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小さな妖精スフレ、魔法使いの家でやらかしてます 〜彼といっしょの、ちいさな毎日〜  作者: 久寿 たまや
2期目

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19/24

19. 迷い犬とあたしの、かってはいけないはなし

雰囲気重視の掌編シリーズ。

毎回ひとつの独立したエピソード。どの話からでも、サクッと読めます。

基本、妖精スフレと魔法使いレイジの、少し甘い日常のひとコマです。

※挿絵は、AIイラストです。(使用ツール:ChatGPT Image Generation)


「返してきなさい。」



 玄関を開けてもらったら、即飛んできたレイジのひとこと。


 いや、言われるとは思ってたし。

 すこーししか期待はしてなかったんだけど。


 何を返すかって?

 吊り下げたモノを見下ろす。


 すると、白い塊のそいつもあたしを見上げて、尻尾をブンブン振って、ワンと鳴いた。



 見ての通り、犬。

 耳はふたつで足は四つ、尻尾もついてるなんの変哲もない犬。

 強いていうなら……、小さくてふわふわで、とてもかわいい子どもの犬。



「なんで拾ってきたんだよ……?

僕もスフレも家にずっと居るとは限らないんだから、飼えないだろ……。

それに、その子。スフレよりずっとデカくなるからな。」



 いや、まぁ分かってるし。

 だから、妖精は犬なんて飼わないし……。


 あたしも飼い方なんて、ヒトの本で知ってるだけ。

 でもさ、いつもみてるだけだからさ。

 なんか余計に。憧れるっていうか……。



「ねぇ、この子、きっと村から迷い込んだんだよ。

だからさ、飼い主が見つかるまでーー」


「いや、ダメだから。昨日からうろうろしてたから。

心配なら、村の警備の人に渡してこい。

飼うの、絶対にダメだからな。」



 バタン、と目の前で閉まる扉。



 かくして、あわよくば、なし崩しでうちの子に計画は、未然に防がれた……。




◇◆◇◆



 はてさて、あたしは犬と一緒に村の近くまでやって……きてない。

 犬と一緒に、家の周りをぐるっと一周。


 犬用のお水と、おやつの干し肉も持って来たので、気分はまるきり散歩。

 許可は得てないけど。飼い主が誰か分かるように、蔓を編んで首輪とか、作ってみたり。


 どうせ飼えないんだし、良いじゃん、雰囲気だけ楽しんだって。



 あちこち行くのと、急に走り出すのはあったけど。

 それはお互い様なので、全然許容範囲。

 体力的にも力的にも、子犬くらいだったらちょうど良かった。



 犬って、覚えさせれば番犬とか猟犬になるんだよね……?

 なんか、芸とか出来るようになれば、レイジも認めてくれたりしないかなぁ。



 村で見てた犬は、たしか……



「お手!」



 犬の前にぱっと翔んで、叫ぶ。

 えーと、確か手のひらを見せるはず。

 持ち上がる、でかいもふもふの手。


 しかしそれは、あたしの手のひらに触れる前に目の前で止まった。

 ぷにっとした肉球がよく見える。



 そして、わん!と元気よく鳴いた。


 触って欲しいのかな……?

 そう思って、こっちから犬の手に触れる。

 あ、なんか、やわらくて気持ちいい。


 手のひらに残った感触を楽しんでたら、犬もくるくる地面を回って喜んだ。


 かわいい……。


 

「おてー!」



 言えば、始まるあたしと犬のハイタッチ。

 なんかちょっと違うけど、これはこれで面白いかなー。


 犬もあたしも上機嫌。

 同じようにくるくると近くの草原をかけていたら、犬が突然茂みに消えた。



「どうしたのー?」



 近づいてみたら、ちょうど茂みから出て来た顔に鉢合わせ。

 その口には、茶色いボールがひとつ。


 遊びたいってことかな?


 ボールを受け取ると、犬はぱっと走って離れて行った。

 そして離れて止まって、振り向いて、尻尾を振る。


 それで、ピンと来た。

 これって、投げて拾ってきてもらうやつじゃない?



 わんわんと、催促の声。


 投げろってことだね。


 あたしにとっては、ボールはちょっと大きいけど。勢いをつけて、犬の方にぽいっと投げる。



 そしたら犬は、鼻でポンとボールを弾いた。

 あらぬ方向に飛んでいくボール。



 おっとっと、茂みに隠れてしまう前に無事キャッチ。


 すると、犬はもう一回やると言わんばかりに、わんわんと吠えた。



「もう一回チャレンジだね。いっくよー!」



 宙を舞うボール、そして跳ね飛ばす犬、拾うあたし。



「違うってばー。

咥えて持ってくるんだってば。」



 そう言って、ボールを直接渡してもみたけれど。

 上手く伝わってないのか、面白がってボールを離れたところに飛ばすばかり。



 けど、拾って渡すたび、喜んではくれるし。

 遊びとしてはこれでいいのかなぁ……。


 ……まぁ、ボール遊びができる、ということで。



 そう思ってたら、犬が前足を上げた。


 あ、お手。覚えてくれたんじゃない?



