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盗賊団Ⅳ

「今回の件は堪えましたなあ」


「ええ。まさか伯爵がしくじるとは」


「彼の顧客リストなんて公開された日には

王都がひっくり返りますぞ」


盗賊団は顧客リストを入手したものの公開は

していなかった。


曰く仕入れ先や用途が問題なので

今回は公開せずに今後効果的に使用していくというのが盗賊団の方針だそうである。

…多分脅す時に使うんだろう。


(しっかしこの靴マジですごいな)


前の仕事で得た装備、エアウォークのことだ。


地上を歩いてもその気になれば

少し足を浮かせることで全く足音がでない上に

空中を歩くことができる。


魔道具なので内包された魔力によって発動するので

俺の魔力には関わらず発動できるし。


某蜘蛛のヒーローになった気分で俺は空中を闊歩して騎士団の詰め所に来ていた。


騎士団の詰め所は貴族のお屋敷を再利用したものであり、門構えも建物も立派だが、気配遮断とエアウォークの前ではフリーパスも同然だった。


俺は建物の一番上にある

お偉いさんの部屋の外から話を聞いていた。


(その気になれば正面からでも入れそうだな)


「油断は禁物。結界が優秀ならバレる」


だそうで。


「さすがにこんな方法で情報収集しにきてると

みんな思わないはず」


みんなという言葉には盗賊団の面々も含まれている。

そもそも装備を取得したことも俺は盗賊団の仲間には言ってない。


目立たない、ということが俺の信条であるとともに

リュゼにも反対されたからだ。


「しかし奴隷商はどこに消えたんでしょうね?」


「今頃消されているか、どこかの貴族に匿われているのか…いずれにしても表舞台には出てこないでしょうね」


奴隷商の身柄は盗賊団では確保できなかったようだ。

突入の時に盗賊団の追跡を何人か付けたものの、撒かれてしまったらしい。


だが。


(奴隷商の居場所追えてるんだよな?)


「間違いなくここにいる」


そう。あの日俺は逃げる奴隷商を尻目に伯爵を誘拐した訳だが

気にはなっていたのでリュゼにその魔力を追ってもらっていた。


リュゼはマーキングさえしていれば、この王都の範囲内くらいならば人を追うことができるらしい。


(犬みたいだな)


「神聖な女神を犬呼ばわりは不敬」


(しかしこいつらも居場所知らないんじゃ探しようがないな)


「逆。これで絞り込める」


(?)


「騎士団には治外法権がある。王子の近衛隊」



◇◇◇◇



「王子が匿ってることは相当厄介だな」


レイナとは朝の市場で落ち合うことになっていた。

曰く盗賊団は夜に活動するので一番見つかりにくいし、町民たちも活動するので木を隠すなら森、という感覚なのだろう。


「どの王子が一番匿いそうだ?」


「自分が顧客でそれを隠匿しようとしているのなら第二王子だな」


俺も朝の市場で何気なしに町民に話を振ってみたところ第二王子は大の女好きで使用人にも手をつけたり、やりたい放題らしい。


「それ以外では?」


「奴隷商を使って他の貴族を動きを掌握しようとしているってことなら第一王子」


第一王子は一番継承の可能性が高いということもあって既に国策の中心にいるらしく評判も上々なようだ。


「第三王子は王子の中では腹違いで継承順位も低い。年齢もまだ幼いからやるなら取り巻きが暴走してるんじゃないか?」


第三王子はまだ幼いため町の噂も本人がどうと言うよりは出生の方に興味がいってるようだった。


「ってか王子少なくね?」


意外と権力争いの中で家と家の結びつきで

子作りしろって言われてもどうにもならないものなのだろうか?


