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そんなに好きなら、もうその世界に転生してしまいなさい。  作者: 葉山麻代


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19/30

19 漬物盛合せ

「おにぎりといただいた漬け物が美味しかったです」


 久し振りに、社長が作ったおにぎりをお昼ごはんにいただいた。おにぎりが美味しいのは当然だけど、漬け物も凄く美味しかった。いつも漬物の盛り合わせを作っていたから当然見たことはあったけど、食べたことは意外にも無かったのだ。


「そうか。奥さんが喜ぶから、直接言ってくれ」

「え? この漬け物も、社長の奥さんが作っているんですか!?」


 お菓子に関するものだけ作っているのだと、思い込んでいたのだ。まあ、確かに豆から豆乳とおからを作ったけど、調理したのはおからクッキーだけだったし、豆腐は口頭で教えて貰っただけだったから、お菓子専門なのだと思い込んでいた。


「そんな、驚くようなことか?」


 何しろ、お店の漬け物は何種類もあるのだ。素材が大根というだけでも数種類ある。胡瓜も数種類あって、他にも素材が僕には良く分からないものもある。やっぱり驚くような事だと思うなぁ。見てすぐに分かるのは、ぬか漬けだけだ。


「今週末か、来週辺りに漬け物を仕込むと思うぞ?」

「見に来て手伝って良いですか?」

「むしろ喜ぶと思うよ」

「奥さんに確認してきます!」


 ホールに戻り、直接交渉することにした。


「漬け物の仕込みがあると伺いました。とても美味しかったです!参加させてください」

「えー! 光明(みつあき)君、手伝ってくれるの? 助かるわぁ」


 あれ?助かるの? どういう意味だろう?


「今週の土日で良い?」

「はい。何時に来たら良いですか?」

「お弁当を作る予定はなくて、野菜は10時頃に届くはずだから、全工程見るなら9:30かなあ。仕込みだけ見るなら10:30で充分よ」

「可能な限り、9:30に来ます!」



 そして週末。

 僕は宣言通り、9:30よりも少し前に来た。


「おはようございまーす!」

光明(みつあき)君、おはよう。まずはレシピでも見る?」

「はい!ありがとうございます」



 大根のしょうゆ漬け

 大根        4kg

 ざらめ糖     400g

 醤油       1リットル

 唐辛子(又は生姜の薄切り)少々


 作り方

 大根はきれいに洗い1cm厚に切る。(大きければ半月型や扇形でもOK)

 切った大根は2~3日天日干しにする。

 すべての材料を漬物器にいれ、重石をする。

 涼しい場所で10日ほど漬け込む。

 あまり温かいところで保存すると、発酵するので注意。



 このもん風

 大根      4kg(約3本)

 醤油     480ml

 酢      360ml

 砂糖     240g

 昆布     10cm細切り


 作り方

 大根は4つ割にして薄切りにする。

 醤油、酢、砂糖、生姜1かけを強火で熱し、煮立ったら大根、昆布を混ぜしんなりさせる。

 粗熱が取れたら冷蔵庫に一晩おいてできあがり。



 大根のビール漬け  胡瓜    大根

 大根(or胡瓜)   1kg     4kg

 砂糖        200g    800g

 塩         35g    140g

 ビール       70ml    280ml

 お酢        50ml    200ml

 洋辛子       少々   小さじ1 


 作り方

 大根が太い場合は縦2等分又は4等分にする。

 半日ほど干してから使うと漬かりやすくなる。

 入れ物に、大根又は胡瓜をいれ、全ての材料を加える。

 冷蔵庫に入れ1~2週間経てば食べ頃。

 あまり温かいところで保存すると、発酵する。



 にいがた漬け

 大根  5kg 

 砂糖  1kg   

 塩   250g   

 みりん 360ml   

 酢   720ml  

 柚子  少々

 唐辛子 少々


 作り方

 大根が太い場合は縦2等分又は4等分にする。

 砂糖、塩、みりん、酢を混ぜ沸騰させる。

 入れ物に、大根をいれ、2の漬けダレを加える。

 大根と同量の重石をし、3~4日漬ける。

 食べる1日前に柚子と唐辛子を加え出来上がり。



 きゅうり漬けA

 胡瓜  6本 7~8mm厚

 醤油  120ml

 砂糖  80g

 酢   30ml

 生姜  15g 千切り

 鰹節  大さじ1/2(1g程度)

 鷹の爪 1本 種を取って細い輪切り



 きゅうり漬けB

 胡瓜  600g 1cm厚 1000g

 醤油  180ml     300ml

 砂糖  大さじ1(9g)   15g

 酢   30ml       50ml

 生姜  18g 千切り   30g

 みりん 60ml      100ml



 僕がレシピを見ていると、社長の奥さんは、何か不思議なものを持ってきた。親指にのせた王冠くらいのサイズの赤い何かだ。凍っているらしい。形が本当に王冠のようで、あれは何だろう?飾り切りしたリンゴの皮?


