21.指先の、赤いちいさな秘密のはなし
夕ご飯前、赤い煌めきを纏ってぎりぎりに帰ってきた妙に機嫌の良いスフレの話。なにやら秘密のいいことがあったようで……。
毎回ひとつの独立したエピソード。どの話からでも、サクッと読めます。
基本、妖精スフレと魔法使いレイジの、少し甘い日常のひとコマです。
※挿絵は、AIイラストです。(使用ツール:ChatGPT Image Generation)
「ふんふん……♪」
灯りに翳した手のひらの、その先端。
眺めて、触って、微笑んで。
ふらふらと、家にもどったあたしは上機嫌。
ラフィのとこに長居がし過ぎ、陽は殆ど沈みかけ。
すこし遅くなったかなー、って。
ひらひらって、ご飯支度のレイジの周りを、翔んで回って気を引いて。
「まだー?」
なんて聞きながら。また、手を眺めて……。噛みしめる。
「何かあったのか?」
「……なーんでもない。」
手の先の、指の先。そこにあるのは小さな小さなあたしの爪。
ラフィとお揃い。綺麗に磨いて、整えた。
わざわざと、キッチンの横に降り立って、くるくるって回って、手を広げる。
先端に、そこに見えない痕跡に。ふふって笑う。
ラフィの持ってた、赤い色。ふたりで塗って、綺麗に染めて。
誰にも見せない、可愛いの形。鏡とラフィとあたしだけ。
今日は、とてもうまく出来たから。
左と右だけじゃ飽き足らず、ふたりで足の指まで染めあって……。
誇らしげな、彼女の顔も頭を過ぎる。
……楽しい。
そんなあたしを、レイジが見てる。
でもね。彼がどんなに見つめても、決して何も見通せない。
広げた手の先を見て、そして彼の視線を纏ったままに。
爪先立ちから、するすると解いたリボンみたいに回りながら空中へ。
だってね。色は落としちゃったもの。
……でもなぜか、爪に宿った可愛いの感覚はそのままで。
見えなくなっても眺めれば、翅と背筋が伸びていく。
普通の中に紛れて残る。あたしだけの気持ちのカタチ。
その味に、浸って心を蕩しながら。彼の瞳を、映るあたしを、眺めて微笑み、追いかける。
彼が、ふっと笑った。
何かがあったとバレバレだけど。
あたしの鼓動も、彼の視線も、秘密で編まれたヴェール越し。
だから薄布一枚、彼の間近に、澄ました顔で留まれる。
いつもの場所に、肩の上に座って。寄り添って。
足と翅を、ぱたぱたさせてーー
「……!」
浸った目をふと落とした足先に……。
ちらりと見えた艶の色。
翅が、胸が、どきっと跳ねる。
重ねて隠した足先の、ヴェールをはみ出す赤色で、顔も身体も染まってく。
添えた手の下で、暴れて響く鼓動の音と、怪しくなってく呼吸の中で。
耳まで染まる、瞬間の最後のひと呼吸。
すぅっと、息を吸い込んで……。
丸くした小さな小さな赤色を、そっと、彼の頬に寄せた。




