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小さな妖精スフレ、魔法使いの家でやらかしてます 〜彼といっしょの、ちいさな毎日〜  作者: 久寿 たまや
2期目

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26/30

26.秘密を探す少年と、ひみつで見守るあたしのはなし

森に近づく小さな男の子を見つけたスフレ。それは見覚えのある虫取り少年。彼の探し物「どこに出しても恥ずかしくない立派な秘密」のことは、よく分からないけど、なんか危なそうだし、ほっとけないよね……。立派な大人のあたしとしては。


妖精スフレと魔法使いレイジの、少し甘い日常のひとコマ。毎回独立、一話完結の掌編。

※カバーイラストは AI生成(ChatGPT)です。

「どこに出しても恥ずかしくない、立派な秘密?」


「うん。それを探しに行くんだ。」



 あたしの復唱を肯定したのは、虫取り網と虫かごを持った5歳の小さな男の子、リディオ。

 『捕まえに』ではないから、手に持った網は主役じゃないらしい。



「だって、皆んな色々秘密を持っててずるい。

ダニーは大きいムシの棲家、マヤは甘い実の取れる場所、サリーはひんやり石の取れるとこ。

だから僕も、僕だけの秘密を探しに行くんだ。」



 続いて理由も教えてくれた。



 掃除も洗濯も完了ということで、森に果実か花でも取りに行こうかな、と出かけた矢先のことだった。

 見覚えのある虫取り少年。小さな彼を草原と森の境で見つけて一直線。



 やってる事は、レイジを見つけた時と同じだけど、理由はもちろん全然違う。

 だって彼、1人でいるんだもの。



 村の近くの草原は、基本的に安全。

 ……なんだけど、彼の向かう先はそこから離れる方で、森の中だった。


 もちろん森の奥は危険。危ないものに遭遇する確率はそこそこあるし、何も無くても迷えばもちろん致命的。



 急遽空から呼び止めて話を聞いたのは、そういう事情だった。翔んでくる時に見回したけど、村近くの草原なら他の子供の姿もある。



「でも森は危ないよ。戻ろ?草原だって秘密はあるよ。」



 顔の前に浮かんで、柔らかく微笑んで誘導。しかしーー。



「無いよ。何度も来たし、見つけてもみんなと一緒になっちゃう。」



 レイジに通じる微笑みも、小さな子には通じない。

 すたすた奥へ行こうとしちゃう。



 風とか幻惑とか、そういうので無理に戻すのはできるけど……。


 ふんふんしながら歩く、彼の小さな姿。



 多分、納得しないよねぇ……。


 今ここで防ぐのは簡単。でも、見てくれる大人がいつもいるとも限らないし……。




 …………時間切れ。



「……あー、もう。ついて行くんだからね!」



 迷わず森に向かう彼の後ろ姿を、あたしは慌てて追いかけた。



◆◇◆◇



 彼の誘導は、思ったよりは困らなかった。



「あっち、なんか赤いのがあるよー?」


「ほんと?」



 上から見て誘導をかければ、けっこう素直に従ってくれる。


 それで……森の浅い部分、比較的安全なところをうろうろしていた。


 上から見た景色とあたしの記憶を頼りに、何か興味を引ける場所がないか探っていたんだけど……。



「あ、リディオ。」


「マヤ?」



 木からばっと飛び降りて、とてとて近づいてきたのは白い帽子の女の子。三つ編みにした茶色い髪が帽子の縁からひょいひょい覗いてる。


 背はリディオと同じくらい……いや、頭ひとつ大きいか。



 彼女は小さな袋を下げていた。

 一見して虫かごではない。握って、ぶらぶらさせてる木の枝の先にも網はなし。

 彼女はリディオと違って、虫取り目的ではないみたい。



 木の上で帽子がちらちらしていたから近づいてみたんだけど、知り合いらしい。



「どうしたの?こんなところで。」


「うん、実は……。」



 リディオが周りをきょろきょろするけれど、あたしはいない。

