波紋を広げる秋の除目(一)
近江の知らせにより父上の執務室へ伺うと、すでに父上、母上、異母兄上方がいらした。私は下座にてご挨拶申し上げ、お待たせしてしまったことを謝罪する。
「よい。今若丸を寝かしつけていたと聞き及んでおる」
「ご寛容いただき、ありがとうございます」
頭を下げてから母上の隣に移動し、腰をおろした。
父上は、さて、と本題に入られた。
「余は、秋の除目にて左馬頭に任命された」
「おめでとうございます」
「「「おめでとうございます」」」
母上に続いて座礼をし、異母兄上方と祝い言葉を唱和した。義母上方には、夕餉の時に話されるとのこと。
秋の除目が行われるのは八月。
この世界は七月から秋とされているゆえ、暦の上では正しい。だが彼女の感覚もある私には、暑い最中に〝秋〟と言われても……という思いもある。
乱直後の除目はあくまで臨時であり、秋の除目は正式な年中行事に組みこまれている。ただし官職の任命は春の除目にて。秋の除目では、地方官の任命を執り行うのが通例だったはずだ。
秋の除目にて官職の任命を行うとは、これまた異例な……大規模な戦の後には、派手な演出が必要ということか。恩賞のため、という名目の前では、異論があろうと呑み込むほかなかろうが。
「……それから」
父上が眉間に深く皺を寄せ、声を低くされた。
「前長の官位剥奪により、余が源氏の長と相成った」
父上のお言葉は、あまりにも重く。
私たちは祝い言葉を唱和するどころか、皆一様に息を呑んだ。
お読みいただきありがとうございます。
またブックマークや評価などにも感謝いたします。
次回更新は、8月27日23:00頃を予定しております。
誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。




