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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
二章 保元元年(一一五六)六〜七月

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術符に込めた祈り(三)




 さりとて私もこのままではいられぬ。父上のご迷惑にならぬよう行動致そう。


「父上。おつかれのところ、お引き留めして申し訳ございません。どうぞ少しでも、お休みくださいませ」

「うむ」


 母上の元へ戻られる父上の背中を見送り、私も室へ戻った。

 私室には近江の姿があった。


「お目覚めでございましたか」

「うむ。父上と、少々話をな」

「左様でございますか……」


 近江は痛ましげに目を伏せた。お祖父様の件、耳に入っているのだな。


「本日は、慌ただしい一日となろうな」

「はい、おそらくは……」


 父上や異母兄上方は、戦支度でお忙しいことだろう。母上や義母上方も、そちらを手伝われるはずだ。

 気がかりは常盤の義母上だが、周防を始めとし、信の置ける者たちが付き添っている。その上、北対は他の対より外壁が高く厚いゆえ、外の騒音に脅かされることも少なかろう。


「近江も、母上の手伝いをしてくれ」

「よろしいのですか……?」

「人手は、いくらあってもよかろう。私は室でおとなしくしているゆえ、安堵せよ」


 近江は、妙に落ち着いた様子の私が気にかかるようだが、問うてくることはしなかった。

 

「……では朝餉の後より、しばらく離れますこと、お許しくださいませ」

「うむ。頼んだぞ」

「はい」


 いつもの支度の合間に、私は墨と熱田のお祖父様の筆を頼んだ。


「朝餉の後、写経をしたいのだ。お祖父様や父上、異母兄上方のご無事を祈願したいと思うてな」

「承知いたしました。若様のお心、皆様きっとお喜びになりますわ」


 やさしい姉のような眼差しで、近江は頷いた。

 ……これで準備は整った。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、7月7日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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