 見つかると面倒なので、とっくに上空に退避済み。



「…….迷ったの?でもそれなら、秘密が守れて好都合。あたしの秘密の場所へようこそ。

好きなだけ、レグの実とっていいわよ。」



 マヤと呼ばれた子に手を引かれ、木の周りで赤い実を拾い始めるリディオ。

 木の実の見分け方とか、村の犬の話とか、上空で2人の話し声を聞く。



 恋人……なんて早いか。

 ただの友達。見るからに。


 不意に上を見上げられて気づかれるのもなぁ、なんて思って、近くの木のてっぺんに移動。

 ここだと声は聞こえないけど、姿は見える。



 しばらく2人は雑談と木登り、木の実取りで遊んだ後、なぜか別れた。



 マヤちゃんが離れた方向に去っていったので、リディオに再び近づく。



「あれ?一緒に行かないの?」


「行かない、だって。僕だけの秘密を見つけてないもの。」



 答えた後、彼は俯き、虫取り網の柄の先を地面に擦るように動かした。



「……スフレも、秘密なの?」


「え?」


「だってさ、隠れて居なくなっちゃった。」



「……あー……。」



 どう言ったものか……、困って目を逸らした時点で確信されてしまったらしい。



「……ずるい。」



 言って、あたしに背を向けてすたすた歩き出した。


 秘密のつもりなんてないんだけど、怒らせちゃったかな……。



「ね、ねぇ?知ってる?このレグの実、硬くて美味しく無いんだけど……。」


「歯で強く噛めば、中から甘いジュースが出るんでしょ?知ってるよ。」



 追い縋って話しかけるも撃沈。


 ……そうだよねぇ。採ってるなら知ってるよねぇ。

 妖精のあたしではうまく中の種だけ出したり潰したり出来ないから、レイジに教えてもらったとっておき情報のつもりだったけどー。



 ……むむむ。



 とりあえず、へそを曲げた彼を追跡。

 先回りして、危ない場所には入らないようにしないと……。



◆◇◆◇



「……あ、これ、ひんやり石。」



 リディオが泉の中から拾ったのは、水色の石。水の魔力を僅かに含む石だった。



 ずっと前に見つけてた、奥で水の湧いてた洞窟。

 昔は地底湖への道があったんだけど、今はもう入ってすぐあたりで埋まってしまってる。

 今も洞窟の中にあるのは、湖と同じ地下水の小さな泉だけ。


 その澄んだ水底には、水と一緒に湧き出した、水の魔力を含んだ小石。



 泉は、あたしの水浴び場のひとつでもあって。よく知っていたから、茂みをがさがさ揺らしたり音を立てたりして、リディオをなんとか誘導したのだった。



 でもあたしは……、洞窟に入らない。

 だって、ちいさな先客に気づいてしまったから。



「わっ!」


「うわああーっ!?」



 耳を塞ぐ。

 洞窟の中、リディオの悲鳴が何重にもなってこだまする。



 ひんやり石って、水の魔石のことかぁ……。

 少し悪いことをしてしまったかもって苦笑い。



「サリー!何するんだよ!?」


「だって、リディオがあたいの秘密を暴きに来たんだもの。」



 洞窟の暗がりから現れたのは、黒髪の娘。

 この子は、さっきのマヤちゃんとは違い、リディオとだいたい同じくらいの背丈。



 からから笑う彼女と、リディオの追いかけっこが始まった。



 ……あたし?みてるだけ。


 入り口は一個しかないから、せいぜい何かで塞がれないように気をつけるくらい。



 サリーちゃんは、ひと通りリディオを翻弄すると、また岩の隙間に隠れた。

 リディオは洞窟の中を懸命に探したみたいだけど、見つけられなかったみたい。


 くすくすと、反響する笑い声とリディオの怒鳴り声。



 暫くすると……諦めて、彼だけが出てきた。


 そのまま外の草むらに突進して行くものだから、上空から先回りしてその先へ。

 危ないところへ行かないように、ガッサガッサと草を揺らしていたんだけど……。



「何してるの……?」



 構わず突進してきたリディオに、あっさり見つかった。

 