「まあこの国では継承可能性のある子供だけ王子を名乗れるからな。血筋だけ継いでるのならそれこそ10や20じゃ効かないだろ」


前言撤回、王様すげー励んでたわ。

そりゃ色んなとこから好みの美人とか見繕われるとそうなっちゃうよね。

王様だって男だもんね。


「とりあえず虱潰しに探していくしかないか」


「あー、それと」


「?」


「リーダーが会いたがってたよ」


まあ会ったことないのに仕事もこなしてる訳だし当然ちゃあ当然か。


「いつ?」


「今日の夜だと」


なんとなく重苦しい雰囲気をレイナから感じる。


「バレた?」


「昨日の今日でそれはないと思うけど…」


と言いつつも腕組みしながら不安そうに言う彼女。


「バレてないんなら大丈夫でしょ。初仕事の祝いでもしてくれるんじゃないの?」


彼女の暗い雰囲気払おうと強がって明るく振舞ってみる。


「最近ほとんど団員とは顔も合わせないし、指令も部下伝えだし

私にも会おうとしないんだよ」


どうやら幼馴染ちゃんは心配なようだ。なんか年相応なコイバナでも聞いてる気分になってきた。


「王都を賑わせている盗賊団のリーダーがそんな簡単に顔晒しちゃダメでしょ」


「まあ…そうなんだけど…」


「じゃあ今日の調査はリーダーと会ってから行くわ。

一人じゃ怖いからリーダーに会うのついてきてくんない?」


しょうがない。おじさんが恋のキューピッドにでもなってあげよう。


「…わかった」


その後レイナと待ち合わせの約束を再度かわし、一緒に顔合わせを行うことになった。


◇◇◇◇


「君か。噂の新入りってのは」


「噂かどうかは知りませんが、新入りです」


見た感じまだ10代かと見間違うような金髪の青年が目の前にいた。

男前でなんとなく気品を感じる立ち振る舞い。

…この人が盗賊団のリーダーなのは紹介される前にすぐにわかった。


だって前世でもこういうタイプのシゴデキ年下上司いたもん。

そしてさっさと出世するか、独立するタイプと見た。


「噂になっているよ。初仕事で伯爵の屋敷に潜入したんだってね」


「まあ…」


「レイナがそれだけ君を信頼しているってことだ。

入って間もないのに妬けちゃうね」


「なっ…!」


レイナは顔を真っ赤にしている。

…バレバレだな。


「しかしこんなところまで来てもらって悪いね

僕はカインよろしくね」


「いえ、娼館に入るのは初めてなんで。

美人に連れ込まれて悪い気はしないですね」


ゴツンと頭を叩かれる。

幼馴染なりにレイナとの付き合い方をレクチャーしてくれている

ようなので乗っかったら痛い目にあった。

これもイケメンに限る、というやつらしい。


「中々どうして信頼関係を作れているようでなにより。

ここは僕たちの始まりでもあるんだ」


「始まり、ですか?」


「あたしもこいつもここに身売りされたんだよ」


よくよく話を聞くとレイナとカインはここに売られてきたが、

両方下働きを経て、体を売らされることになったときに拒否して

評判の悪い客の懐から金を抜くようになったのがこの盗賊団の由来なんだとか。


それが広がっていき、義賊として活動を始めると娼館を逆に買い取ったそうだ。


「あの頃からレイナは無鉄砲でね」


笑いながらカインはレイナの昔話を面白おかしく交えながら

この盗賊団の成り立ちなんかを聞かせてくれた。

どおりで盗賊団のメンバーがレイナを弄るわけだ。

彼女は過去の失態なんかを暴露されたり、成功した仕事の話をするたびに表情を

コロコロ変えている。まるで女学生のようだ。


「久しぶりにこんな笑って話したよ」


笑いながら目の端に涙を浮かべてカインは言う。


「カイン最近あんまり会えないから心配していたの」


「騎士団のマークも激しくなってるからね…」


あれだけの事件や注目を集めている分、リーダーはかなりの慎重を期しているようだ。


「まあ、僕がいないときにはレイナを守ってやってくれよ」


冗談めかしてはいたが、目の奥は真剣そのものだった。


「わかりました。あらためてよろしくお願いします」


「それと」


「?」


「盗賊団へようこそ。これからは君も家族みたいなもんだ」


屈託なく笑うカインはまるで少年のようだ。

そのカインに見惚れるレイナ。


やっぱりカップリングとしては幼馴染は最強なのである。

末永く爆発してほしいものである。















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