第一話:嘘つきたちの晩餐
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POV:犬神 江戸 (Inugami Edo)
マホガニーのダイニングテーブルの上、クリスタルのシャンデリアが青ざめた顔ぶれを反射している。私はテーブルの端、かつて父が座っていた場所に腰を下ろした。目の前には、朱里の「友人」だった九人が硬い表情で座っている。給仕が運んできたのは、薄めた血のように赤いコンソメスープだ。「来てくれて感謝するよ」私は静かに言い、銀のスプーンをわざと鋭く鳴らした。「今夜は単なる卒業祝いじゃない。これは『誠実さ』についての集まりだ。メインディッシュの前に、皆に見てもらいたいものがある」テーブルの下のスイッチを押すと、背後のプロジェクタースクリーンがゆっくりと降りてきた。
POV:西園寺 エリカ (Saionji Erika)心臓が激しく脈打ち、耳鳴りがする。江戸はなぜ「誠実」と言いながら私を見たの? 慶介の方を盗み見たが、彼は虚ろな目でステーキナイフを弄んでいるだけ。部屋が寒すぎる。別荘の冷房は、わざと極端な温度に設定されているかのようだ。私は椅子の下のシャネルのバッグを弄り、例の小瓶があることを確認した。犬神家に壊されてたまるもんですか。
POV:岡島 蓮 (Okajima Ren)
スクリーンが点灯した。現れたのは、粒子の荒い白黒の監視カメラ映像。六ヶ月前、秀英高校の廊下だ。このクリップは知っている。朱里が階段の下で死体となって発見される十分前の映像だ。だが待て……このカメラの画角は、警察が持っていたものとは違う。江戸は犬神家独自の隠しカメラにアクセスしているんだ。画面には、朱里と激しく言い争う誰かのシルエットが映っている。その人影は、野球部のジャケットを着ていた。
POV:辰巳 大樹 (Tatsumi Daiki)
クソッ! 俺のジャケットだ。こめかみから冷や汗が流れ落ちる。テーブルの下で美結の手を強く握りしめた。関節が軋む音が聞こえるほどの力で。美結は声を上げず、ただ死んだような目でスープを見つめている。「江戸、これはどういう意味だ?」俺の声はかすれていた。江戸は薄く笑った。「落ち着けよ、大樹くん。まだ前菜が出たばかりだ。君が、妹が『足を踏み外す』直前に何を囁いたのか……それを知りたいだけさ」
POV:浅野 栞 (Asano Shiori)
大樹の反応を満足げに眺める。面白い。あのお馬鹿さんが朱里と一緒にいた最後の一人だったわけ? 私は赤ワイン(未成年だからもちろんノンアルコールだが、江戸のルールは特別だ)を一口啜った。けれど、江戸が次のスライドに切り替えた瞬間、私の笑みは消えた。それは学校のBBSの書き込みをプリントアウトしたものだった。私が匿名アカウントで流した卑劣な悪口の数々。「そして栞さん」江戸の声が静寂を切り裂く。「君の文章はとても詩的だ。『偽物の天使が天国に帰るには、死ぬしかない』。彼女が死んだ夜、これを書いたのは君だね?」
POV:花村 静香 (Hanamura Shizuka)
テーブルの下で、こっそりと手帳を開く。私は書き込んだ。江戸はすべてを知っている。彼は犯人を探しているんじゃない。処刑の前に、私たちを弄んでいるんだ。出口の方に目を向ける。施錠されている。部屋の隅に立つ給仕たちを見る。彼らの顔は人形のように無機質だ。これは晩餐会じゃない。弁護士のいない法廷だ。
POV:一ヶ谷 慶介 (Ichigaya Keigo)
「江戸くん」私は生徒会長としての完璧な微笑みを崩さず、言葉を挟んだ。「証拠があるなら警察に渡せばいい。なぜ私たちをこんな場所に集める? これは少し……悪趣味が過ぎるんじゃないかな」江戸は立ち上がり、ゆっくりと私の方へ歩いてくると、私の肩に手を置いた。その手は氷のように冷たかった。「警察には芸術的センスがないからだよ、慶介くん。それに彼らは、私が君たちのために用意した『罰』には同意してくれないだろうからね」
江戸が指を鳴らした。主照明が消える。プロジェクターの光だけがダイニングを照らし、コンクリートの上で無惨に砕けた朱里の遺体の写真を浮かび上がらせた。
「今夜のメインディッシュは」暗闇の中で江戸が囁く。「『告白』だ。最初に話し始めた者には、最も痛みの少ない死を与えよう」
テーブルの端から押し殺したような悲鳴が上がり、続いて鋭利な刃物が木材に突き刺さる鈍い音が響いた。




