12:00
「買い物したの?」
待ち合わせたもつ鍋屋が入っているビルの前にいた悠に駆け寄ると、悠は俺の手に持った買い物袋を指す。
夏「うん。栄美先生のオススメにされたやつ買った。」
悠「後で教えて?」
夏「うん。」
そのまま悠と一緒に店に入り、個室の部屋に通され悠が予約してくれたもつ鍋のコースが流れるように出てくる。
夏「暑いけど鍋で良かったの?」
悠「冬にアイス食べるのと一緒。」
なるほど、と思いながら俺は煮立つもつ鍋のアクを取る。
悠「夏くんはこの後仕事?」
夏「うん。18時から。」
悠「そっか…。遊びたかったな。」
と、何故か悠は寂しそうな顔をする。
今日も家に帰らないんだろうか。
夏「悠は家に帰らないの?」
悠「なんでそんなに家に帰したいの?」
夏「…帰る場所だから。」
悠「私の家はただの物置場。帰る場所じゃない。」
夏「でも、もちこ?って愛犬が悠の帰り待ってるじゃん。」
悠「もちこはもちこ。帰る場所とは関係ない。」
どんだけ家に帰りたくないんだと思いながら悠に火が通った具材を渡し、自分の分も盛るがその間悠はご飯を口にしない。
夏「食べないの?」
悠「食べるよ。」
俺の声で食べ進め始めたけれど悠は何か考えているのか、あまり箸が動いてくれないらしい。
これがお客さんであれば少し踏み込めるけれど、クラスメイトだからそんなこと容易には出来ない。
今、俺が悠に出来ることはなんだろう…。
夏「ご飯食べ終わったらどこ行く?」
悠「…ん?」
夏「仕事前まで遊びたいんだ。どこか行きたいとこある?」
悠「んー…。ダーツ。」
夏「投げ放題のところあるからそこ行こうか。」
悠「うん。」
これで時間稼ぎにはなるけどまた夜にはナンパ待ちして男とホテルに入ってしまうんだろうか。
こういう子こそ、支えてくれる恋人という存在が必要なのかもな。
俺は無意味にクラスメイトで悠と合いそうな子を探すけれど、悠の雰囲気にみんなが少し距離を置くからなかなか難しい。
俺が仕事の時間、どうにかして悠の寂しさを紛らわす方法がないかと模索しながらダーツをしに行く。
悠「やったー!ブルブルー。」
悠はダーツに最近ハマっているらしく、結構命中率が高い。
夏「すごいなー。俺にも教えて。」
悠「私は肩と腕を一直線にして、ぴゅっと投げる。」
悠は俺の体の微調整をして、投げてみてと言う。
俺はその体制を崩さないように投げるとブルに近い20点の的に当たる。
悠「いいじゃん。今より少し低く投げたりして微調整すれば当たるようになるよ。」
夏「…すご。」
悠「夏くんみたいに1発であそこまで近づけられる人初めてみた。センスあるんじゃない?」
夏「さっきまで全外ししてたけど…。」
悠「きっと飲み込みがいいんだよ。」
夏「そうなのかな。」
俺は悠に教わった姿勢であと2本投げるとしっかり的に当たるようになった。
悠「夏くんは左寄りになるから少し右側に立ってもいいかもね。」
と、悠が熱心にダーツを楽しむコツを教えてくれる。
ダーツを楽しみを分かり始めた頃、少し休憩するために俺は賭けで勝ちご馳走してもらったアイスを食べ、悠はトイレに行った。
悠のトイレの間に俺は携帯のメッセージを確認すると瑠愛くんから数件来ていたことに気づく。
『優くん、今日休みだよね?』
『あ、ごめん。休みじゃなかったね。』
『優くんと遊ぼうと思って』
『今日休みにしたのに』
『優くんの休み』
『めっちゃ明日からだったんだけど(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)』
『そんなことある?』
『つらきちだよ…。』
『仕事前にご飯いこ?♡』
『あれ?忙の活男?』
『(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)』
昼頃からメッセージが来てたみたいだけど悠と一緒にいたから全く気づかなかった。
時間を見るともう少しで16時になるところ。
『今気づいた!遅くなってごめんね。』
『学校の友達もいるんだけどいいかな?』
俺がメッセージを送ると、すぐにメッセージの返信が来た。
相当、暇だったのかな?
『優くんの友達!?』
『絶対かわい子じゃーん♡』
『俺はOKよ♡♡♡』
そうメッセージが返信されると同時に悠も帰ってきた。
夏「俺の仕事場の先輩とご飯食べることになったんだけど、悠も一緒に食べる?」
悠「お腹空いてなくてもいいなら。」
夏「俺もそんな空いてないから大丈夫。」
悠「分かった。何時から?」
夏「聞いてみる。」
悠「うん。」
悠はダーツ台の前に立ち、素振りを始めだす。
俺は瑠愛くんにどれくらいでこっちに来れるか聞くと後10分で来れるらしく、悠にそれを伝えるとダーツの矢を名残惜しそうに手放し片付け始めた。
夏「またダーツ教えてね。」
悠「うん。プロ目指そ。」
そんなやる気はないけど悠の好きなことは分かったので今度何かあったらダーツで誘ってみることにした。
→ 融解sink




