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そんなに好きなら、もうその世界に転生してしまいなさい。  作者: 葉山麻代


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27 梅仕事(梅干)・竹の子ご飯

 6月の3週目の土曜日の夜。


 塩漬けにした梅から水分が充分出たので、塩揉みしておいた赤紫蘇を梅に加えることになったと説明された。


「たいして作業はないから来なくても良いんだけど、見たいなら参加する?」

「はい。一通り見て、自分でも作れるようになりたいと思います」

「そう。なら明日の昼頃、梅に紫蘇を混ぜます」

「はい。ちょっと楽しみです」



 昼頃と言われたので12時に来てみたら、社長の奥さんは、お弁当をお客さんに渡しているところだった。


「おはようございます。手伝わなくてよかったんですか?」

「おはよう。5人前だけだったからね。それより光明(みつあき)君、竹の子ご飯食べない?」

「食べたいです」


 真竹(まだけ)の掘りたての(たけのこ)を持ち込まれ、竹の子ご飯を作ったらしい。掘りたての真竹は、よく売っている孟宗竹(もうそうちく)の筍ほどアクがなく、アク抜きも簡単に済むそうで、さらに、破竹(はちく)と言う筍なら、茹でるだけで食べられるそうだ。

 これは余談だが、メンマを作るのは、麻竹(まちく)という品種で、漢字の読み方に注意が必要だ。


「昼ご飯は食べたの?」

「これからです。母が家にいないので、帰って何か作ろうかと思っていました」

「そう。なら、たくさん食べて良いわよ」


 竹の子ご飯と、味噌汁と焼き鮭が出された。社長と奥さんも今からお昼ごはんらしい。


「美味しいです。どうやって作るんですか?」

「この筍は、真竹という日本古来からの竹の筍で、簡単なアク抜き、もしくは堀りたてなら茹でるだけで使えます。ご飯の方を味付で炊いて、竹の子、細切りのニンジン、斜め切りした絹さや、小さく切った油揚げを別に味付けして、炊き上がったご飯に混ぜるのよ。正確には、混ぜご飯ね」


 勝手に、炊き込みご飯だと思っていた。


「一緒に炊き込まないんですか!?」

「具材が崩れちゃうからね」


 商売のものは、家庭料理とは少し違うらしい。


「これ、僕が食べなかったら、どうしたんですか?」

「おにぎりにして、冷凍するわよ」


 食べても食べなくても問題はなかったようだ。



 竹の子ご飯を食べ終わり、いよいよ赤紫蘇を梅に加えることになった。


「空の容器を用意して、しっかり消毒し、梅酢と梅を分けます」


 同じタイプの大きなプラスチックの漬け物桶と、ボールが用意されていた。梅を取り出し、まだ色のついていない梅酢はボールに入れている。


「梅酢の方に紫蘇を加えてしっかり混ぜ、少しだけ桶の底に赤い梅酢を入れ、まだ赤くない梅を並べていきます」


 梅酢に紫蘇を加えると、梅酢が綺麗な赤色に発色していった。このまま繰り返して並べ、紫蘇入りの赤くなった梅酢を梅にかけ、全てをしまい直すのだ。


「横着して梅酢にだけ紫蘇を加えてそのまま梅にかけても、梅が少量なら余り問題なく色がつきますが、大量の梅の場合、底の方の梅に色がつかないこともあるので、しっかり紫蘇が混ざるように詰め直します」


 桶は2つなので、社長の奥さんの説明を聞きながら真似をして梅を埋め込み直した。


「梅はもうほとんどカビることはないけど、紫蘇は空気にさらされた部分がカビます。しっかり梅酢に浸かるようにしてください」


 紫蘇を加えた分、液体に浸かり込でいたはずの梅が、ひょっこり顔を出してしまっている。どうしたら良いだろうと悩んでいると、こちらを覗いた社長の奥さんが教えてくれた。


「重石の重さを少し軽くして載せておけば大丈夫よ」


 内蓋を載せ、少し軽くした重石を載せ直した。すると、内蓋の上まで、赤い梅酢が覆い尽くした。最初より、大分赤紫に色が濃くなってきている。


「これで、あとは干すのを待つだけよ」

「干す時も手伝います!」

「それはありがたいわぁ」


 社長からは、手伝ってくれて助かったと感謝されてしまった。

 赤く染まった手をしっかり洗い、手を拭いていると何か渡された。


光明(みつあき)君、はい、これ」


 帰り際に社長の奥さんから、衝撃的な時間表記のプリントを配られた。

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