↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『R.I.S.E.:Over the Sky』~銀髪美少女が浪漫を貫くようです~  作者: あらまき
理不尽スパイラル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/84

称号:人類覇者


 合宿初日の夜。

 その日の夕飯は、なんかとんでもないことになった。


 食べることも特訓のうち――ということで、鷲羽製作所が用意したのは大量の肉だった。

 若い奴なら肉を食わせておけばいいだろうという実に雑な発想である。

 発想はあながち間違っていない。


 ついでに智は、あさひ用としてこっそり高級和牛まで用意した。


 ……そして、問題はここからだった。


 皇真琴は緋衣朔夜信者である。

 協力するに惜しみなく、そしてついでに超が幾つも付くお金持ちである。


 というわけで、米国産バーベキュー用高級牛肉をしこたま持ってきた。

 文字通りしこたま、ヘリコプターの冷凍空輸にて。


 それと、竜胆。

 合宿の場を提供したものの断られ、何も役に立てなかったからせめて食事くらいはということで、鈴之助もまた同様に差し入れを用意した。


 最高級和牛を数頭。

 まるまる解体したての状態で。


 孫とあさひのため、何かインパクトある行動をと考えた結果である。

 確かにインパクトはあった。


 外国映画くらいでしか見たことのない骨付きの肉塊が巨大トラックにずらっと並ぶその姿は、インパクトそのものだった。

 見事に、真琴たち女性はドン引いた。

 男性陣もちょっと引いた。


 あさひはその光景に喜んでいたから、鈴之助の目論見そのものは成功したと言えるだろう。

 代わりに、竜胆の家がヤバいと勘違いされたが。


 そういうわけで、肉と肉と肉が被って大変なことになり、急遽バーベキュー大会が開かれる。


 鷲羽製作所の職員を呼べるだけ呼んで、各自知り合いを呼べるだけ呼んで。

 どこか祭りのような派手な肉大会となりながらも、何とか消費することに成功した。


 ちなみにだが、そこでもまたナガレの天才っぷりが発揮された。

 天才というか、肉体の化け物さと言う方が正しいが。

 彼の食べ方は、さながら某ピンクの悪魔のようであった。




 そうして二日目の朝――。


 赤羽を筆頭になぎさ、達臣、莉央といった裏方勢に加え、鷲羽製作所やキョウジを筆頭にした外部協力者勢が集合し、一つの問題を解決せんと動くも、一向に話が進まない。

 あまりにもどうしようもなくて、赤羽は協力者を招いた。


 その協力者は……。


「というわけで、行き詰まりがヤバい。手を貸してくれ」

 疲れた顔で赤羽はそう彼女――悠陽に告げた。


「僕に出来ることなら手伝いますが……このそうそうたる顔ぶれの中で僕に出来ることがあるとは思えないんですが……」


 悠陽は困った顔で苦笑する。


 基本的にだが、赤羽、なぎさ、達臣の三人がいたら大体の物事は解決出来る。

 三人とも選択肢があまりにも膨大であるからだ。


 それにワンポイントの莉央がいてどうしようもないのなら、自分なんかがいてもどうしようもないんじゃないだろうか。

 悠陽にはそうとしか思えなかった。


「いや、今回の場合は一般的な意見が欲しいんだ。……莉央の意見は極論過ぎるからな。それに……」

 ちらりと、赤羽は莉央を見る。


「悪魔の契約は限定的であるからこそ価値が出る。我が翼の羽ばたくため尽力しない気持ちはあるが、口惜しいことに、吾はそれほど万能な存在ではないのだ」


 莉央は静かに指を咬む。

 再び、皆の視線が再び悠陽に注がれた。


「そ、それで僕は一体何をしたら良いのでしょうか?」

「意見を聞かせて欲しい。何でもいいから突破口が欲しいんだ」