「これは何ですか?」

「これは、ハイビスカスローゼル。ハイビスカスティーって分かる?」

「ファミリーレストランで、名前だけ見たことがあります」

「あの、ハイビスカスは、よく知っているだろう花のハイビスカスではなく、このローゼルの事なのよ」


 ハイビスカスティーって、てっきり花のお茶なのかと思っていたら、不思議な形の何からしい。植物らしいことだけ分かった。


「これは、実ですか? 花ですか?」

「これは、(がく)(ほう)なのよ。実は食べないわ」


 なんと、実は種用に収穫するけど、食べられるのは、その回りらしい。


「面白い植物ですね」

「花が咲くと、ハイビスカスを小さくしたような花が咲くのよ」

「ハイビスカスに近い植物なんですね」

「ハイビスカスより、オクラが近いわよ」

「オクラですか!?」

「オクラは、ハイビスカスみたいな黄色い花が咲くのよ」

「へえー。そうなんですね」


 で、そのローゼルとか言う(がく)はどうするんだろう?


「それは、どうするんですか?」

「袋のままで良いから、重さ量ってくれる? そしたら塩を1割の重さ量っておいて貰える?」

「はい」


 かさばっているので袋は大きいけど、重さは500gもなかった。頼まれた通り、一割に当たる塩を量り、お椀に入れておいた。


「あ、量ってくれたのね。ありがとう。そしたら、その塩を袋に入れて振り混ぜて、溶けてしなっとしたらなるべく空気を抜いて袋を閉じておいてください」

「はい」


 まだ少し凍っているローゼルの袋に塩を入れ、袋を閉じて振り回し塩を混ぜた。すぐに溶けたらしく、赤い王冠のようだったローゼルはしなしなになり、液体も滲み出て、袋を潰しながら閉じることが出来た。


 上手く出来たと思っていたのに、少し時間が経つとさらにしなしなになり、空気がたくさん入っている事に気がついた。


「あの、お店のストロー1本貰ってもよろしいですか?」

「良いわよ」


 母がして見せてくれたのを真似て、中の空気だけを吸い出そうと勢い良く吸い込むと、滲み出た液体を吸ってしまい、激しくむせた。そういえば、母に注意されたんだった。


「ゲホ、ゲホ、ゴホ、ゴホ」

光明(みつあき)君、大丈夫?」


 社長の奥さんは、お茶を持ってきてくれた。


「ありがとうございます。ちょっと失敗しました」


 ストローで吸ったので、喉の奥にダイレクトで酸味のある汁が入ってきたのだ。


「酸っぱしょっぱかったです」

「ローゼルは酸っぱいのよ。だからジャムにしても美味しいのよ」


 ハイビスカスティーって飲んだことがなかったけど、あれ、ものすごく酸っぱいお茶らしい。お茶の場合、乾燥させて使うそうだ。


 もう一度慎重に空気だけを吸出し、袋を上手く閉じた。


 この後は、付け汁を全て量ってから、胡瓜を切って漬け込んだり、大量の大根を縦4等分に切ったり、細かく切ったり、色々なサイズに切った大根を干したり、結構大変だった。何せ量も多いけど、種類も多い。


「最後に、この野菜をこんな感じに切ってください」


 割と細かい切り方を指定された。大根、胡瓜、茄子、人参、蓮根、生姜と種類も多い。


 蓮根は軽く茹でてから切った。生姜だけ、細く切った針生姜だ。


「これは何になるんですか?」

「これは、福神漬よ。後で胡麻を混ぜるわ。夏過ぎの時期なら、紫蘇の実を混ぜるんだけどね」

「福神漬って、色々入っているんですね」

「家庭で作るなら、大根、胡瓜、蓮根、生姜くらいでも良いんだけど、商売のは7種類入っているわね」


 福神漬は居酒屋メニューではなく、お弁当に使うらしく、カレーライスに添えるために手作りなのだそうだ。7種類の野菜は、七福神から来ているらしい。



 お昼ごはんは、お弁当のカレーを皿に入れて出してくれた。残念ながら福神漬は、僕が切った野菜はまだ漬かっていないので、前回の漬け物だった。


 今日、大きくカットして干した大根は、明日の日曜日に漬け込むらしい。



 翌日。

 干してあった大根を漬け汁に漬け込み、後は待つだけ。


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