑顔はみんなを笑顔にするパワーを持っているから俺も自然とにこやかになる。
夏「違うよ。悠が散歩したいってわがまま言うから付き合っただけ。」
永海「ふーん。わがまま言ったら付き合ってくれるの?」
夏「…限度はあるよ。」
俺は目線をそらしながらごまかす。
その顔を見た永海は笑いながら自分の両手を合わせ、俺に1つのお願いしてきた。
永海「じゃあ、私と流星群見に行こう?」
夏「…流星群?」
永海「うん。8月12日の夜から13日の夜明けまでがピークなの。」
12日から13日の夜明けまでか…。
流星群は見たいけど、夏の夜は稼ぎどきなんだよな。
プライベートはなるべく削って稼げる時に稼ごうと思っていたけど、流星群っていつも見れるわけじゃないし見れる時に見た方がいいよな…。
永海「…難しいよね。」
俺が返答せずに黙り込んでしまったからか、永海が少し落ち込んだ声でそう言った。
夏「予定空けるよ。俺、流星群見たことないから見たい。」
永海「え、いいの?」
夏「バイト終えてから集合になると思うけど、それでもいいなら。」
永海「大丈夫!楽しみにしてるね。」
永海は春の木漏れ日のような優しい笑顔で、楽しそうに最後の深呼吸をする。
俺はラジオ体操が終わったすぐに携帯を取り出し、予定を忘れないようメモしてみんなと朝食に向かった。
→ 星降る夜に




