コンビ誕生?
「あの、この老人は牢にぶち込んでおきますか?」
指揮官を失った若い官吏が、思遠に問いかけた。
「いえ、井戸からも周囲からも凶器は見つからなかったですし、今さっき殺された様子ではないですから、色々お聞きして帰って貰って良いのでは?」
「ありがとうございます!よかったね、お父さん」
「……」
相変わらず、反応は乏しいが老人は縄を解かれ、体をほぐすように動かした。
若い官吏は、娘を相手に色々と話を聞き始めた。
「あの、ゴシツイさん」
殴られた女が、思遠に近づいた。
「は、はい」
「皆、いなくなっちゃいましたよね」
「え? あ、はいそうですね」
「この女性、どこへ、どうやって運びますか」
「あっ……少年! 普通、御遺体はどこへ運びますか?」
「さぁ」
「え?」
「僕、輪番制で今日からこの仕事について、何もかもが初めてです」
若い官吏は、清々しく答えた。
「ええ!?」
「じゃあ、君の上の人とか、呼んできてもらって……」
「無理です。これから誰にも言えない事件現場に行くといってました。何処にいらっしゃるか分かりません」
「……ど、どうすんの……え?ど、どうしよう」
「ゴシツイさん。私、手伝います。この人運ぶのも、調べるのも」
「ええ?」
「なんだか分かりませんが乗りかかった船だし、最後まで一緒に行こう。この人がどうして、こんなことになっちゃったのか、微力ながらこの私も捜査に加わりますよ。やってみたかった気がするんですよね、名探偵」
「はぁああ?」
「だから、助手として家に置いてください」
女は、握手を求めて右手を差し出した。
「えー⁉そ、そんなの、無理で……」
「あんた、まだ嫁も貰ってないし、一人で薬師して、家には奴隷も雇人もいないだろ」
魏泰が、歩み寄り思遠の肩を叩いた。
「なぜ、それを?」
「この都市でしらねぇことなんてないさ」
「では、この女性は……」
「ここのもんじゃない。それだけだ」
「この魏オジキが、貴方の所に転がりこむのがいいんじゃないかって」
女は、紹介するように魏泰の方に手を差し出した。
「お前さん、それ、ばらしたら駄目だろうが」
「え?そうなの?」
「な、なんて余計なことを勝手に……」
思遠の目は、くるくると動いた。
「頑張って働きますので、家とご飯をください」
「……」
「いっそのこと、どうですか?私が名探偵で、あなたが助手なの。まかせて。この背中についてきなさい!」
うん、私カッコいいわ。と女が一人喜んでいる。
「なっ……なんて人だ、さっぱり意味がわからない。え? どういうことですか」
困惑する思遠と、肩を震わせて笑う魏泰を無視し、女は遺体の乗せられた板に手をかけた。
「重っ……おかしい、おかしいわ……私、もっと力とか有り余ってたきがするのに……なんか、コレジャナイ感が……」
「君に運んでいける気がしない」
思遠は女の細い腕を見て言った。
「そもそも、頭は大丈夫なんですか」
「昔から、瘤ができれは大丈夫って言いません?」
「いいません」
「おい、埒が明かないぞ、お二人さん。仕方ねえな。お前ら、手伝ってやれ」
魏泰が、世話が焼けるとばかりにため息をついて、手下たちに声をかけた。
手下たちは、「はい」と言いながら動き出した。
「じゃあ、呉疾医、その女たちの事はまかせたぞ」
「がってん」
「なんで、君が答えるの⁉」
二人の騒がしい会話を尻目に、魏泰が立ち去っていく。
「さぁ、私たちも行きますよ、ゴシツイさん。こっちよ」
「そっちじゃない! え、ちょっと、本当に勘弁してください。いっかい黙って、え、えー、何でこんな事に? 嫌すぎる。意味が分からなすぎる。今日だけ、今日だけですよ。明日になったら、官吏さんに相談して、家族を探してもらってください」
「おっけい!了解。承知です」
思遠は、頭を抱えた。
今日の星巡りは悪すぎる。女難の日かもしれないと思った。
彼は、頭の中で御祓いの日取りを考えた。