 そう言って赤羽がリモコンのボタンを押すと、部屋の中央にイクス・ユニットの立体ビジョンが浮かび上がった。


 色のない補助線塗れの姿だけど、それでもそれが新型のイクス・ユニットであるということは悠陽にも理解出来た。

 アステロイド・ブルーのような細身のモデル体型ではなく、どっしりとして、かつずんぐりとした妙に角ばった箇所が多い。


 ただ、最大の特徴はそこではなく、そのビジョンの機体には、腕がなかった。

 アキレスの楯のように収納しているわけではない。

 単純に、腕が未接続の状態となっていた。


「これ、腕が間に合わなかったんですか?」

 悠陽の言葉に、赤羽は首を横に振る。


「いや、莉央の無茶なキメラアイディアによって時間の問題は解決した。後はテセウスの船のように少しずつ純正パーツを増やすだけだな。問題は間に合うかどうかじゃない」

「じゃあ、何が問題なんですか?」

「何の武装を積めば良いかだ」

 そう言った後、赤羽は詳しい事情を悠陽に説明しだした。



 元々ARCが持っていたラプトルとコヨーテ二機。

 そして鷲羽製作所オリジナル機体アトラス。


 このすべてを分解しパーツとすることで、新型機体の時間短縮に成功した。


 間に合うかどうかという境界線は超えることが出来た。

 強いて言えば混ぜ物だらけの所為でカタログスペックが想定よりかなり下がるであろうことだが、それでもコヨーテよりははるかにハイパワーな機体となるだろう。


 さてそうなると、一つ問題が出て来る。

 何の武装を積むかだ。


 ライズのルールにのっとれば、新型機体に搭載できる武装は三種類。


 一つはパイルバンカーで、もう一つは二丁拳銃。

 では、残り一枠は何を積む?


 それが原因で、会議は踊り続けていた。

 極論を言えば、腕なんてものは武装を積む土台に過ぎない。

 故に、武装を決めかねた状態では腕は装着出来ない。


 それゆえの腕なし状態でずっと機体は放置されていた。


「というわけだ。ちなみに吾の意見は無理に不必要な武装を積む必要はないと思っているのだが……」


 莉央がそう言った直後。


「今のままだと遠距離も近接の間合いも対応出来ない。遠近両方隙間になるのは流石に不味い」

 赤羽はそう告げた。

「パイルがあるのに近接の間合いが駄目とはどういうことだ?」

「パイルは近接武装と間合いがまるで違う。むしろ一撃すかせば何も出来なくなるからあれは近接に不利が付く。伊達に浪漫武装と言われてはいない」

「……というような言い合いをずっと続けている。だから我が翼の嫁よ。何か助言を頂けないだろうか?」

「嫁って……」


 呟き、悠陽は苦笑い。

 その後少し考えて……。


「あの、それはあさひさんに相談しましたか?」

 赤羽は頷いた。

「当然だ。けれどあいつは"何でもいい"と他人事でな。だから困っている」


 現状、ARCに最適解は存在しない。

 用意出来る武装のスペックが大会の標準レベルに届いていないからだ。


 パイルバンカーに限って言えば特性上問題ないが、二丁拳銃も大会に使う武装としてはかなり弱い部類に入るだろう。


 一応、大会に通用するレベルの射撃武装はある。

 けれど、その二丁、ライフルとショットガンは共にカイの方に回している。


 だから残り物は必然的に、スペック武装の微妙なものばかり。

 それでもないよりはましだろう。

 それ以前に、ハンドガンと使い分けられる射撃武装を積まなければ戦術として話にならない。


 じゃあそれは何が良いのか。

 ライフルか、マシンガンか、ショットガンか、それともその他か。


 それが、会議の踊る理由だった。


「悠陽はミリタリーに詳しいと聞く。そのついでにあさひについても。だから何か意見があれば気軽に話して欲しい。それで決定とするわけではない。ただ、議論が加速するようなアイディアが欲しいんだ」


