10 マンゴーサゴ
「これなんですか?」
「夏向きデザートよ。マンゴーサゴって名前よ」
木曜日のお弁当を並べている時、知らないものがあるなあと思ったら、本当に知らないものだったらしい。名前を聞いたことすらない。色と名前で、マンゴーの何かであるとは分かるけど、とりあえず液体っぽい。 夏向き?
「それ、旨いぞ」
社長も好きなデザートらしい。
「とっても簡単だから、明後日の仕込みを手伝ったら食べさせてあげるわよ」
「はい。お手伝いします!」
社長の奥さんが、フィリピン人の友人から習ったデザートで、東南アジアや香港でも食べられているそうだ。
一昨日約束したので、土曜日は早く出勤した。
「はい、レシピ」
社長の奥さんから、ポンと、ノートを渡された。
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マンゴー 8個
小粒タピオカ 1200g
ココナッツミルク 200ml
砂糖 20g
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「本当は、タピオカじゃなくて、サゴって名前の、サゴヤシからとれるデンプンで作った粒々なんだけど、日本では手に入らないのよね。だから、似た感じの小粒のタピオカを使います」
「はい」
食感的には、タピオカの方がモチモチしていて、サゴの方があっさりしているらしい。機会があったら、それも食べてみたいな。
「タピオカを戻します。乾燥タピオカ400gで、戻ると1200g出来上がります。3倍と覚えてください。既に茹でて戻したタピオカがここにあります」
ボールに入った茹でてあり冷えているタピオカを出してきた。午前中に茹でてしまったみたいだ。
「マンゴーは3枚におろし、4個はミキサーでピューレにして、残り4個は果肉を5mm角くらいに切ります」
ここが大変なので、手伝って貰いたいらしい。
マンゴーを3枚下ろしにし、実を削いでいく。種についている実を、スプーンを使ってかきとる。
「ココナッツミルク、砂糖、マンゴーピューレを混ぜ、切ったマンゴー、タピオカを加えて冷蔵庫で冷たく冷やします」
本当に簡単だった。ボールのまま、冷蔵庫にしまっていた。
「これで、何人前ですか?」
「総量が3000g強だから、20~25人前ってところかしら」
この後、冷えてから小分けにするらしい。
「マンゴーの良い香りがしますね」
「そうなのよ。ちゃんと香りがする熟れているマンゴーを使っているからね。これ香港だと、更にグレープフルーツの果肉が入るらしいわ」
「へえ。さっぱりしそうですね。あれ? そういえば、これは注文分ですか?」
今日はお弁当を販売していない。それに、他のパートさんも来なかった。
「今日の限定デザートよ」
居酒屋メニューの、本日の限定デザートに使うらしい。
「争奪戦になりそうですね」
「先にデザートを食べてから、お酒飲む人までいるのよ」
無くならないうちに食べるには他に方法がないんだろうね。
「僕は飲めないから良く分からないけど、甘いものもお酒も両方いける人なんですね」
「あ、そうか。未成年だものね。甘いもの好きな酒飲みでも、なかなか先に甘いものは食べないのよ。糖分は、満腹感を覚えちゃうからね」
「そういえば、食物科の先生が、そんなことを言っていました」
確かに、ご飯の前に甘いお菓子を食べちゃうと、ご飯が食べられなくなるよね。
「そうだ、豆乳どうする? 豆腐でも作る? 豆乳花でも作る?」
おからはクッキーにしたけど、豆乳は使わずに冷蔵庫に入っているままらしい。
「とーるーふぁってなんですか?」
「豆乳で作るゼリーみたいなものね。黒蜜ときな粉をかけて食べたりします」
知らないお菓子だ。ぜひ食べてみたいし作ってみたい。
「それ、作ってみたいです」
「明日も早く来る?」
「はい!」




