プロローグ-後半- 星の魔法少女になった日
意識が浮上する。
まぶたの向こう側が、ぼんやりと明るい。
(……あれ?)
体が、やけに軽い。それになんだかふわふわとしている。まるで雲の上に寝かされているような感覚だ。
葵はゆっくりと目を開けた。
「……ここ、どこ?」
知らない天井だった。
白くて、清潔感のあるでもどこか無機質な空間。鼻をつく消毒液の匂い。耳に届く規則的な電子音。
(病院……?)
近所の総合病院だった。小さい頃、骨折した時に入院したことがある。あの時と同じ匂いがする。
「……生きてる」
ぽつりと呟いて、自分の声に違和感を覚える。
(なんか、声が……)
いつもより高い気がする。風邪をひいた時のようなこもった感じもない。透き通った、鈴を転がすような声。
(まあいいや。それより……)
ゆう姉は無事だろうか。
葵は体を起こそうとしたが思うように力が入らない。それでもなんとか首を動かして、周囲を見回す。
カーテンで仕切られたベッド周りには誰もいない。窓の外からは柔らかな陽の光が差し込んでいる。春の午前中という感じだ。
(結構寝てたんだな……)
確か、あの流星が落ちてきたのは深夜2時過ぎだった。ということは少なくとも半日は気を失っていたことになる。
(生きててよかった……いや、でもあの衝撃だぞ?)
どう考えても即死だった。なのにこうして意識があるのが不思議でしょうがない。
「……もしかして、夢?」
そう呟いて、ステータスカードを手元に表示させた。
この世界の人間なら誰でも魂に刻まれている、身分証明を兼ねたカードだ。これを確認すればすべてがわかる。
「……んぇ?」
**名前:成神 葵**
**年齢:15歳**
**性別:女**
**身長:143cm**
**Lv:35**
**ユニークスキル:魔法少女(星)**
**存在力:32944**
**スキル:なし**
「……女?」
カードを持つ手が震える。
「女になってる……」
なぜだ。どうしてだ。確かに俺は昨日まで男だったはずだ。いや、ついさっきまで男だったはずだ。
(流星に当たって性別が変わるなんてことあるか!?)
心の中で叫びながら、葵は恐る恐る自分の体を見下ろす。
病院着の下から覗く手足は以前よりさらに細くなっている気がする。それに、なんだか肌がつるつるしている。そして。
「……胸が、ある」
ぷるん、と小さなふくらみが二つ。Cカップくらいだろうか。控えめだが確かに存在している。
(なんでだ……?)
混乱する頭で、もう一度ステータスカードに目を落とす。
**ユニークスキル:魔法少女(星)**
「魔法少女……」
その言葉を口にした瞬間、全身が淡い光に包まれた。優しい、まるで星の祝福のようだった。
「え、ちょ……」
光はすぐに収まったが、葵の心は収まらない。
(なんだ魔法少女って……。こいつのせいで性別が変わったのか?)
ステータスカードは個体の魂に紐づいている。その情報は絶対だ。
その表示が「女」なのだから、もう女なのだろうが…
「魔法少年」ではない。「魔法少女」だ。
(意味がわからない。いや、理屈はわかる。スキルが魔法少女だもんな。なんで少年じゃないんだよ…)
流星に当たる瞬間、その軌道が変わったように思えた。もしかして直前で覚醒して、星の衝撃を抑えられたのか?…魔法少女(星)だから?なんてご都合主義なんだ…。
(でも別に、性別を変えなくてもよくないか……。)
同じことばかりぐるぐると思考が回っていると、病室の扉が開く音がした。
「葵っ!」
「……ゆう姉」
現れたのは姉の優羽だった。181センチの長身が、病室の扉をくぐるときに少し屈んでいる。
「よかった……本当によかった……!」
優羽は葵のベッドに駆け寄ると、その大きな体で抱きしめてきた。むぎゅとまた顔が胸に埋もれる。
「……苦しい」
「あっごめん! でも心配したんだから! お医者さんがね、無傷だって言ってたけど信じられなくて……」
(無傷?)
