22:00
予約してくれたミサキさんの時間が終わり、俺は一緒にホテルを出て分かれ道でミサキさんの背中を送っていると男女のカップルがこちら側に歩いてきた。
今日見覚えのある服装を着てる女の子に目を向けるとその子は悠だった。
悠は何故か、パツパツズボンのチャラそうな男性と一緒にホテル街に向かっている。
俺は今日の悠が気になり、少し様子を見てみることにした。
悠は隣にいる楽しそうに一方的なおしゃべりをする男性の話を、聞いてるのか、聞いてないのか、分からない絶妙な間で相槌をして、作り笑顔をしている。
カップルなのであれば手を繋ぐはずなのに手首を掴まれて少し後ろを歩き、男性が連れて行く方向にただ歩くだけの悠。
これは俺が口出ししていいのか?
温泉に入った後、悠はなんで家に帰らなかったんだ?
俺がモヤついていると悠は男性と一緒に1番安いホテルの前に立つ。
…声を掛けるだけ。
恋人ならそのまま俺が去ればいい。
俺はホテルに入ろうとする悠の腕をギリギリ掴む。
悠「え…?夏くん?」
「…誰?お前。」
夏「ごめん。俺と一緒に行こうよ。」
悠「…え。」
悠の表情が固まり、男性の顔がだんだんと怒りに満ちていく。
「…何?彼氏?」
悠「違う…、けど…」
夏「可愛い子は俺が先に食いたいな。」
俺は男性にねだるように声をかける。
「…きしょいわ。マジ萎えた。」
男性は悠の腕を乱暴に離し、反対側の出入り口から出て行った。
夏「ごめん。今の嘘。気持ち悪いよね。」
俺は少し震える悠の腕をそっと離す。
悠「…なんでここにいるの?」
夏「近くに仕事場あって今休憩中だったんだ。」
悠「そっかぁ…。」
悠はなぜか泣きそうな顔をする。
その顔は連れ込まれなかった安堵感なのか、タイプの男性が去った悲しみなのか、俺には分からない。
夏「…まだ、家に帰りたくないの?」
悠「うん…。」
俺はまだこの後に2件予約が入ってるから仕事は投げ出せないし、ミサキさんから預かったお金もある。
夏「俺の家で良かったら使って。」
俺はカバンの中から自分の家の鍵を出す。
悠「…1人が嫌なの。」
夏「永海呼んでもいいよ。」
悠「言えない。」
夏「なにが?」
悠「このこと。」
学校以外の子で安心して任せられるのは瑠愛くんくらいしかいないけど、上がりの時間が一緒だったんだよなぁ。
俺は店長に事情を説明して休憩所か事務所に置いてもらえないか聞いてみると、俺がいいなら事務所にいてもらえばいいとのこと。
夏「俺の仕事場の事務所にいていい事になったけど、多分びっくりすると思う。嫌だと思ったら言ってね。」
悠「…うん。」
俺は悠と一緒に事務所に帰り、そこで待機してもらうことにした。
夏「俺、あと2件予約入ってるからその後一緒に俺の家に行こう。」
悠「分かった。」
何度か入る店長の電話を取る声が聞こえるはずだけど、そんなに気にしてないのか悠は触れてこない。
これは俺から言った方がいいのか?
夏「あと、20分で出ないといけないから悠はここで寝てなよ。」
悠「夏くんはキャストなの?」
夏「…そうだよ。」
悠「そっか。頑張って。」
俺に小さく手を振って送り出す悠。
やっぱり理解してるよな。
俺は学校のみんなに自分の仕事をバラされる覚悟で次のホテルに向かった。
→ Fine On The Outside




