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第二話:アスリートと壊れた人形

#犬神家の晩餐 #イヤミス #サイコホラー #マルチPOV #ネット小説 #なろう #サスペンス #閲覧注意

POV:森下 美結(Morishita Miyu)


回想:秀英高校、朱里の死から三ヶ月前。


キャッチャーミットに突き刺さる白球の音が、骨の砕ける音のように響いた。私はグラウンドの隅に立ち、ぬるくなり始めたペットボトルを握りしめていた。大樹が顔を真っ赤にし、荒い息を吐きながらグラウンドから上がってくる。挨拶はない。彼はひったくるようにボトルを奪うと半分ほど飲み、残りを私の頭からぶちまけた。「ぬるいんだよ、グズ」耳元で低く囁かれる。私はただうつむき、セーラー服がびしょ濡れになるのを耐えた。泣いてはいけない。人前で泣けば、後で二人きりになった時、彼はもっと荒れるから。「ごめんなさい、大樹くん」と私は呟く。私は彼を愛している。あるいは、そう自分に言い聞かせている。私のような退屈な女に、他に目を向けてくれる人なんていないから。


POV:辰巳 大樹 (Tatsumi Daiki)

美結のあの縋り付くような目が反吐が出るほど嫌いだ。壊してやりたくなる。『裏のルート』で手に入れた薬の副作用で、じっとしていても心拍数が140を超えている。吐き出す場所が必要だった。あの夜、暗い部室で、私は美結の首を顔が真っ青になるまで絞めていた。そこへ、犬神家の令嬢である朱里が入ってきた。「あら、大樹くん、随分と激しい遊びをしているのね?」朱里は嘲笑うような、銀の鈴を転がす声で笑った。彼女は折りたたみ式の携帯を向け、こちらにカメラを構えている。「この動画を奨学金委員会に流したら、プロ入りの夢もゴミ箱行きね?」人生で初めて、人を殺したいという衝動を覚えた。


POV:犬神 朱里 (Inugami Akari - 記憶)

彼らが震えるのを見るのが大好き。屈強な大樹と、惨めな美結。迷路の中のネズミみたい。お金なんていらない、欲しいのは服従だけ。「大樹くん」私は携帯を撫でながら言った。「動画をバラされたくなければ、私のために動いて。江戸お兄様を長く見つめすぎた生意気な女に、『お仕置き』が必要なの」私は花村静香の名を告げた。あの地味な女の精神を粉砕してほしかった。最高に醜悪なドラマが見たかったの。


POV:花村 静香(Hanamura Shizuka)


現在:犬神荘のダイニングテーブル。


朱里の命令で、大樹とその取り巻きたちがクラス全員の前で私の手帳を切り裂いたのを覚えている。美結はただ隅に立ち、顔を背けていた。今、このテーブルで、江戸が映し出すプロジェクターの映像に、大樹が酷く怯え、汗を流している。江戸が流したのは映像だけではない。音声記録もだ。『お願い……大樹、やめて! 彼女を突き落としたりしないで!』それは、はっきりと録音された美結の啜り泣く声だった。


POV:犬神 江戸 (Inugami Edo)

「おや、興味深い録音だろう?」私はプロジェクターの音を消した。広間に再び静寂が戻り、大きな柱時計の音だけが死刑宣告のように響く。大樹が立ち上がり、狂ったようにステーキナイフを掴んだ。「嵌めたな、江戸! やったのは美結だ! 朱里に嫉妬してたんだ!」と叫ぶ。私はただ静かに微笑んだ。「美結さんが? 虫一匹殺せないような彼女がかい?」突如、大樹の椅子の真上の電球が弾けた。――パリンッ!


POV:辰巳 大樹 (Tatsumi Daiki)

暗闇。椅子の背後から、冷たい何かが首に巻き付くのを感じた。人の手じゃない。改造された背もたれの自動機構から繰り出された、細い鋼鉄のワイヤーだ。「ガッ……! み……ゆ……たす、け……」ワイヤーが首の皮膚を切り裂く。指を隙間に差し込んで緩めようとしたが、ワイヤーはさらに締め付けられた。――ブチッ!ワイヤーの鋭さに、私の指先が切断された。目の前の透き通ったスープに向かって、鮮血が噴き出した。


POV:森下 美結(Morishita Miyu)

私は大樹のすぐ隣に座っている。彼の温かい血が私の頬に飛び散った。三年間で初めて、恐怖を感じなかった。むしろ……空腹を感じた。私はスプーンを取り、大樹の血でどす黒く染まったスープの中に浸した。そして、他の友人たちが絶句する中、それを自分の口へと運んだ。「……甘いね、大樹くん」私は満面の笑みで囁いた。


大樹の首は異様な角度に折れ曲がり、鋼鉄のワイヤーがその頭部を肩から分断せんとしていた。テーブルの端で、江戸が静かに拍手をする。「一人の嘘つきが報いを受けた。次は誰かな? おや、栞さん……随分と顔色が悪いね。死ぬことが天国へ帰る唯一の道だと言ったのは、君だっただろう?」


それまで施錠されていた扉がわずかに開き、暗い廊下にチェーンソーを携えた人影が、唸りを上げながら姿を現した。

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