第十話 正式に登録してみました。名前はまだありません
放課後になると、三人は連れ立って探索者協会へと向かった。
協会の窓口で清算を申し込むと、係員が手際よく魔石とドロップ品を査定していく。
「Eランク魔石が12個。合計出力がこちらです。容量はこちら。それにドロップ品の買取を合わせて……合計で6万2千円になります」
「おぉー!結構稼げた気がするね!」
「ん。」
「いや、そうでもないだろ。とりあえずテーブルに行こうぜ、清算する。」
「ん?」
6万2千円。お年玉を全部集めても届かない金額だ。ものすごい大金に思えるが、健太は苦笑しながら2人を連れて近くのテーブルへと向かった。
「ここから経費を引く。装備のメンテ代、各自の持ち込み分」
「あ~。私の刀、刃こぼれしてた。研がないと斬れないよねぇ。」
「日本刀の宿命。仕方ない。」
「メンテ用の油なんかも忘れるなよ。俺も盾と手槍のメンテだな。」
「ん。消耗品は…投げナイフ2本、ランタンの油、携帯食料人数分、飲み水人数分?」
「真由、なんかスクロール使ってなかったか?」
「んぇ?…あぁ!シャープネスっていう斬れ味増加のスクロール。だけどあれ、お試しを兼ねてたからいいよ。使わないといけない状況じゃなかったし。」
「いや、後半はもう斬れ味落ちてたんだろ?もらっておけ、遠慮されると困る時がくる。」
「ん-…。は~い、ありがと。…それをいうなら葵ちゃん、あのタオルって…」
なんやかんやと、経費を差し引いて残った金額はきっちり3万円だった。三人で均等に分ければ一人一万円になる。
「よし。臨時だったし、今日のところはこれで山分けな」
健太が封筒から取り出した札を二人に手渡す。葵はそれをじっと見つめてから、そっとポケットにしまった。
「うーん、なるほど。半日で一万円でもすごいんだけどさ、思ったより経費ってかかるんだねぇ。」
「まぁな。これ、あんなに余裕で苦戦もなく、さっくり潜っただけなんだぜ?ポーションだの医療だの防具の破損だの、ケガなんかしたら普通は赤字だ。真由の刀が折れなかったのもよかったな。日本刀なんてしょっちゅう折れるだろ。…Eランク探索者の収入はギリギリって、よく聞くよな。」
「ん。でも初めて稼いだお金。……なんか、感慨深い」
葵がしみじみと言うと、健太も真由も深くうなずいた。
「だな。確かに、俺たちが自分の力で、稼いだ金だ」
「今日は豪遊しちゃおっかなっ!」
「ん。これからもっと稼ぐ」
葵の言葉に、二人が顔を見合わせて笑った。
「その前に、ちょっと話があるんだ」
健太が真剣な表情になる。葵と真由も姿勢を正した。
「俺たち、これからも一緒に潛るんだろ?」
「二人がよければ。」
「私も!葵ちゃんと健太くんと一緒がいい!」
「おう。俺も同じ気持ちだ」
健太は二人の顔を順に見てから、ゆっくりと言葉を続けた。
「だったらさ、ちゃんと決めとこうぜ。金のことは特に大事だ」
「どういうこと?」
「パーティを正式に組むか、臨時で好きな時に組むかで話が変わってくる」
「?」
「パーティなら、経費の他にも未来への投資が必要だ。装備の更新とか、新しいスキルオーブの購入とか。そういうのをパーティ全体で積み立てて、残った分を均等に分配する。高ランク装備は高いからな…。今回なら利益はほとんど残らないと思うぞ。臨時なら、経費を全部清算した後に利益を均等に分ける。今回と同じだな。それが一番揉めないやり方だ」
真由がうんうんとうなずく。なるほど。なるほど?
「健太君、任せたよ!」
「ん。よろしく。」
葵も迷わず答えた。だって、そんな難しいことを言われてもわからない。
でも健太がこういうところで信頼できることは知ってる。なら、任せるのが一番だ。
「…いや、お前らなぁ。」
「えー、いいじゃん。管理してよ。わたし、健太君からのお小遣い制でいいよ?美少女2人を飼っちゃおうよ。わんわん♪」
健太は額を抑えてため息を吐いた。
「はぁ…明細は出す。親父に耳がタコになるほど言われんだ。金のことで揉めて解散したチームをたくさん見てきたって。」
「む。それ、私も聞いた。」
なんだか大変そうだと思って聞いていた記憶がある。
「パーティで戦うなら、必要な分は当然負担する。健太の盾で、私が助かる。真由の刀で、私が助かる。新しい装備やスキルは、パーティの財産。」
「おう、そういうことだな。」
「でも何が必要かわからない。任せた。」
「…おう。」
「あはっ。負担の分、多くもらってよ。もしくは、わたしたちがサービスしちゃう??」
「…ん。脱ぐ?お風呂くらいなら一緒でもかまわない。」
「おいやめろ、俺の性癖を捻じ曲げるな。…負担分は時間給でもらっておくわ。」
信用も信頼もできる。そう確信している。だから問題はない。
「よし。じゃあ、正式にパーティを組もう。名前はどうする?」
「パーティ名!?いいねいいね!かっこいいのにしようよ!」
「ん。考える」
三人はああでもないこうでもないと言い合いながら、夕暮れの街を歩いていった。
これから始まる冒険に、胸を躍らせながら。




