↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS星の魔法少女  作者: ゆん
第一章 星の魔法少女になった日
9/24

第五話 Eランクになりました

入学式が終わった。


体育館から教室に戻ると担任の簡単な自己紹介と明日からの予定が伝えられた。教科書や学生証の配布もそこで行われ、真新しいそれを受け取った葵の口元がほんの少しだけ緩む。


「葵ちゃん、教科書ごときで嬉しそうだね。あたしは今すぐ燃やしたいくらいだけど?」

「ん、入学できたから。教科書はどうでも良い」

「あー、なるほどね」


真由がにこにこと笑っている。葵はというと、すでに机の上に学生証を置いてじっと見つめていた。


(これでようやく……Eランクの入場許可がもらえる)


高校生になれば、Eランクのダンジョンに入場できるようになる。それはつまり正式な探索者として活動できるということだ。


「葵。今日はこの後、協会に行くだろ?」

「ん。早く行きたい」


健太がひょいと学生証を覗き込んでくる。


「俺もEランク許可証ほしいし一緒に行くか」

「ん」

「ちょっと待って! 私も私も! 探索者に興味あるんだ!」


と、真由が手を挙げて参戦してきた。


(真由が?意外だな)


葵は少しだけ目を丸くした。なんせ真由は陽キャのリア充である。

たしか剣道をしていたから武の心得はあるのだろうが、探索者になる必要はなさそうに思えた。


「私、ヒーラー系のユニークスキルなんだ。そういうのでも探索者になれるかなって。それに、葵ちゃんと一緒に冒険してみたい!」

「おー、すげえな真由。ヒーラー系のスキルは数あれど、ユニークはレアだぜ。能力によっては引く手数多じゃねぇの?」

「ほんと? やった!」


真由がぴょんぴょん跳ねるように喜ぶ。


「いや、ユニークでスキルより強いのは激レアだぞ?普通は何かしらで代用できる。ヒーラーなら、それこそポーションとかな。ユニークは存在力関係なく使えるし、スキルオーブいらねぇから金もかからないし、あれば便利だけどなぁ。俺の”鋼の肉体”だって、高い防具つけたほうがつえーし。」

「あーあー。都合の悪いことはキコエナーイ!私ね、これでも剣道2段なんだよ!聖剣の聖女様なんて呼ばれちゃったらどうしよう。ねぇ、葵ちゃん!」

「大丈夫。真由なら似合う」

「やったぁ!」


自分たちだけではない、周りもハイテンションだ。高校デビューの日で半ドンだ、無理もない。


「よし、じゃあ行こうぜ」

「ん」


三人は連れ立って教室を出た。


「おい如月、お前もうナンパしてんのか」

「ちげーよ! こいつは俺の幼馴染だ!」


教室の出口で数人の男子に声をかけられる。どうやら中学時代の同級生たちだ。


「え、マジで葵なのかよ」

「マジだよ。ユニークスキルでTSしたんだと」

「まじかー……なんつーか、すげーな」

「かわいくなったよな」

「ああ。前から女顔だったけど、ここまでとは」


じろじろと見られるが、悪意はないようだ。こいつらは良くも悪くも単純なだけである。

葵は特に気にせず、軽く会釈をしてさっさと廊下を歩き出す。


「おい待てよ葵!」

「ん。早く」


「相変わらずマイペースだな……」

健太が苦笑しながら後を追う。真由も小走りでついてきた。


「葵ちゃん、堂々としてるよね。TSして高校初日って、緊張しなかった?」

「してた。慣れた」

「そっか……強いんだね」

「ん?…ちがう。真由と、健太のおかげ」


(TSしたって言ったのに何も気にしなかった真由も。空気を和らげてくれた健太も。ホント、いいやつらだよな。)


「二人とも、ありがと。」

「お、おう。」「う、うん。」


校門を抜けると、春の陽射しがまぶしい。


「探索者協会って、駅前だっけ」

「ん。歩いて十分」

「よーし、行くか!」


健太が元気よく拳を突き上げた。


*  *  *


探索者協会の建物は、駅前の一等地にでんと構えていた。


(ここに来るのは久しぶりだな)


