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TS星の魔法少女  作者: ゆん
第一章 星の魔法少女になった日
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プロローグ-前半- 星の魔法少女になった日。

 3月30日。


 この日は、成神葵にとって特別な日だった。


「……ふぁ」


 朝日が差し込む自室で彼は小さなあくびを漏らした。身長143センチ、体重は40キロに届かない。華奢な体格は男にしてはあまりにも頼りない。


 鏡に映る自分を見て、葵は内心でため息をついた。


(また、ちっとも変わってない)


 なで肩で、腰の位置が高くて手足は細い。筋肉なんてものは、いくら鍛えてもつきやしない。顔立ちだって女の子みたいで二重の大きな瞳はパッチリとしている。


「……おはよう、葵!」


「ん、おはよ」


 階下から聞こえる母の声に、葵は短く返事をした。これまた女の子みたいな声で。


 リビングに降りると、姉の優羽がすでに朝食をとっていた。


「あ、葵! おはよう! 今日はいよいよだね!」


「……ん」


「もー、そんな反応? 15歳の誕生日だよ? ユニークスキルが覚醒するんだよ? もっとワクワクしないの?」


 身長181センチの優羽は小さな弟を見下ろしながら満面の笑みを浮かべる。対する葵の身長は143センチ。見上げる形になるのが、どうにも落ち着かない。


「……してる」


「んふー。知ってる。かわいいなぁ、もう。」


 むに、と優羽が葵の頬をつまむ。


(やめろ。俺はもう子どもじゃない。……いや、子どもだけど)


「ふにふにだねえ、葵のお肌。ずるいなあ私よりきれいなんて」


「……やめ」


 されるがままになっている自分が情けない。だが姉には昔から逆らえない。何せ身長差が40センチ近くあるのだ。体重だって倍以上違う。優羽は見た目通りの膂力で、葵を軽々と抱き上げることだってできるのだ。


「今日は部活、休みとってあるからね。夜一緒にスキル覚醒を見守ってあげる」


「……いいのに」


「いいの! 私がそうしたいの!」


(ゆう姉は、昔から過保護なんだよな……)


 まあ、父が亡くなってから特にその傾向は強くなった気がする。1年前の神奈川県での魔物災害。Sランク。Aランク探索者だった父は、そこで命を落とした。


(親父は、すごかった。Aランクだなんてまさに英雄だ)


 葵は小さく息を吐いた。


 彼の実家は武道の古家で祖父は人間国宝と呼ばれたAランクの武道家だった。父もまた、その才能を受け継いでいた。幼い頃から鍛錬を積んできた葵だって技術だけなら誰にも負けない自信がある。


 だが。


(体格が、絶望的に向いてないんだよな……)


 いくら技があっても体重が軽すぎれば話にならない。探索者の戦闘では、どうしても重裝備が必要になる場面がある。重い荷物だって持てなければ長期の探索は不可能だ。何より、打たれ弱い。一撃でも喰らったらそれで終わりだ。


「葵、また難しい顔してる」


「……ん。」


「ユニークスキルのこと?」


「ん。」


 優羽は弟の頭をポンポンと撫でた。


「大丈夫だよ。葵は努力家だし、きっといいスキルが覚醒するって」


(だといいんだけど)


 葵は内心でそう思いながら、朝食のパンに手を伸ばした。


 勉学が嫌いな葵にとって探索者は魅力的な職業だった。自信もある。

 実践的なノウハウだっていろいろ教えられてきたし、戦場に身を置く精神性はしっかりと鍛えられてきた。


 だが。


(この体で、いつまで戦えるか……)


 獣人化のアイテムを買うか。筋力増加のスキルオーブを買うか。それとも、コツコツと存在力を溜めて身長を伸ばすか。


 でも、どれも時間がかかる。お金もかかる。


(だから、ユニークスキルに希望を託してる)


 15歳の誕生日。それは全での人間にとって、人生を左右する大イベントだ。


「葵、学校から帰ったら夜ごはんは葵の好きなものにするからね!」


「……うん。」


「んふー。そんなに喜んでもらえるなら、気合を入れないとね!」


(さすがゆう姉。喋らなくても伝わる。楽。)


 そう思いながら、葵は静かに牛乳を飲みほした。


*  * *


 学校が終わり、家に帰ると夕食の準備が整っていた。


「…おぉ。豪華。」


「でしょー! お母さん、張り切っちゃった!」


 テーブルには葵の好物がずらりと並んでいる。ハンバーグにえびフライに、ポテトサラダ。子ども舌の葵にはたまらないラインナップだ。


(……うれしい)


 口元がほんの少しゆるむ。


「あ、葵が笑った!」


「……笑ってない」


「笑った! 私、見ちゃった!」


 優羽がぎゅーっと抱きしめてくる。むぎゅ、と顔が豊かな胸に埋もれて葵はじたばたと手足を動かした。


(こいつ、いちいち胸を押しつけやがって……!)


