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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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波紋を広げる秋の除目(一)




 近江の知らせにより父上の執務室へ伺うと、すでに父上、母上、異母兄上方がいらした。私は下座にてご挨拶申し上げ、お待たせしてしまったことを謝罪する。


「よい。今若丸を寝かしつけていたと聞き及んでおる」

「ご寛容いただき、ありがとうございます」


 頭を下げてから母上の隣に移動し、腰をおろした。

 父上は、さて、と本題に入られた。


「余(われ)は、秋の除目にて左(さ)馬頭(まのかみ)に任命された」

「おめでとうございます」

「「「おめでとうございます」」」


 母上に続いて座礼をし、異母兄上方と祝い言葉を唱和した。義母上方には、夕餉の時に話されるとのこと。


 秋の除目が行われるのは八月。

 この世界は七月から秋とされているゆえ、暦の上では正しい。だが彼女(前世)の感覚もある私には、暑い最中(さなか)に〝秋〟と言われても……という思いもある。

 乱直後の除目はあくまで臨時であり、秋の除目は正式な年中行事に組みこまれている。ただし官職の任命は春の除目にて。秋の除目では、地方官の任命を執り行うのが通例だったはずだ。

 秋の除目にて官職の任命を行うとは、これまた異例な……大規模な戦の後には、派手な演出が必要ということか。恩賞のため、という名目の前では、異論があろうと呑み込むほかなかろうが。


「……それから」


 父上が眉間に深く皺を寄せ、声を低くされた。


「前長(おさ)の官位剥奪(・・・・)により、余が源氏の長と相成った」


 父上のお言葉は、あまりにも重く。

 私たちは祝い言葉を唱和するどころか、皆一様に息を呑んだ。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、8月27日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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