人類の勝利
正午、午後0時。昼休憩の時間になった。
続々と周りの同僚たちが昼食のために席を立っていく中、一人の男だけがパソコンと対峙していた。
ただ仕事を続けるために残っているわけではない。
(どうせなら、パソコンで見ようか)
男はデスクトップにあるテレビアプリをクリックした。
画面には「LIVE」と「見逃し配信」の二つのボタンが表示される。
男は「見逃し配信」をクリックし、番組一覧をスクロールしていく。
そして、今日の午前中に放送された報道番組を見つけると、迷わずクリックした。
番組が始まる。
男はマウスで早送りを続け、目的の特集が始まるところで手を止めた。
「今日の特集は、台風消滅システムです」
女性アナウンサーが席を離れ、モニターの隣に立つ。
モニターには台風の天気図と、男の会社の社長の姿が映し出されていた。まるで二人が対峙しているかのようだった。
(きたきた!)
男は心の中でガッツポーズをした。
特集では、これまでの台風による被害。
台風消滅システムが開発されることになったきっかけ。
システムを完成させるまでの苦労。
そして、今年ついにシステムが完成し、実際に台風を消滅させることに成功したこと。
さらに、台風がなくなったことによって社会がどのように変わったのかまで、順を追って紹介されていった。
スタジオに画面が戻ると、コメンテーターたちが次々と台風消滅システムへの賛辞を述べていく。
男は思わず笑みをこぼした。
男は、この台風消滅システムの企画立案者だった。
当初、役員たちから「そんなものは実現不可能だ」と却下された。
しかし男は会社の研究所の仲間たちと協力し、実現可能性を証明する実験を繰り返した。
そして、その結果をまとめた報告書を取締役会に提出。
ついに企画は承認された。
それから苦節十年。
今年の初め、台風消滅システムは正式に運用を開始した。
番組を見終えた男は、しばらく椅子に座ったまま、ぼうっとしていた。
十年。
長かった。
男は、これまでの苦労を思い出しながら、喜びを噛みしめていた。
やがて男は立ち上がった。
そのときだった。
一本の電話が鳴った。
男は受話器を取る。
「もしもし」
すると、女の子の高い声が聞こえてきた。
「はい、もしもし」
「全国小学生団体の代表、木崎かえでです」
「……は?」
男は首をかしげた。
「全国小学生団体?」
「単刀直入に言います」
少女は間髪入れずに言った。
「台風消滅システムの解除を要求します」
「えっ?」
男は眉間にしわを寄せた。
「今まで小学生は、台風で休校になるという一大イベントを楽しみに、日々の学校生活という苦行を乗り越えてきたんです」
「……」
「なのに、その唯一の楽しみを奪うとは言語道断!」
少女の声がさらに大きくなる。
「今すぐ解除してください!」
「いや、ちょっと待って――」
「もし解除しないのであれば、こちらにも考えがあります!」
「……」
男はしばらく黙っていた。
そして、
ガチャン。
受話器を置いた。
(何が全国小学生団体だ。ガキは教室でおとなしく勉強だけしていればいいんだよ)
男は舌打ちをすると、そのまま昼食を取るためオフィスをあとにした。
だが、男はまだ知らなかった。
翌日、全国のすべての小学校に誰も登校してこなかったことを




