28 社員旅行 1
6月初旬のある日。
「光明君、月末頃の水曜日に社員旅行的なものに行くんだけど、やっぱり学校あるわよね?」
社長の奥さんから尋ねられた。
「具体的にはいつですか?」
「第3週でも4週でも良いんだけど、出来れば第4週かな」
「あ、第4週の水曜日なら設備点検があるらしくて、休校です」
つい先日、学活で通達されたのだ。
「そうなの?」
「もし良ければ、参加させてください」
「大歓迎よ!」
ニコニコと受け入れてくれた。
「ところで、どこに行くんですか?」
「味覚狩りは確定、あとはまだ決まってないわ」
「味覚狩り、それは楽しみです」
この時期の味覚狩りって、なんだろう?
そして3週目の日曜日、先日塩揉みした赤紫蘇を梅干に加えた帰り、プリントを配られた。
━━━━━━━━━━━━━━
☆社員旅行のお知らせ☆
日時 6月○日(水) 7:59集合~ 17:00頃解散予定
行先 山梨県
持ち物 簡単な着替え、タオル、お土産代
旅程
8:00 出発~ 海老名SA~ 談合坂SA~
10:00 山梨県笛吹市(桃狩り)
11:00 甲州市(ワイナリー見学・試飲)
12:00 昼食(ほうとうの予定)
13:00 天空の湯(入浴)
14:30 ハーブ園見学(お土産物購入)
15:00 出発~ 談合坂SA~ 海老名SA~
17:00 到着予定
注意 マイクロバスでの移動なので、
乗り物酔いをする人は、
酔い止め薬を飲んでおいてください。
━━━━━━━━━━━━━━
さらっと見て見落としそうになったけど、集合時間が独特すぎる。絶対に遅れてくるなと言う、強い意思を感じる。
僕が紙から目を離せないでいると、社長から声をかけられた。
「何か気になるところでもあったか?」
「あ、いえ、時間厳守の新しい表記方法だなと思いまして」
「それな、実質的な強迫だよな」
社長が笑ながら話していた。奥さん独自の表記らしい。
「でも、分かりやすくて良いですね」
「まあな」
社長
社長の奥さん
山田さん(社員)
ベテランパートさん(昼)
ベテランパートさん(夜)
中堅パートさん(昼)
中堅パートさん(夜)
中堅パートさん(夜)
新人パートさん(昼)
新人パートさん(夜)
一番新しいパートさん(昼)←牧野さん
アルバイトの僕
総勢12名。
残念ながら、お客によく絡まれる新人ちゃんと呼ばれていた私立高校のアルバイトの女子は、学校が休めないため不参加だった。物凄く悔しがっていた。もう1人、夜のパートをしている男性も不参加で、他の仕事が休めないそうだ。
なんとマイクロバスの運転は、普段お客さんで来る人らしい。大型2種免許まで持っているのに、普段は運転とは違う仕事をしているそうで、この日は本業を有給で休んで来るそうだ。お休みの日まで働く事に疑問はないのだろうか?
当日。
僕は、少し早めの15分前に到着したのに、一番最後だったらしい。
「皆さん早いですね」
「時間厳守だからね」
ベテランパートさんが笑ながら答えてくれた。
マイクロバスに荷物を積み込むらしいので、少し手伝った。
「光明君、おはよう。バスの中で何飲む?」
「おはようございます。えーと、どんなものがありますか?」
「大人はお酒な人も居るから飲まない人用には、梅ジュース、シソジュース、麦茶が用意があるけど、他に飲みたいものがあるなら、今のうちにリクエストしてね」
「はい。ありがとうございます」
大きなウォータージャグに氷入り冷水と、小さなウォータージャグに麦茶を用意しているらしい。冷水は希釈ジュースに使ったり、お酒の水割りを作るのに使うそうだ。うん、ほとんどお店の仕様だよね。
大きなクーラーボックスも積み込み、氷も有るらしい。
「右筆さん、飲み物どうする?」
「梅ジュース貰えますか?」
「はい、喜んでぇ」
社長の奥さんが、運転をする人に声をかけていた。お名前を右筆さんというらしい。
他の人はプラカップなのに、運転をする人には蓋のある携帯用タンブラーに入れて渡していた。温くならずストロー付きでこぼれにくい。
荷物も積み込み終わり、僕はどこに座ったら良いかと悩んでいると、山田さんから後ろのサロン席に誘われた。後ろの方は何席か動かすことが出来、真ん中にテーブルを配置したサロン状態になっていた。
「男性参加者が、社長と僕と一抹君しか居ないから、こっちに来なよ」
言われてみて確かに。あとは女性のパートさんばかりだ。
サロン席の入口付近に社長の奥さんが座り、飲み物を作り配っていた。一番奥に社長が座るのかと思ったら、奥さんの向かい辺りに座り、山田さんと僕は奥に通された。
「僕も飲まないから、一抹君が参加してくれて嬉しいよ」
「そうなんですね」
山田さんは、お酒を飲まないらしい。
社長の奥さんばかりが働いているので、少し手伝おうとしたら断られた。
「今日は慰安旅行だからね。極力労働しなくて良いのよ」
今日は慰安旅行だったらしい。
自称、一番新人という牧野さんも手伝おうと考えたのかこちらに来たけど、やはり社長の奥さんから断られていた。その他の人には、いつもの光景らしい。
「出発しますよー」
右筆さんが、皆に声をかけていた。




