表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなに好きなら、もうその世界に転生してしまいなさい。  作者: 葉山麻代


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/28

25 梅仕事(梅干)、シソジュース

 水に浸けてあった梅を引き上げた。20kgあり粒も大きめのため、存在感がある。


「分からないことはないと思うので、始めてください」


 社長の奥さんが声をかけ、皆が作業を開始した。


 ヘタを取り除き、痛んでいる梅を避け、水分を丁寧に拭き取っていく。青梅と違い完熟のためか、とても良い香りがする。


「良い香りがしますね」

「旨そうな香りだけど、このままでは食えないぞ?」

「無加工の梅は、毒なんでしたよね」

「その通りだ。厳密には青梅が猛毒で、完熟して黄色くなった梅ならかなり毒素は弱いらしいけどな。でも、生で食べないに越したことはない」


 生の青梅にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれていて、そのままでは人に有毒だ。これを無毒化するには、アルコールに漬け込む、糖分に漬け込む、塩分で漬け込む、加熱するのいずれかの処置を行う必要がある。

 もし生のまま食べると、アミグダリンは体内で青酸(シアン化水素)になるそうで、大変危険だ。


「ちなみに梅の毒は、うめ毒とは言わない。梅の毒を変に略してしまうと、文字にしたとき違う病名になるからな」


「そうなんですか?」


 僕が分からないでいると、社長の奥さんが突っ込みをいれてくれた。


「若い子は、梅毒(ばいどく)なんて知らないわよ」

「それもそうか」


 社長が後でこっそり教えてくれたけど、梅毒とは性感染症の名前らしい。植物の梅には関係ないそうだ。



「ヘタが取れて水分をしっかり拭き取ったら仕込みますが、塩分は15%で仕込みます。自分で作ってみるなら、最初は20%をおすすめするけど、実際食べてみると20%はかなり塩っ辛いのよ。自宅用に作る人は、10%とかで漬ける人もいるけど、相当気をつかって作らないとカビます」


 塩分濃度で、作り易さが変わるらしい。家で作ってみるのは、20%が良いかな。


「漬け込む容器はしっかり洗浄した後、アルコール消毒もします。食品用アルコール消毒剤がなくても、ホワイトリカーをスプレーで吹き掛ければOKです」


 僕が家でも作れるように、家庭で用意できる案も教えてくれる。とてもありがたい。


 カリカリ小梅の時と同じように、粗塩を梅にまとわりつけ、容器に並べていく。小梅は並べると言うよりバサッと入れていたけど、梅干用の梅は粒が大きいので、割りと隙間無くきちんと並べていった。


「カリカリ梅と違い、卵の殻は入れません。中蓋と重石をのせ、埃避けのビニール袋をかけ、地下におろします」


 これで第一段階は終了らしい。


「次の作業は、梅の水分が出て、梅がしっかり浸かってからです」

「また手伝いたいです」

「よろしくお願いします」


 手早く片付けたあと、先程の赤紫蘇を運んできた。


「まあ、全部葉をもぐけど、10袋ずつに分けましょう」


 梅干も2つの大きな桶に漬け込んだので、葉っぱも分けるらしい。


 もくもくと、枝から葉をもいでいく。思っていたより結構大変で、もいでももいでも終わらない。


「うわ、指先が黒ずんでる」

「後でお酢に浸けてから洗うと良いぞ」


 社長がすぐに反応してくれた。


「そうなんですか?」

「アクの強い山菜とか扱った後にも有効だから覚えておくと良いぞ」

「ありがとうございます」


 野菜のアクって、アルカリ性なんだね。


 やっと葉がもぎ終わったら、今度は、その葉を洗うのが物凄く大変だった。洗っても洗っても水に汚れが残る。


「いつかは綺麗になるんでしょうか?」

「一度に洗う量が多いのよ。もう少し小分けにすれば、綺麗になるわよ」


 社長の奥さんに言われ、量を変えてみると、汚れが残らなくなった。


「なんか、目に見えて綺麗になりました」

「まだまだあるから、頑張って」

「はい」


 何とか洗い終わると、いつのまにか沸かしていたらしいお湯も丁度沸いたらしい。


光明(みつあき)君が洗っていた赤紫蘇を、全部鍋に投入してくれる?」

「はい」


 30リットル入る寸胴鍋に、15リットルのお湯が沸いているらしい。葉っぱすごく多いけど、全部入るのかなぁ?


 最後の方は湯に落ちなくて、お玉で押し込むと全ての葉が湯の中に入った。


「あれ?」


 赤紫色の葉を入れたはずなのに、湯の中に踊る葉は緑色に見える。


「どうかした?」

「葉っぱの色が」

「水に色が溶け出してるのよ。成分と一緒にね」


 溶け出すと、残る色は緑なんだ。ちょっと不思議。


「どのくらい煮るんですか?」

「15分から20分くらいね。火は弱めて良いわよ」

「はーい」


 少し火を弱め、ガス台を離れた。


「梅干用のシソを加工しましょう」

「はい」

「全部いっぺんにするには多いので、少し取り分けます。水気を良く切った葉に塩をし、揉み混んで行きます。最初はまとまらないと思うけど、そのうち赤黒い水分が出てくるからそしたら良く絞って、しっかり絞ったシソは、こちらに入れて下さい」


 ボール1杯ずつに塩をして、揉み混んでいった。塩は、社長の奥さんが量を分けてくれた。この赤紫蘇の葉は約2kg有り、用意している塩は、その15~20%相当の量らしく、300~400gあるらしい。


 葉っぱを揉み混むなんて、葉が破れてしまいそうだけど、意外と丈夫なようで、ギュッと絞って赤黒い水分をしっかり絞りだし、指定されたボールに入れていった。


「全部出来たら梅酢で(ほぐ)すんだけど、今年の梅酢はまだ無いので、去年の梅酢を使います」


 ボールの赤黒い葉の塊に白い梅酢をかけると、その液体は鮮やかな赤い色に変わっていった。


「手を良く洗ってきて、しっかり拭いたあと、素手で良いので、ジッパーバッグにこのシソの葉を入れて下さい」


 僕は念入りに手を洗い、アクはしっかり落ちなくて指先が少し黒っぽいけど、そのままで良いと言われシソの葉をジッパーバッグにしまっていった。


 ふと指を見ると、指先が赤い。先ほど黒かった指先が、あり得ないほど赤くなっていた。


 全て入れ終えると、同じものを社長も作り終え、社長の奥さんが預かっていった。


「鍋の火はさっき消したから、液体を網で濾すぞ」


 シソジュースの素は、次の段階に入るらしい。

 15kg以上ある熱い鍋は返せないので、小鍋を柄杓代わりに使い、別の鍋に液体を移していった。シノワを置いてあるので、多少入ってくる葉も混ざらない。


 最後、軽くなった鍋は、社長がひっくり返して鍋を空にし、葉の水分もシノワに押し付けしっかり絞った。


「量っておいたグラニュー糖と、クエン酸を加えます」


 割りと赤黒い液体だったのに、クエン酸を加えたとたん、綺麗な赤い液体に変わった。


「うわ、凄い!」


 社長が、グラスに氷をたくさん入れ持ってきた。


「ほら、ちょっと飲んでみろ」


 レードルですくい、コップに注いでくれた。氷がほとんど溶け、美しい赤い液体が残った。そっと飲んでみる。


「おいしい!」

「良かったな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