「サリーみたいにふざけてないで、先へ行くよ。」



 虫取り網の網のついた先で、あたしをとんとん叩いてきた。あたしへの憤りはどこへやら、今はお供に連れる気満々らしい。


 呼ばれたし、素直にひょいっと近づいて並ぶ。



「ずっと見つけて欲しかったんでしょ?スフレ。

バレバレだよ?わざとそっちは行かなかったけど。もう怒ってないからいいよ。」


「……え?」



 おどかして誘導してたつもりだったんだけど。


 ……バレバレだったってこと?

 構って欲しいと勘違いされてた?猛獣っぽく、ぎゃわぎゃわ叫んでたのも?



 …………。


 赤くなるあたし。


 シチュエーション的には、嵌り込んでしまってる。多分、口を開くごとに説得力が失せていくやつで……。


 でも、それでも……否定せざるを得ない。あたしの大人としての名誉のために。



「ちがう!違うの、そうじゃないってばー!」



◆◇◆◇



 草原と森の境をうろうろ進むあたし達。

 次に出会ったのは……。


 ダニーくん。

 虫取り網と複数の虫かごを持った男の子。

 真っ黒に日焼けしてる彼には、前に一度会ったことある。

 ……ムシとして。



 彼が悪いわけじゃないのは、分かってるんだけど……。

 身体は全力で、リディオの後ろに隠れていた。



「よう、秘密はなんか見つかったか?」


「まだだよ。もうみんな誰かに見つかってる秘密ばっかり。」


「はは。この草原は冒険し尽くしたしなぁ。

ここもでっかいムシがとれるいい場所なんだぜ。」



 虫取り網をぶんぶん振り回すダニーくん。


 妙に貫禄があった。

 ……あたしがビビってるだけかも知れない。



「じゃあリディオ、ムシバトルだ!