「おてー!」



 叫んで、犬とハイタッチ。


 肉球のぷにぷに感が、いい感じ。

 犬も回って尻尾を振って、喜んだ。



 良いんじゃない?賢いんじゃない?

 この子犬。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 「えー、もうお別れー?」



 口を尖らすスフレの足元で、

 目当ての犬は、似たポーズで抗議の後ずさり。



「もともと飼うって言ってないだろ?

ほら、ルカに渡して。」



 後ろの、幼馴染のルカを指差す。

 彼はいつもの馬で、僕宛の荷物を届けてくれたところだった。



「すっかり、仲良くなったみたいっすね。

白いふさふさの犬、たぶんこれ、レオン君ですよ。」



 心当たりがあるとのことだったが、見知った犬らしい。

 行く当てができたことに、こっそり安堵する。



「レオン君ー!」



 ルカが呼びかけると、犬は尻尾をふって、ワンと吠えて応じた。



「何をしてたんだい?」



 ルカが尋ねると、スフレが胸を張った。




「芸をね。覚えたんだよ。」



 そして、犬と顔を見合わせる。



「じゃあ、レオン君、いくよー!」



 笑顔のスフレに、レオン君が尻尾を振った。

 ワンと大きく吠えて、差し出された犬の手。それをすかさずスフレがタッチ。



「おてー!」



「……お手か?それ……?いや、お手だけどさ。」



「いいね……、スフレちゃん。それ、もう一回やってみてくれる?」



 ツボに入ったらしい。

 後ろで、ルカの震える声が聞こえる。



「ん?いいよ?」



 すかさず、ワオンと吠えて、手を翳す犬。

 それにタッチするスフレ。



「おてー!」



 満面の笑み。

 褒めて褒めてと言わんばかりのそれに、無いはずの尻尾を幻視する。



「……スフレちゃん……。凄いよ……、傑作。

他に何ができるんだい?」



 ルカは面白いもの、として犬とスフレをロックオンしたようだった。

 声を震わせたまま、続きを促す。



「ボールあそびかな。」



 そしてボールを持って離れるスフレと、動かず鎮座する子犬。



「いっくよー!」



 身を低くした子犬は、飛んできたボールに……。

 ワオンと応じながら、あらぬ方向に跳ね飛ばした。



「はっ……!」

「よっ……!」

「おおっと……!」



 ボールは、犬に返されるたびにあらぬ方向に飛び、

その度に空中でスフレがキャッチを決める。




 パチパチ手を叩くルカと、くるくる回って喜んで吠える子犬。

 そして、例の「お手」を決めて喜ぶスフレ。



「すごいすごい。スフレちゃん。ご褒美にお菓子をあげよう。」



 首を傾げるスフレ。

 表情は……わかってなさげ。


 何でー?と言わんばかりの表情をしながらも、渡された飴はしっかり受け取っていた。



「いやいや、いいもの見せてもらったわ。

スフレちゃんは、最高だね。」



 笑い転げるルカに目を遣れば、彼は何故か俺の顔を見て姿勢を正した。



「……おっと、これは失礼。

真面目に仕事に戻るとするわ。」



 ルカはそう言って、ひょい、と子犬を摘み上げる。



「あー……。」



 漏れた声は、スフレのもの。



「だめだよ、スフレ。飼い主がいるんだから。」



 言うと、彼女の翅がすこし下向きになり、動きが遅くなる。

 同じ視界に映る、ルカに持ち上げられて垂れた子犬の耳。

 両者のイメージが重なる。



「……はぁーい。」



 とても残念そうな声音ながら、バイバイと手を振って。犬と、ルカを見送るスフレ。


 表情は見えないが、たぶん笑っているのだろう。

 犬もわんわんと応じた。



 ……そして、ふと、彼女の下げてるバスケットからはみ出しているものに気づく。

 そっと取り出してみたら、それは輪だった。



 蔦製の、手作りの犬の首輪か……。


 スフレが作ったものだろう。

 編みはいくつも間違ってる、なのに、内側のささくれや皮は丁寧に取り除いてある。


 どこかちぐはぐで、優しい大雑把さだった。



 見送るスフレの背中と、その輪を見てるうちに……。

 魔が差した、としか言いようがないが。



 輪を、スフレの頭にかぶせる。



「んん……なに?レイジ。」



 振り向いた彼女に、かかった首輪。

 全然サイズが合わず、首から垂れ下がっている。

 が。まるで耳みたいに、頭に両手を乗せていた。



 いろいろ違うが、間違いではない、か?


 うっかり宿った思いに、ふっと笑う。



 『待て』がなかなか上手にならない、小さな彼女。

 その頭を撫でれば、長くて細くて、しっとりとした金色の髪の感触。


 ちょうど首元にぶら下がったタグには、何故か『スフレ』とだけ書かれていた。



◆◇◆◇


挿絵(By みてみん)

(挿絵: 被せられたスフレ(使用ツ―ル:ChatGPT Image Generation))


◆◇◆◇











本文終わり。

























……おまけ画像。

()()()ちゃったスフレ(使用ツ―ル:ChatGPT Image Generation)

挿絵(By みてみん)



エピソード番号間違って先出しちゃった……。

なんか色々挟んでたら、この話のエピソード番号がどんどん後回しに……。



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