「ふふふ、かわいいなあ葵は」


「……苦しい」


「あ、ごめんごめん」


 ようやく放してもらって、葵はぜえぜえと息を切らした。


(本気で殺されるかと思った……)


 夕食を終えると、葵は自室に戻って時計を確認した。


 22時。


 彼の生まれた時は、深夜の2時。草木も眠る丑三つ時である。


(あと4時間……)


 胸がドキドキしてきた。


(どんなスキルが覚醒するんだろう)


 できれば、体格の不利を覆せるような能力がいい。力不足を補えるもの。もしくは技の精度を上げられるもの。


(……なんでもいい。役に立つスキルなら)


 期待と不安が入り交じった感情を胸に、葵は家の裏手にある小さな丘に向かった。


* * *


 丘の上は、満点の星空だった。


「……きれい。」


 思わず声が漏れる。


 ここは葵のお気に入りの場所だった。幼い頃からよく来ていた。父と星を見たこともある。姉と流れ星を探したこともある。


「綺麗だよねぇ、ここ。」


 後ろから優羽の声がした。春先の夜はまだ寒いからと、カイロ代わりだからと抱きしめられている。

 優羽に抱かれると、葵の身体はすっぽりと入ってしまう。181センチの彼女と143センチの葵。並ぶとどう見ても姉弟には見えない。むしろ、母と子か年のはなれた兄妹のようだ。


「葵、子どもの頃からよくここで星を見てたよね」


「……落ち着くから」


「ふふ、そっか」


 優羽は空を見上げた。


「今日は特に星がきれいね。葵の誕生日を祝ってくれてるみたい」


「……大げさ」


「もー、そういうとこだぞぉ。」


 優羽が軽く葵の頭をこつく。


 1時50分。もうすぐ、葵の人生が決まる。


 葵は静かに、心の中で願っていた。


(どうか、いいスキルが覚醒しますように……)


 星に願を。そんな少女のような——いや少年のような気持で、空を見上げる。


 もうすぐ時計の針が、2時を指す。


 その瞬間——


 星が、瞬いた。


 いや。


「……え?」


 それは瞬きではなかった。星の一つが、どんどん大きくなっている。まるでこっちに向かって落ちてくるかのように。


「ちょ、葵……! あれ……!」


「……流れ星?」


 だが、そんな規模ではない。光はますます大きくそして明るく——


「伏せて!!」


 優羽が葵を守るように後ろに回し、その上に覆いかぶさった。が、それは男である自分の役目だろう。

 覆いかぶさってくる優羽を緩やかに受け流し、自分の後ろに放り投げる。ちょっと強く投げてしまったが、この緊急時なんだ許してほしい。


「っ。葵!!」 


 大丈夫、流星は直撃じゃない。おそらく落下点は目の前30mほど。衝撃さえ自分が受けきれれば、もしかしたら姉だけでも助かるかも。

 腰を落とし、両腕は目の前に。後ろ脚を地面に突き刺して低い姿勢で踏ん張る。


 (この、空気の読めない流星野郎。命に代えても、ゆう姉は守ってやる!!!)


 強く願った瞬間、自分の中の何かが消えた。そして何故か、星の軌道が直前で変わった気がした。

 30mは前で落ちるはずの流星が、葵の体を直撃する。


「————っ!?」


 視界が真っ白に染まり、何も見えなくなる。耐えるとか耐えないとか、ちっぽけな人間が語れるような衝撃ではなかった。

 体が浮遊感に包まれて、意識が遠のいて——


(あ……)


「葵! 葵っ……!」


 優羽の悲鳴のような叫び声が、静かな夜の空に響きわたった。


 時計の針は、2時を少し過ぎていた。


 4月1日深夜2時0分5秒。


 成神葵、15歳の誕生日。

 それは、彼の人生を——いや彼女の人生を決定づける、忘れられない日となったのである。

AI文章作成アリです。編集して使っています

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