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そんなに好きなら、もうその世界に転生してしまいなさい。  作者: 葉山麻代


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08 帆立の貝紐

 オーブンからプリンを出したあと、社長は設定温度を物凄く下げていた。


「90℃って、何を作るんですか?」

「これ、何だかわかるか?」

「多分ですが、帆立て貝の何かかと」

「お、知ってたのか?」

「あ、いえ、帆立て貝を焼いたときの良い匂いがしていましたので」

「あー、お菓子作っていたのに、ごめんな」


 社長は笑いながら天板にクッキングシートを敷き、帆立貝のなにかを並べ始めた。


「これは帆立の貝紐だ。つまみに有るだろう?」


 僕は良く考えてみた。


「あ!乾物おつまみの、帆立の貝紐だ!」

「正解。レシピいるか?」

「ありがとうございます。あれって、作れるんですね」

「材料が手に入っても作れない物って、少ないぞ?」

「そうなんですね。社長は本当に凄いです」


 社長がふと笑った。


一抹(いちまつ)君は、素直に喜んだり褒めたりしてくれるから教え概があるよ」


 考え方が変わったのは、向こうの世界で絶望したからだ。


「僕、1度死にかけました。約半年間目が覚めなかったことで、復帰した時の皆の温かさに色々改めました。感謝したことはその感謝を伝えられるうちに伝えておかないといけないと知りました。僕が目覚めた時、厳格で物凄く厳しかったはずの母が、声をあげてわんわん泣いたんです。勉強なんてやる気がなくて、いつもゲームばかりしていて、いつも怒られていて、母からは嫌われていると思っていました。でも違ったんです。母は本当に僕のために、色々言ってくれていたと気が付きました。そこから態度を改めて、きちんと勉強を始めました。入院中に学校の先生に相談したら、ほとんどの先生が復習に付き合ってくださって、今の高校に合格できました。それまでの僕は成績が最底辺で、そりゃ酷いものでした」


 僕は最後笑ったのに、社長は目を潤ませていて、奥さんに至っては、目からハンカチが離せないほど泣いていた。


 泣かせるつもりだった訳じゃないのに、こりゃ困った。僕は更なる一撃を放った。


「実を言うと、その目が覚めなかった間、ずっと夢を見ていました。そこは異世界で、優しい母とおおらかな父がいて、僕は前世の記憶を持ったまま転生しました。なのに、なにも出来なかったんです。前世無双は、前世に習得した確かな知識があっての物だと思い知りました。マヨネーズは、実はその世界で作って失敗しました。あはは」


 今度は、二人は驚いた顔のまま固まっていた。


「その世界の神様に、僕に知識を授けてくださいと願ったら、こちらの世界で目が覚めました」


 しばらく二人は無言だった。


光明(みつあき)君、小説家になったら?」


 社長の奥さんが呟いた。


「なれたら良いですね。そんなわけで、どんな事でも知りたいと思っています」

「そんな壮大な理由だったとはなぁ」


 そして、なぜ聞いていない知識まで教えてくれるのかを教えてくれた。


「実はな、昔のバイトに物書きがいて、聞かれたこと以上の知識を話すと物凄く喜んでな。一抹(いちまつ)君も、そういうのかと思っていたんだよ」


 成る程。だから聞いた以上の豆知識とか付属情報を教えてくれていたんだなぁ。僕は本当にありがたいと思った。


「あ、うちの母には内緒でお願いします」

「了解した」


 社長は笑って頷き、奥さんは真顔で頷いていた。



光明(みつあき)君、豆知識を話すからメモしてね」


 社長の奥さんが復活したのか、笑顔で語りだした。


「おからはお豆腐がおいしい店で分けてもらうと出来上がったクッキーの味がかなり違います。おからの状態で食べてみてほんのり甘いものが大豆の質の良いおからです。出来上がるクッキーは小麦粉を使っていないため口溶けしません。50gを飲み物と一緒に食べるとかなり満足感があるようです。熱が抜けたもの50gで約170キロカロリーです。さらにカロリーを抑えたい場合、黄身を抜き白身だけ計って作ってください。おからと同量必要です」


 僕は慌てて書き記した。ほとんど速記だ。直ぐに清書しないと、後で読めなくなってしまいそうだ。


「今後とも、余計な事まで説明するから、よろしくね」


 社長の奥さんはニコッと笑って言い放っていた。


「はい!期待しています!」


 社長の奥さんは外に買い物に行くらしく、出かけていった。


一抹(いちまつ)君、時間まで少し休むと良い。仮眠するなら休憩室で寝ていて良いぞ?」

「ありがとうございます。少し休ませていただきます」


 休憩室に行き、先ほどの速記もどきを分かりやすく書き直した。これなら後で読んでも意味がわかる。


 そっとドアを開け、社長が帆立の貝紐のレシピを置いていった。


━━━━━━━━━━━━━━

 帆立貝紐のおつまみ


 帆立貝ひも 200gくらい

 醤油    大さじ1

 味醂    大さじ1

 酒     大さじ1

 砂糖    大さじ1

 一味唐辛子 少々


 貝ひもは、最初は濡らさないようにして塩でよくもみ、何度か水を替えてよく洗う。

 ザルにあげ、一つずつシゴイてしっかり水気を切る。(←重要)

 調味料を鍋に入れ、火にかけ、沸騰したら貝ひもを入れ、さっと煮る。

 一味唐辛子を加え、よく混ぜる。

 オーブンシートに丁寧に広げ、90~100℃のオーブンで30分乾燥させる。

 取り出してあら熱を取り、完全に冷めてからジッパーバッグで保存する。

━━━━━━━━━━━━━━


 これはそのまま書き写した。覚え易そうな配合なので、1度作ってみたいなぁと思った。だけど、貝紐が売っているのなんて見かけたことがなく、作る機会に恵まれなかった。

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