そういえば痛みはどこにもない。あれだけの衝撃を受けたのに骨折ひとつしていないのか。
「流星が直撃したのに……?」
「そうなの! すごい奇跡だよね! ユニークスキルが覚醒した瞬間だったから、その影響かもしれないって先生が言ってた」
「……そう、なんだ」
葵はもう一度ステータスカードを見つめる。
(このスキルが、俺を守ったのか?)
魔法少女(星)。まだどんな能力かわからないが、ありえるとしたら星属性攻撃無効とかだろうか。星属性なんて聞いたことないけど。
「あのね、葵」
優羽が少し言いづらそうに口を開いた。
「先生から説明あったと思うけど……」
「…?まだ、先生は見てない。」
「…そっか。えと・・・葵がね、その……女の子になっちゃったって」
「……知ってる。声が違う。ステータスカードも見た」
「そっか……」
優羽は複雑そうな表情を浮かべていたが、次の瞬間にはパッと笑顔になった。
「大丈夫だよ! 私がいるから! これからは姉妹だね!」
「……姉妹」
その言葉に、葵は改めて自分の状況を実感する。
(姉妹……俺は今日から、ゆう姉の妹なのか……)
「そう!もうね、元からかわいかったけど今の葵ちゃんはすごいんだよ。サラサラしててキラキラ光る天の川のような銀髪!穏やかな月のような優しい金眼!完全無比な超絶☆美少女!それでね、それでね!」
「待って。え、待って。見た目も変わってるの?」
「ほら鏡!」
(うわぁ。)
さっと優羽が取り出した手鏡に映る自分は、確かに日本人離れした美少女になっていた。衝撃である。
「それでね!」
優羽は持っていた紙袋をベッドの横に置いた。
「これ、持ってきたの」
「……何?」
「葵の着替えだよ。私が小さい頃に着てた服。今の葵ならピッタリだと思うんだ」
紙袋の中にはフリルやリボンがあしらわれた、いかにも女の子らしい服がたくさん詰まっている。
「……いやだ」
「え?」
「着ない。そんなの着たくない」
葵は首を横に振る。男だった頃のプライドが、それを拒否する。
「でも葵、今の葵は女の子だよ? それにその服すごくかわいいんだから」
「……いや。」
「葵〜」
優羽が悲しそうな顔をする。しかし葵は断固として首を縦に振らない。
すると、病室の扉が再び開いた。
「あら、葵、起きたのね」
「……母さん」
母の成神静香が入ってきた。手には小さな紙袋を持っている。
「よかったわ。心配したのよ」
「心配かけて……ごめん」
「いいのよ。無事ならそれで」
静香は優しい微笑みを浮かべて、葵の頭を撫でる。
「それでね、葵にプレゼントがあるの」
「……何?」
「下着よ」
にっこりと笑う母。差し出された紙袋の中を覗くと、そこには淡いピンクや白を基調としたレースのあしらわれた可愛らしい下着が入っている。
「……は?」
「さっき買ってきたのよ。あとでちゃんとしたものは買いに行くけれど、ひとまず間に合わせでも必要でしょう?」
「いやいやいや……」
「男物の下着じゃもう合わないでしょ? ちゃんと女の子用のを着ないと」
母と姉が顔を見合わせてうなずく。
(この二人、完全に結託してる……!)
「ほら葵、着替えよっか」
「……やだ。」
「ダメです〜。女の子になったんだから、女の子らしくしないと」
優羽が有無を言わさぬ笑顔で迫ってくる。
「いや……やめ……」
「大丈夫大丈夫! すぐに慣れるから!」
「慣れたくない……!」
葵の心の叫びは、春の陽だまりのような病室に吸い込まれていった。
(これが、俺の新しい人生……?)
窓の外では、昨夜の流星の欠片も残っていない青空がどこまでも広がっていた。
4月1日。成神葵、15歳。性別は女。ユニークスキルは魔法少女。
これは、そんな彼女の物語である。
AIに生成させたテキストを一部活用しています




