寝る童は育つ(三)
「目を閉じよ」
私の言葉に従い、素直に目を閉じる愛しき異母弟。
「《……健やかな眠りを》」
今若丸にのみ聞こえるよう言霊をささやいた。夢がやさしい世界であることを願いつつ。
腹掛けの上から、今若丸の胸あたりに手を置く。
「♪ねんねんころり ねんころり」
今様節で、ひたすらゆっくりと歌う。
とん……とん……
指の腹で、拍子をそっと伝えながら。
「♪坊やのまぶたは 仲良しぞ」
子守唄を歌う利点は、必ず眠ってくれることだ。難点は、大人まで眠くなることか。
女房たちが口元を袖で隠し、あくびを我慢している。今若丸が眠ったら歌うのをやめるゆえ、しばらくおつきあい願いたい。
「♪ゆらりと夢の 訪いに」
今若丸の呼吸が深くなってきた。少しずつ眠りの世界に入っているようだ。
「♪まかせば心地の よかろうぞ」
唄を二度ほど繰り返す間に、しっかりと寝入ったらしい。
「……ふすー……」
小さな寝息をたてる今若丸。
私は目尻を下げつつ、起こさぬよう徐々に手を離していく。膝に手を戻した辺りで空気に温かさを感じ、顔を上げた。
義母上や女房たちも、私と同じような表情をしていた。
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次回更新は、8月26日23:00頃を予定しております。
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