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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
7/13
40/188

22:00

明日の合宿の持ち物は全部キャリーケースに入れられた。


あとは集合場所の駅に遅刻しないで行くだけ。


俺は寝る準備を始め、久しぶりに風呂に浸かりながら歯磨きをする。

もともと長風呂派だからこうして自分の中で時間制限を設けないと何時間も入ってしまう。


俺は普段より丁寧に歯磨きをしながら体を温めて鼻歌を歌い、意識を無にする。


そうしないとまた嫌なことを思い出してしまうかもしれないから頭を空っぽにしておきたい。


10分ぐらい経ち、そろそろ歯磨き粉の泡を口で抑えるのが限界になってきたところでシャワーを浴びて全てを流す。


この少しぬるいシャワーが冷たく感じるのが好き。


風呂から上がった後は夜風を浴びなからベッドで寝るだけ。


俺は久しぶりにゆったりと風呂に入れたことに喜びを感じながら部屋に戻ると、携帯にたくさんのメッセージが来ている通知が見える。


俺は氷でキンキンに冷えた水を飲みながらメッセージアプリを開くと、明日からある合宿の班が一緒の人たちのグループメッセージが盛り上がってるらしい。


俺は未読のところから見始め、ようやく目を通し終わることには他の班に内緒で2日目にある花火大会に行くことになっていた。


栄美先生と海阪先生の目をどう盗んでいくのかなと考えていると愛海から電話が来た。


愛海『見た?』


夏「今見た。」


愛海『夏って浴衣か甚平持ってるか?』


夏「ないよ。」


愛海『俺の貸す。』


夏「みんな浴衣着ていくの?」


愛海『永海と電話してるときにそういう流れになった。サンダルか下駄持ってこいよー。』


夏「分かった。」


おやすみと言って、愛海とは電話を簡潔に終わらせて玄関に向かう。


俺は下駄箱の奥にあったサンダルをぱんぱんなキャリーケースに突っ込んで一息つく。


みんな急に決まった行事ごとにも対応出来るように浴衣とか持ってるもんなのかな。

やっぱり親がいる子たちはそういうことを教わるんだろうな。


俺はみんなとの違いに少し心痛めながらベッドに倒れる。


莉李と行った“散歩”は全部制服で行っていたからそんなこと考えなくてよかったのにな。


放課後のプラネタリウムはもちろん、プラネタリウムが定休日の時は少し足を伸ばして鎌倉や箱根に行って朝まで遊んで、次の日の学校にはロッカーに置いておいた予備のシャツを着て授業に出ていたことを思い出す。


莉李はなんでもいいから俺と一緒にいたいって言ってくれた。


けと、なんでもいいって言う割には莉李は服が好きと言ってよくプリーツのスカートを買ってたな。


…今も好きなのかな。

今も、誰かと手を繋いで“散歩”をしてるかな。


その人はその場所にあった服装をして、今も莉李を楽しませているんだろうか。


俺は莉李の手の感覚を思い出しながら携帯を充電してアラームを設定する。


明日は6時起き。

荷物が重いから早めに家を出ないと遅刻しそうだ。


俺はまだ眠くない目を瞑って安眠用の雨音を流し、そこにはない莉李の手を握りながら眠りについた。





→キミを忘れないよ

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