鶴千代殿の思い(五)
「これほど利発で愛らしい鶴千代殿が、懸命に殿上童のお役目に励むのです。目尻の下がらぬ大人はいませんよ」
「……今の、鬼武者殿のように……?」
「ふふ。はい」
鶴千代殿が冗談を返してきたことに、少し安堵する。潤んでいた目に光も戻ってきた。淡路殿もまもなく参着なさるだろう。
もう一押ししたらお暇致そう。
「鶴千代殿」
「はい」
「周りの大人を味方につけるのです」
「味方……」
「鶴千代殿の利発さ、愛らしさと礼儀正しさは、何よりの武器となります」
大事なことゆえ、幾度でも念押しせねば。
「そんな……」
「真実ですから、謙遜なさらずに」
私は微笑み、瞳を真剣な色に変えた。
「殿上童としてひたむきに取り組む姿は、大人たちに好印象を与えることでしょう。一人、また一人と好印象を持つ大人が増えていけば、やがて彼らは鶴千代殿の味方となりましょう」
保元の乱にて、信西殿は強引に退路を断つことで敵方を減らした。ならば私は、消去法でなく自主的に鶴千代殿の味方となる者を増やそうではないか。
「鶴千代殿の味方は、やがて父君の味方となりましょう」
「!!」
鶴千代殿の目が稲妻を受けたように丸くなった。
私たち童には、童なりの戦い方がある。
「鶴千代殿は、決して無力などではありません。あなたは独りではないのですから」
小さな手を握り返し、微笑みかける。
「一人で戦わずともよいのです。数は力、ですよ」
「はい……っ」
鶴千代殿の頷きは、力強かった。
向かう目標に心を転換していくことで、これ以上痛みに蝕まれずに済むように。
私はこれからも鶴千代殿のために祈ろう。
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次回更新は、5月11日23:00頃を予定しております。
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