 赤羽はそう伝えた。


「……そう、ですね。では、素人意見なんですが……」

「ああ」

「近接武装ではいけないんですか?」

「駄目ではないが……何故? というか、どういうことだ?」

「だって――」


 悠陽の言葉を聞いて、赤羽やなぎさたちは皆、目を丸くした言葉を失う。

 あっけにとられたというか、唖然としているというか。

 ただ一人、言葉の意味が良くわからなかった莉央だけが静かに首を傾げていた。


 そのすぐ後だった。

 あさひが、怒鳴られるように呼びつけられたのは。




「あさひぃ! お前ぇ!」

 赤羽は叫びながら、あさひの頭をぐりぐりとした。

 絶妙に痛くない、暴力にならないけど若干不愉快なくらいの感覚だった。


「ちょっ。な、なんです? 何の話これ!?」

 あさひは赤羽の発狂具合と周囲の様子に驚きながら尋ねる。

 なんというか、呆れ顔だった。


 赤羽が不愉快そうにあさひのロックを外すと、あさひは首を傾げながら悠陽の隣に着席した。


「……それであさひ。さっき悠陽から聞いたが、もう一度確認だ。お前……RAEオンラインで【人類覇者】の称号を取っているって、本当か?」

「うぃ。ランキング戦はあまり興味ないけど、イベントはガチ勢のつもりです。……あれ? 悠陽、最近新規イベントって来た?」

「ううん。三か月くらいは復刻ばかりだね」

「じゃ、まだ人類覇者っす。けど、それがどしたんです? なんでゲームの話?」


 あさひはきょとんとした顔で首を交互に何度も傾げ、頭に疑問符を浮かべた。


「吾も正直、その人類覇者たるものが何かわからん。説明を要求する」

 莉央がそう口を開くと、赤羽は眉間に皺を寄せながら呟いた。

「……そう、だな。とはいえ、私もそこまで詳しくはない。悠陽、RAEオンラインに詳しいなら、解説を頼んでも良いか?」

「人類覇者についての説明で大丈夫ですか?」

「ああ。ついでに、私が何をあさひに怒っているかも含めて説明してくれると助かる」

「わ、わかりました。では……えっと、まず、【人類覇者】というのは、ゲーム内で与えられる特殊称号の名称で……」


 その説明の後、悠陽はRAEオンラインのゲーム内イベントについて説明を始めた。


 RAEオンラインは定期的に期間限定イベントが開かれている。

 イベント内容は毎回異なるが、基本となるベースラインは大体同じ。


 まず、ログインで武装が配布される。

 その武装を使用し、ゲーム内ミッションをクリアしてポイントを貯める。

 そしてそのポイントで武装を強化し、残ったポイントを武装と交換する。


 こういう流れである。

 大体一つのイベントで最初の配布を含めて最低三つほど新規武装が手に入り、多い時は八つ武装が入手出来たイベントもあった。


「ちなみにですが、イベント自体はそう忙しいものではなく、初心者でも一週間ほどあれば、慣れていれば一・二時間程度で全武装揃えることが可能です」

「案外短いんだな。ゲーム廃人の出るものだからもっと過酷かと思っておったぞ」


 莉央の言葉に悠陽も頷く。


「はい。武装入手"まで"は、本当に簡単なんです。けど……イベントにはこの先がありまして……」


 RAEオンラインにはガチのプロから、空き時間の暇つぶしまで色々なプレイヤーがいる。

 だから、もし武装入手イベントで一部のプロしかクリアできないような高難易度イベントを開けば、確実に炎上するだろう。


 けど、ゲームの戦力に一切関係ない単なる称号ならそうじゃない。

 むしろそういうものは難しければ難しいほど価値が出てきて、手にしたプレイヤーは称賛を浴びる。


 だから、すべてのイベントは武装入手のための前半パートと、"称号"のための後半パートに分けられる。


 後半は、やってもやらなくても何も変わらない。

 その分、尋常じゃないほどの難易度となっている。


「一つのイベントに十個ほど課題が設定されてまして、それを達成するたびに称号がもらえます」

「どんな課題だ?」

 莉央は尋ねた。