ここで俺が見つけたムシは、これ。」



 ムシバトルの単語に反応してぺたんと下がる翅を宥めつつ、リディオの後ろから覗き見る。


 もし変なものいたら目を閉じよ……。



 彼の虫かごにいたのはーー



「あ!それ、輝甲虫(きこうちゅう)!?」



 リディオが反応した。


 艶のある鮮やかな外皮の、あたしくらいある大きさのでかいムシ。

 見ての通り、綺麗だから人気がある。ヒトだけじゃなくて、妖精の間でも。

 安い装飾品とかコイツの外皮だったりする。あたし的には……ごめん被るけど。



「この辺にいたぜ。お前も見つけてみな。」



 [[rb:輝甲虫 > きこうちゅう]]探しか……。

 蜘蛛とかムカデと違って肉食じゃ無いし、おとなしいし、昼間は寝てるのもあって安全。

 あと下手に裏返したりしなければ、あたしの平穏も守られる。



「もしお前がここで、これよりでかいのを見つけたら!その時は、この場所は譲る!」


「えー。」



 盛り上がるダニーくんと、引くリディオ。

 でも、……輝甲虫の方はチラチラ見てる。



「なんだよ逃げるなよ。正々堂々の勝負なんだからな。勝っても負けてもここは秘密。俺とお前の秘密だ。」


「ええ?僕は、僕だけの秘密が欲しいのに……。」



 リディオの呟き。ダニーくんは不敵に笑った。

 虫取り網を杖のようにドンと地面につく。



「そんなら、俺に勝ってみることだな。

じゃあ、俺は向こうを探す。あとで捕まえたのを見せろよ?」



◆◇◆◇



 ダニーくんは、突風みたいに草原を走っていった。

 後に残されたのは、リディオ。

 虫取り網は両手で握り直したところ。



「……やらないの?」


「やるよ。やる。……ダニーに負けたくないもん。」



 構えて、目の前の木々を睨む。

 輝甲虫は……、確かに居る。二、三匹は見えるか……。



「スフレ。手伝っちゃダメ。」



 翔びあがったところを後ろから制止される。

 あたしを見つめる澄んだ瞳。


 そっか……、リディオとダニーくんだけの約束。



「……分かった。そんなのズル、だね?」


「そう。だから見ててね。」



 草むらに舞い戻るあたし。


 仰ぎ見る構図だと、さながら試練に挑む勇者みたいな構図か。

 少し、かっこいいかもしれない。



 思わず、レイジを重ねてしまい……。

 想像のかっこいい仕草と虫取り網のそぐわなさに、ぱたぱた手を振って誤魔化す。


 噴き出して、リディオの決意に水を刺すようなマネは避けねば……。



 心配なのは彼のウデ。前見た時は酷いものだったけど。

 どうかな……。ダニー師匠の修行の成果を期待して、あたしは草むらから彼の勇姿を見送った。



◆◇◆◇



「これでどうかな?」


「……うん。これなら大丈夫じゃない?」



 奮闘すること1時間くらい。

 ようやく彼が捕まえた輝甲虫。

 鈍い緑色で、あたしよりちょっと大きい。


 彼のウデは、ちょっとだけあがってた。

 相変わらず網の振りは遅いけど、寝てる輝甲虫相手なら見つけさえすれば関係ない。



 虫かごの輝甲虫を間に挟んで、笑顔になるあたしたち。その間をゴォーンという音が抜けていった。


 時間を告げる村の鐘。



 もう、6時かぁ……。

 そろそろ帰ろうと提案しようかと思った矢先だった。



「スフレ、どうしよう。」



 リディオの方から、そわそわして話しかけられた。



「約束。子供は6時に村の中って。破ったら、もう村の外に出ちゃダメって。」



 門限?約束かな?

