表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十ニ話【傀儡】(後編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/150



 叫び声を上げながら、刹那は魔徒に挑み掛かった。


 だが並以下の動きでは、当然ながら魔徒は捉える事は叶わない。


 祈りのうたの効果からか、魔徒は反撃して来ないが、依然としてみちを遮っている。


 眼前の魔徒をたおさなければ、萌の元には行き着け無い。


 そして何時、魔徒が凶暴性を取り戻すかも解らない。


 急がなければ、成らなかった。萌を助けたい一心から、刹那は剣を振るい続けた。


 少しずつ削られていく体力。次第に凶暴性を取り戻しているのか、周囲を取り巻く邪気が強まっていく。


 萌を助けたい。


 既に数体の魔徒が、神楽や菴を襲い出している。


 ——必ず、護るんだ。


 刹那の腕を、小さな魔徒が噛み付いていた。


 激痛が迸った。


 複数の魔徒が、刹那を襲う。


 次々に凶暴性を取り戻す魔徒達。


「嫌ぁッ……痛いッ……止めてッ!!」


 悲鳴を上げる萌。


 遂には魔徒が、萌に喰らいいていた。


「萌ッ……!!」


 絶望が、静かに刹那の心を撫でていく。


 萌を喪いたくない。


 ——絶対に、嫌だ。


 自分は、どうなっても良い。自分の全てを捧げてでも、萌を救いたい。


 其の想いが——祈りが、刹那の力を目覚めさせる。優しく目映まばゆい光が、刹那を中心に瞬いた。


 其の場に居る全ての魔徒が、行動を停止させていた。


「刹那ちゃん……《正者の剣》を、私に衝き立てなさい!!」


 何時の間にか《正者の剣》が、暉耀ひかりかがやいていた。


 われる儘に、《正者の剣》をタリムに衝き立てた。


 白く穏やかな暉が、刹那の背に戦騎の翼を喚装させていた。純白の翼が、とても美しい。優しい暉に包まれていた。不思議な感覚に捉われていた。自分の身体を、強い力が流れ込んでいるのが理解わかった。


「貴方の誠の祈りが……《正者の剣》を通して、私に力を与えてくれたわ。此の儘、私に身を預けていて」


「解ったわ。だから、萌を助けてあげて。御願い!!」


 タリムの翼が、羽撃はばたいた。


 僅かに浮かび上がる刹那。


「刹那ちゃん。祈りを籠めて、うた)い続けていて。其れが、私の力に成るわ」


 ——萌を護りたい。


 皆を護りたい。


 其の想いが、祈りと成った。祈りは暉と成り、力と成った。


 其の力は、戦騎の力を大幅に増幅させる。


 タリムの翼から、無数の羽根が四方八方へと飛散した。


 校舎内に存在する全ての魔徒に目掛けて、羽根は弾丸の様に飛び交っていく。白い光の筋が、幾重にも折り重なる其の様は美しかった。複雑に飛び交うタリムの羽根が、次々に魔徒の群れを撃ち滅ぼして往く。刹那の行く手を阻んでいた大きな獣も、萌を取り囲んでいた魔徒達も、悉く滅して往く。


 戦騎の羽根も又、霊石が用いられている。刹那の祈りに依って、更に硬度を増しているのだ。羽根の弾丸が、全ての魔徒を捉え討ち砕いていく。そして祈りのうたに依って、等しく浄化されて往く。


 全ての邪気が消えて、刹那の喚装は解けた。


 全身を包む虚脱感。


 萌の無事を確認して、安堵する。


 神楽も菴も、どうやら無事の様だ。


 萌の傷を、癒さなければ成らない。


「待ってて、萌……今、そっちへ行くわ!!」


「其れは止めておけ」


 突如、背後から声を掛けられる。


「貴方はッ……?」


 現れた男に、刹那は見覚えが在った。


 夢の中にあらわれる光の騎士だ。幾度となく繰り返し、夢に現れている。遠い過去の記憶に、靄が掛かってはいるが、男の姿だけはハッキリと憶えている。


「月詠が言っていた『器』とは、矢張り君だったか」


 優しい眼差しを、刹那に送る光の騎士。そして、腰に提げた短剣を引き抜いた。其の刃が、無慈悲な光を放っている。


「彼女をお前達に、渡す訳には往かない!」


 愕然とする刹那を他所に、光の騎士は萌へと斬り掛かる。


「止めて!!」


 刹那の悲鳴と共に、金属音が成り響く。


「遅れて、済まない!!」


 突如として顕れた羅刹が、光の騎士の剣撃を受け止めていた。


「何故、止める。お前も、騎士のはしくれだろう?」


「刹那の友を斬る事は、此の俺が赦さんッ!!


 真っ直ぐな視線を、光の騎士に向ける羅刹。其の眼には、迷いの色は感じられない。


「俺にもかつて、友がいた。そいつと刃を交え、最期には刺し違えた。今は後悔している。だからこそ、刹那が友だと信じる者を、斬らせる訳には往かない!!」


「ふん……だが、其の女は人では無い。魔徒どもを操って、此の騒ぎを起こした元凶だ!!」


 羅刹の短剣を払い、間合いを取る光の騎士。


たとえそうだとしても、萌を斬らせない!!」


 庇う様にして、萌の前に立ちはだかる刹那。


「刹那……貴方、どうして?」


 萌が不思議そうな眼差しを向ける。


「どんな事が在っても、私達は友達だよ……萌」


 刹那の頬を、涙が伝う。


「貴方、言ってたでしょう。周りに、どう思われたって構わない。だって私は、私で居たいものって。私は……の時の貴方の言葉に、救われたんだよ。嘘だらけに囲まれる教室の中、貴方だけは本心を曝け出して、凄いなって思ったの。貴方のあの言葉に、嘘は無いって信じてる。私達は、ずっと友達だって信じてるわ!!」


 刹那の真っ直ぐな瞳。


 萌の頬を、涙が伝っている。


「私は……」


 目を伏せる萌。


「此処は退け。手負いで勝てる程、俺は甘くは無い」


 羅刹が戦騎を喚装していた。


 光の騎士は短く溜め息をついて、短剣を鞘に納めた。


「勝手にしろ……」


 踵を返す光の騎士。


「ごめんね、刹那……」


 俯いた儘、萌が呟いた。


 空間が歪んで、萌の姿が消えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