「そうですね。配布武装でコンピューター相手に十連勝しろとか、配布武装のみで対人十勝しろとかですね」

「それは……結構きついな」

「はい。かなりきついです。そしてイベント中十個の称号を見事会得したら……"裏称号チャレンジ"に挑戦できるようになります」

「……は?」

「裏称号は表よりも更に過酷な条件を指定されていますね」

「そんなのやる奴はマゾ以外にいるのか?」


 悠陽はそっとあさひの方に目を向ける。

 あさひはいやぁと照れた顔で頭を掻いた。


「それで、人類覇者ってのは結局何なんだ? 一番難しい裏称号チャレンジの証か?」

「いえ。人類覇者というのは、裏称号コンプ勢に公式から送られる特殊称号です」

「……なんて?」

「コンプ勢。あさひさんは、裏称号まで含めてすべてのイベントの称号をコンプしています」


「あ、とはいえ復刻に頼ったり古いイベントは常設化してたりするから出来る人は出来るような難易度だよ」


 あさひはそう注釈を付け足すが、びっくりするほど説得力がなかった。


「実際の話、どうなんだ悠陽。そんな簡単なものなのか?」

 赤羽はそう尋ねた。

「そう……ですね。人生を捧げたようなやり込みガチ勢が十人やって、二人取れるかどうかという難易度かと。難易度もそうですけど、単純にイベントの量が多いので」


 あさひを見る目が、一瞬にして化物を見るそれになった。


「どもども。やり込みガチ勢です」

 あさひはドヤ顔でそう言い放つ。


 あさひはRAEオンラインにてランキング戦に興味がないと言い放った。

 それはゲームそのものに興味がないわけではない。

 ただ、イベントガチ勢であったから。

 そしてイベントのために参加したらランキングで最高ランク三十位まで引き上げた。


 そういう話であった。


「それと、ゲームイベントについて付け足しますが、遠距離武装に比べ、近距離武装のイベント称号ってはるかに難しいんですよ」


 例えば、射撃武装なら空中に的が表示されて、"〇分以内にすべてを落とせ"とかになるが、近接武装なら部屋一杯に射撃武装を持ったCPUが現れ、"一発も銃弾を受けずにすべてを倒せ"とかになる。


 射撃武装の称号はやり込みだが、近接武装の称号は縛りゲーに近い。


 そして、そのすべての縛りゲーを達成した称号こそが、人類覇者。

 つまり――。


「なので、あさひさん、別にパイルバンカーだけでなく、すべての近接武装使えますよ? それこそ、ヌンチャクや刀のような扱いの難しい武器でも」


 そう、悠陽は結論を言い放つ。

 精密機器たる射撃武装と異なり、近接武装なら質量や技術力だけで武装の質を引き上げられる。


 だから力不足の射撃武装より近接武装を持たせた方がカバー範囲は広くなるし、近接とパイルの使い分けというのは相手からしたらもっともされたくない択となる。


 というわけなのだが……。


「お前……お前えぇぇぇぇ! 先に言ええぇぇぇぇ! この十数時間の話し合いは一体何だったんだよ!?」


 赤羽はあさひの肩を掴み、何度も振る。

 あさひは「あはははは」と笑いながら、首をかっくんかっくんとさせられるがままとなっていた。

最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。


少々中途半端ですが、これを過ぎると非常に長くなりますのでここで一旦締めさせて頂きます。


大昔にロボット物に挑戦しこけてからいつか再チャレンジをしたいと思ってましたが、見事にもう一回こけました。

楽しく書けはしましたが、やはり難しいですね。


本当ならせめてこの後の大会編までは書きたかったのですが、びっくりするほど数字が伸びませんでした。

また何か人気が出たり私の頭がおかしくなったら、続編に挑戦したいと思う気持ちはありますが……。


では、お付き合い下さり本当にありがとうございました。

また再び巡り合えることを楽しみにしています。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。