 ここから村までは……。子供の足だと20分はかかるかも。


 輝甲虫を捕まえた喜びは何処へやら、不安で泣きそうな彼。



「……んん、仕方ないなぁ。今回だけだからね。」



 仕方なく、あたしは降下して……。



「うわぁ……。」



 彼を抱えて空中へ。


 木も草も、どんどん離れて小さくなる。

 地上を走る風とあたしの翅が掻く大気、合わさって身体も心も解けてくような流れに包まれる。


 虫とか鳥と違い魔力で翔ぶあたし達は、見た目の体躯が小さかろうが、ヒトの子供のひとりくらいなら運ぶのは余裕。



 草原の緑に占められていた視界は瞬く間に空の青に染まっていく。


 雲は変わらず遥かに上。けれど景色は大きく広がって、眼下に広がる草原と村、そしてそれらよりもっと大きい森。

 今浴びた風が、草原を木々を小さく揺らして過ぎていく。


 傾いた陽が横からあたし達を眩しく照らす。

 もうすぐ夕方だけれど、その光は些かの衰えも無かった。



「すごい……。」


「動かないでよ。落ちたら大変なんだから。」



 流石に、ヒトを運ぶなんて実践するのは初めて。

 はしゃぐリディオにクギを刺す。


 夕焼けには、まだちょっと早い。



 歓声を上げる彼の姿がなるべく目立たないように、

 上空から村に、鐘の音が響く青い空をゆっくり横切っていく。



◆◇◆◇



「あれ?リディオは?そっちに行ってないのか?」


「見たよ。わたしの秘密の場所に来た。」


「え?マヤのとこにも?あたいのとこにも来たよ。」


「あれ、みんなのところにも行ったのか?俺のところにも来たぞ。」


「……もしかして全員見つかったの?」


「でも。ダニー走って戻ってきたよね。向こうでリディオに出会ったなら絶対間に合わないんじゃ……。」



 しまった……追い抜いちゃった。


 下から聞こえる子供達の声。

 あたしとリディオはその頭上を飛び越して進む。



「すごいすごい、上からおーいって呼んでもいい?」


「絶対にダメ。」



 騒ぎになる。それはもう確実に。


 下手をすると人攫い妖精の認定を受ける。

 子供だけならともかく、村の入り口には大人もいるし。妖精を好意的に見てくれる人ばかりではない。



 顔を見てくるリディオに、何度も返事しちゃダメのジェスチャーを返す。


 誰かこっちを向かないかヒヤヒヤしながら高度を下げて、村の入り口近くの草むらに降りていく。



「あたしのこと、絶対、ぜーったい、誰にも言わないでね!」



 六度鳴る鐘の、最後の一回の音に負けない声で念押し。



「うん。分かった!ありがとう!」



 あまりにも早く、そして力強い頷き。


 ……ほんとにわかってるのかなぁ……。



 訝しむあたしの顔すら見ないうちに。地に足がつくと同時に駆け出すリディオ。


 その背中を草むらに隠れて、手を振って見送る。

 鐘の音は……、音が消えるまでをセーフとするなら、ぎりぎり間に合うタイミング。



 村の入り口に先回りした彼。


 でも……、自分も村には入らずに、後から来た3人を得意げに迎えた。



「みんな、遅かったね。」


「リディオ!?え、一体どうやって……?」


「秘密。これは、僕だけの秘密だよ。」



 遅刻確定って、泣きそうだったくせに……。

 思って、ふっと表情が緩む。



「へぇ……。みんなのところへ本当に行ったんだ。」


「生意気ー。あたいのこと見つけられなかったのに。」


「いい輝甲虫だ。大きいな。」



 取ったものを見せたのだろう。

 友達の三者三様の言葉。



「リディオの勝ちか。なら仕方ない。秘密の場所はお前のものだ。」


「ううん。それはダニーのでいい。

僕はさっき貰ったんだ。だから秘密はみんなひとつずつ。」



 そんな嬉しそうな声が、ふわりと風に乗ってあたしの耳にも届いた。

 風は前髪をくすぐって、思わず目を瞑ったその下までも絆して過ぎ去っていく。



「そしていま、みんなとの秘密も出来た。

僕たちみーんな遅刻、鐘の音に間に合わなかったね!」


「バカね。みんな知ってたら秘密じゃ無くなるじゃない。」


「……いいんだ。僕ね。秘密よりも、そのなかに居るのが好きなんだよ。」



 まるで待ってたみたいに、オレンジになり始めた空。子供達のやかましい声を聴きながら、空へとふわりと浮かぶ。


 伸びをした手の先には、薄く浮かび上がる一番星。

 地上を振り返れば、少しだけ伸びたリディオの影。



「……はいはい。あなたとの秘密ね。」



 ぴょこぴょこ跳ねる影の仕草に、念を押された気がして呟く。



 リディオの虫取り網が下がった。

 ぱたぱた村の中に入っていく子供達。



 見送っていると網が再び上がる。

 その先には……。


 虫かごがあった。紐をリボンのように結えてる。



 …………。



挿絵(By みてみん)


 リボンの四つの紐の束が風にそよぐ。まるで翅で、そして網は長い髪……。

 とんとんと上下しながら、ひっそりと4人の上に浮かんでた。


 ゆらゆら揺れる虫かごの、輝甲虫は気になるけれども。赤の光に照らされて、黒く沈んで輝きも潜めてるから……。今日だけは特別。



 どこに出しても恥ずかしくない、立派な……かぁ。


 秘密であったことは間違いないけれど。

 今日いちにちを思い返せばーー。



 …………赤くなってないってば。

 消えゆく陽の名残の光が、あたしを照らす。


 説得力は、……全然ない。

 赤く染め上げられた手のひらを裏返して確かめる。



 そしてあたしは……、向こうに揺れる立派なあたしに手を振って。

 夜の帳から来た心地よい風の中へ、身を踊らせた。

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