寝る童は育つ(二)
「偉いな、今若丸。立派な兄ではないか」
「いまわか、あにうえなる」
兄上のようになる、と言いたいらしい。
「義平異母兄上か」
「ちがう」
「では、朝長異母兄上か」
「ちがうー」
小動物の如くふくらむ頬。私が正しい答えを導けぬのが原因だが、こちらの頬は緩みそうになる。
「あにうえ」
「……もしや、私のことか?」
今若丸の性質は義平異母兄上に近いように思うが。私のようにとは、いかなることか。
「おとわか、いいこいいこする」
──良いことをすれば、頭を撫でて褒める。
日頃、私たちが今若丸にしていることだ。会う回数が多いためか、私のようにと思ったのやもしれぬ。
今若丸は、己がされて嬉しいことを弟にもしてあげたいらしい。何とやさしい子か。
先ほど耐えた私の頬は、見事に緩んだ。
「たくさん褒めてやるとよい。きっと今若丸のように、やさしく賢い子になるだろう」
「ん!」
今若丸は得意げに大きく頷いた。
「では、乙若丸が起きたら何と褒める」
「うーん……」
今若丸は一人前に腕を組み、考える。少しして思いついたようだ。
「『いっぱいねた』、ほめる」
「それは良きことだ。『寝る童は育つ』という言葉もある。今若丸も昼寝を致せば、さらに大きくなろうぞ」
「あにうえ、いっしょ?」
「私よりも、大きくなるやもしれぬな」
「ねる!」
今若丸は、己の世話係に布団の催促をした。そして、すでに敷かれていたことに目を輝かせた。
意気揚々と布団に入ったのはよいが、気合いが入りすぎて眠気が飛んでしまったらしい。
「……あにうえ……」
これでもかと下がった眉が、今若丸の困りようを伝えてくる。
私は微笑ましく思いながら、傍に腰をおろした。
「子守唄を歌うか」
「ん!」
嬉しそうな今若丸。
その小さな頭を、私はそっと撫でた。
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次回更新は、8月21日23:00頃を予定しております。
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