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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十ニ話【傀儡】(後編)

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「さて、そろそろ終わりにしようか」


 静かに言葉を紡ぐ竟。残された時間は余り無い。しくじれば、死を意味する。時が制止した様に、静かだった。


 己の名は、終りを意味する。終り——詰まる処、其れは命の終焉を指す。


 闇に墜ちた物は皆、等しく生にしがみついた者達だ。己が冠する名は【終焉】で在る。


 闇に墜ちた者。


 闇に染まりし者。


 其れ等の者に、終焉をもたらす為に自分は存在する。


 闇を斬り、闇を照らす一筋の光。『最強』を携えて、金色に耀かがやく獅子。


 【金獅子】の名を、先代から引き継いだ時から、己の使命は決定付けられている。


 今の己は戦騎、其の物だ。


 戦騎と同化し、鬼神化している。間違い無く『最強』の存在と謂えるだろう。


 金色に染まり耀く大剣を構えて、靡隕螺を見据える。


 靡隕螺の纏う炎は、どす黒く染め上がっていた。其の炎の密度は、異様に濃い。靡隕羅とて、無事では済まない高温を纏っている。全く、化物染みた男だ。戦騎騎士でも無いのに、如何にして此れ程の力を有したのか理解に苦しむ程だ。


 一撃を放つ時間しか、今の自分には残されていない。


 だが、其れで充分だ。


 一撃、在れば——全てが、事足りる。


 先に動いたのは、靡隕螺の方だった。


 灼熱の炎が己を捉える依りも早く、金色の大剣が靡隕螺を斬っていた。


 炎は消え、喚装は完全に解けていた。


 全身を包む途方も無い虚脱感に、僅かにだか竟は安堵していた。未だ人で要られた事に、安心していたのだ。


 業火に染まる血飛沫を上げて、靡隕螺は倒れていた。意識を失いながらも、小刻みに痙攣している。


 間も無く、其の命は終わるだろう。


「糞っ垂れがぁッ!!」


 短剣を握り締めながら、背後を振り返る。


 何時の間にか、出狗が息を吹き返していた。今の自分に、闘う力は殆ど残っていない。だが其れでも向かって来るの為らば、退く訳には往かない。


「未だ……俺は、死んでない……。さぁ、続きをやろうッ……」


 息も絶え絶えに、死に損ないのていで出狗が睨み付けていた。


 眼が死んでいない。此の男は何れ、強く成る。生かしておけば、脅威と成り得る。


 ——全く。大人しく寝てれば良い物を何故、立ち上がって向かって来るのかが解らなかった。


「其れが、侍って物よ……坊や」


 突如として、聞き覚えの在る女の声が、竟の耳を掠める。


「勘弁してくれよ、全くッ……今日は、厄日か?」


 声のした先には、月詠つくよが居た。


 【皇渦陸仙】の一人で在る。


「靡隕螺……貴方、男の癖して、案外だらしないのね?」


 ゆっくりと靡隕螺に歩み依ると、月詠は蹴飛ばした。


「……ッ?」


 どう言う訳か、靡隕螺まで蘇生して立ち上がる。


「あらぁ……坊や。何を驚いているのかしら。私は術士よ。くたばり損ない共を、ちょっと蘇生させただけじゃない?」


 妖しく嗤う月詠。


 此の上なく厄介だった。


 此方は満身創痍。


 加えて戦騎の喚装は、暫く出来そうに無い。


 此の面子を相手取るのは、自殺行為だった。


 其れに、月詠の使う術は得体が知れない。単細胞の靡隕羅とは違って、頭も切れる。どう贔屓目に見ても、勝ちの目が見付からない。


「安心なさい、坊や。此れ以上の争いは無用。間も無く『器』は、覚醒するもの。其れに、手負いの獅子は恐いわ……」


 妖艶な笑みの奥には一体、何が見えているのだろうか。


 【先詠せんよみの月詠】には、未来を詠む能力ちからが在る。


 此の上なく厭な予感しかしない。


「ほら……貴方達、帰るわよ」


 臨戦態勢を執って、此方を睨み続ける出狗と靡隕螺。先程から、ずっと機を窺っている。


 僅かでも気を抜けば、襲い掛かって来るだろう。


『此の借りは、必ず返してやるッ……必ずだ——良いな?』


 出狗と靡隕螺の声が重なる。


 空間が歪み出していた。


「間も無くの御方が、復活なさるわ。坊や……其れまで、長らえた命を大事にする事ね」


 耳障りな高笑いを残して、三者は共に消えた。


 朦朧とする意識の中で、校舎に目を遣る。此の奥から無数の魔徒の気配がした。其れに混じる様にして、神聖な存在を感じた。恐らく《捧ぐ者》が居るのだろう。自分が鬼神化した時に、慥かに詩が聴こえた。祷りの籠った詩だった。自分が闇に墜ちなかったのも、詩の影響が大きい。


 未だ、倒れる訳には往かない。


 辛うじて意識を繋ぎ止めながら、竟は歩き出していた。


 確かめなければ為らない。此の騒ぎの元凶が何を意味しているのか、自分は知らなければ為らない。



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