葵は建物を見上げながら思った。父が生きていた頃何度か連れてきてもらったことがある。あの頃はまだ幼くて、探索者という職業がどれほど危険かもよくわかっていなかった。


「おっきいねー」


真由が感心したように見上げている。


「ん。ここは特に大きい。」


自動ドアをくぐると、中は意外なほどにぎわっていた。

あちこちの高校からデビューする人が集まっているのだろう。


「うわぁ、人だらけっ!」

「ん。人がゴミのよう」

「はっはっは。まぁ考えることは同じだよな!とりあえず受付いこうぜ。」


三人は受付に向かって歩き出す。

自分の順番が来ると、葵は学生証を握りしめた。心臓が早鐘を打っている。


「いらっしゃいませ。どのような御用でしょうか?」

「Eランク許可証の発行」

「えっ?えーと、はい、学生証を拝見しますね。それと、念のためステータスカードを見せていただいても?」

「ん」


どれほど小柄で華奢な見た目でも、強者はいる。見た目だけでは判断できないが、ステータスカードだけは絶対だ。自分の容姿を自覚している葵は素直にステータスカードを呼び出して受付嬢に差し出した。


「Lv35・・・!?し、失礼しました。成神葵さんですね。高校入学おめでとうございます」

「ん。ありがと」

「では、こちらの書類に必要事項を記入してください。保護者の同意書はお持ちですか?」

「はい」


葵はカバンから同意書を取り出した。母の静香が事前に書いてくれていたものだ。


(母さん、反対しなかったな……)


普通の親なら反対するだろう。探索者は死亡率が日本の全職業中トップを独走し、怪我による引退も日常茶飯事だ。一時ダンジョン配信が流行して配信事故が多発したことでその実態は広く知られている。


(たぶん、本当は反対したいんだと思う。・・・けど、信じてくれた)


父はAランク探索者だった。神奈川県で発生した魔物災害で殉職するまで国のために戦い続けた英雄だ。母も優羽も、華奢な葵を心配はしても、同じ道を進むことを止めたりはしなかった。


「終わった。」

「はい、確認しますね……はい、問題ありません。ではこちらの簡単な適性検査を受けてください」

「適性検査?」

「はい。Lvと存在力を確認するだけの簡単なものです。Eランク許可証の発行には、Lv10以上が必要になります」

「なるほど。」


葵は指定された検査室に向かう。


(Lvは問題ない……35あるし)


検査室には大きな水晶のような装置が置かれていた。魔力を測定する魔道具の一種だ。


「では、この水晶に手を置いてください」

「ん」


葵が手を置くと、水晶が淡く輝き始める。


「Lv35、存在力26100……問題ありませんね」

「よかった……」

「では、こちらがEランク許可証になります。有効期限は一年間です。来年も更新手続きをしてください」


葵は差し出された許可証を受け取った。


(これで……私も探索者だ)


手の中にある小さなカードがやけに重く感じられる。それは責任の重さでもあり、父の遺志を継ぐ覚悟の重さでもあった。


「やったな葵!」

「ん」


健太が嬉しそうに背中を叩いてくる。


「私も受けてくる!」

真由も検査室に駆け込んでいった。


「葵、お前本当に探索者になるんだな」

「ん。ずっと夢だったから」

「そっか……」


健太はしみじみと言った。


「俺も頑張るわ。お前みたいにかっこよくなれるように」

「かっこいい?」

「おう。お前、小さい頃からずっとかっこよかったぜ。性別が変わってもそれは変わんねーよ」


葵は少しだけ目を見開いた。


(……そうか)


胸の奥がじんわりと温かくなる。


「ありがとう」

「おう!」


健太が笑う。その笑顔は、幼い頃から変わらないものだった。


「できたよー!」

真由が許可証を手に駆け寄ってくる。


「おめでとう」

「ありがとう! これで私も探索者の仲間入りだね!」

「ん」


三人は顔を見合わせて笑った。


(これが、私たちの第一歩だ)


葵は許可証を大切にポケットにしまう。


(父さん……私、頑張るから)


窓の外では、桜の花びらが風に舞っていた。まるで葵たちの門出を祝福するかのように。


「よし、帰りに何か食ってこうぜ」

「賛成!」

「ん」


三人は連れ立って探索者協会を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。