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第三話:毒舌の女神

#犬神家の晩餐 #イヤミス #サイコホラー #マルチPOV #ネット小説 #なろう #サスペンス #閲覧注意

POV:浅野 栞 (Asano Shiori)

廊下から響くチェーンソーの音に総毛立つ。それでも私は必死に姿勢を保とうとした。大樹は死んだ。壊れた人形のように首を垂らして。吐き気がする。でも、それ以上に吐き気がするのは美結だ。あの「可哀想な女の子」が、あんな異常な性癖を隠していたなんて。出口を考えなきゃ。私は秀英高校の情報通よ。江戸をうまく丸め込めれば、助かるはず。「江戸くん」声がわずかに震える。「BBSの書き込みの件だけど……私はただ、みんなが噂していたことを書いただけよ。私が引き金になったわけじゃないわ」


POV:犬神 江戸 (Inugami Edo)

ワインを啜り、部屋に満ちる鉄(血)の匂いを楽しむ。「本当にかな、栞さん? 生徒会室のコンピュータで『偶然』見つけたデジタルアーカイブを見てみよう」別のボタンを押すと、プロジェクターには栞と朱里の非公開のチャットログが映し出された。『朱里様、花村静香がなぜいつも手帳に書き込みをしているかご存知ですか? 彼女、貴女が特待生をいじめるたびに記録しているんです。卒業時にメディアに送るつもりですよ』私は栞を凝視した。「君が朱里を唆して静香を襲わせ、それが大樹を動かす引き金になった。君こそが、静香の苦しみの裏にいた演出家だ」


POV:花村 静香(Hanamura Shizuka)

……そういうことだったのね。爪が白くなるほど手帳を握りしめる。ずっと、朱里が気まぐれに私を憎んでいるのだと思っていた。栞が朱里の耳元で毒を囁いていたなんて。ただ、それだけの……理由で?「どうして、栞?」低く、鋭い声で問いかける。栞は乾いた、短い笑い声を上げた。「だって、あんた退屈なんだもん、静香。その手帳を持って善人ぶっちゃって。あんたみたいな『良い子』が、追い詰められたらどこまで壊れるか見てみたかったのよ」


POV:岡島 蓮 (Okajima Ren)

すべてを記録する。ハンディカムのレンズを、崩れ始めた栞の顔に向ける。だが、面白いものを見つけた。画面の隅に、生徒会長の一ヶ谷慶介が、自分の銀のフォークに何かを慎重に塗っているのが見えた。彼はチェーンソーにも大樹の死体にも全く怯えていない。むしろ……興奮しているように見える。


POV:一ヶ谷 慶介(Ichigaya Keigo)

栞は喋りすぎだ。舌という臓器は、解剖するには非常に興味深い対象だ。制服の裏に隠したメディカルバッグの中には、滅菌済みのスカルペルのコレクションがある。「江戸くん」二人の言い争いを遮る。「栞が引き金なら、彼女こそが君の妹の死に最も責任があるんじゃないかな? 朱里が落ちた時に感じた苦しみを、彼女にも『体感』させてあげようじゃないか」


POV:浅野 栞 (Asano Shiori)

「何を言ってるの、慶介?!」叫んだ瞬間、座っていた椅子が自動的に前へ滑り出し、私をテーブルに固定した。江戸が微笑む。「慶介の言う通りだ。栞さん、君は噂話が好きだったね? 声を失った者のニュースを広めるのが好きだった。だから……知りたいんだ。自分自身が二度と喋れなくなるとしたら、どんな気分かな?」


POV:成海 亮介 (Narumi Ryosuke)

呆然と口を開けて見ていることしかできない。狂ってる。ダイニングテーブルの中央から機械仕掛けの腕がせり出してきた。犬神家の狂った仕掛けの一部だ。その機械の腕は、赤く焼けた鉄のやっとこを掴んでいた。「やめろ! 狂ってる!」立ち上がろうとしたが、廊下の扉が大きく開かれた。チェーンソーを持った影が入ってくる。不気味な犬の仮面を被っている。だが、背筋が凍ったのはその服装だ。それは秀英高校の女子制服だった。


POV:西園寺 エリカ(Saionji Erika)

「朱里……?」呟きが漏れる。ありえない。半年前、棺の中の遺体を見たのは私自身だ。仮面の人物は答えない。狂乱状態で叫ぶ栞に向かって歩いていく。チェーンソーの轟音が栞の悲鳴をかき消した。――ヴルゥゥゥゥン!!

赤い飛沫が壁に飛び散り、犬神家の先祖の肖像画を汚した。


POV:浅野 栞 (Asano Shiori)

言葉にできない痛みが走る。熱い何かが口の中に押し込まれた。肉の焼ける臭いがする。私の、舌だ。叫びたいのに、血で溢れた喉からはゴボゴボという音しか出ない。意識が遠のく直前、仮面の人物が耳元に顔を近づけるのが見えた。「私が墓場まで持っていった苦しみに比べれば、こんなのまだ序の口よ、栞ちゃん」囁かれた声。聞き覚えのある声。朱里の声だ。


二人が脱落した。さらに重苦しい沈黙が部屋を包む。江戸は立ち上がり、敬意の印としてワインを床に注いだ。「ゲームは始まったばかりだ。

次に告白したいのは誰かな? 『朱里』が君たちの他の秘密を解剖し始める前に」


テーブルの下で、一ヶ谷慶介の手が静かにリア(花村静香)の膝に触れ、誰にも知られない秘密の合図を送った。

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