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ミノタウロスじゃありません!  作者: name


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44/45

オレの名は

「時間を稼がないと、うっ⁉」

 体に力が入らずマイラは片膝をつく。

 肩口を見ると服が破けている。リーヴを庇った際マンティコアの毒針がマイラを掠めていたのだ。

 ギフトを装着した状態ならば完全に躱すことができただろうが、そんな余裕はなかった。

「ガルル」

 毒で動けないマイラに、剝き出しになったマンティコアの牙が迫る。


「マイラー!」

 マイラを助けようとサクヤが描写し、オモスが走るも間に合わない。

 もう駄目だとマイラも覚悟したその時、


「グギャァァー」


 何か大きな物体がマンティコアを直撃しマンティコアもろとも吹っ飛んでいった。

 何があったのかと、目をやると、マンティコアに覆いかぶさるようオークが倒れていた。

 そのオークはミノワと戦っていたオークだった。ぶつかったのが止めとなったのかオークは消滅し残った魔石も砕け散る。


「師匠」

 オークを投げたのは勿論ミノワだ。

 ミノワはマイラを守るべくオークをマンティコアに投げつけたのだ。


「大丈夫か?」

「はい」

 毒に侵された体で気丈に振舞うマイラだが、覚束ない足元を見てミノワは言った。

「棄権しろ」

 リーヴは解毒魔法を使えない。そうなると解毒薬を飲ませるしかマイラを助ける方法はないが、ミノワたちは解毒薬どころかアイテム自体、今は持っていない。

 決して準備不足などではない。この戦いにおいてアイテムの使用は認められていないのだ。

 この戦いに限らず、ユニオン戦の代表戦やパーティー戦ではアイテムの使用を認めないのが通常である。

 だが、ドラは回復薬を飲んでいた。

 なぜか?

 理由はチュンが条件を付けたからだ。

 チュンが付けた条件、それはパーティーにヒーラーがおらず、かつ相手より人数が少ない場合、パーティーの人数分の回復薬の使用を認めるというものだ。

 ヒーラーがいる箕輪家にメリットはなかったがユニオン戦を成立させるためミノワはその条件をのんだ。

 命を守る配慮ということだが、実際は違う。

 チュンはマイラがヒーラだと知っていた。それも回復魔法を使えないヒーラーだと。あくまでも自分たちが戦いを有利に進めるための提案だ。

 それに、双子やアンコは回復薬を持たされてはいない。回復薬の数には限りがある。であるなら魔蛇のツートップである自身とドラ(裏)で使うのが効率的だ。つまりアンコたち三人は捨て駒だったのだ。

 そんな理由から、この場に解毒剤を持っている者はいない。

 しかし、控室にはアイテムが入ったバッグがあり、解毒剤も入っている。慎重な栄光の箱舟はこのような戦いの時でさえ、いや、このような戦いだからこそ万全な準備をし戦いに挑んだのだ。

 ただ、アイテムを使うのはルール違反だ。控室に戻るのは戦いの放棄、すなわち棄権とみなされる。


「だ、大丈夫ですよ。獣人族は生命力も凄いんです」

 イーに矢で腹部を射抜かれたと時と姿が重なる。

 マイラの言う通り獣人族は高い生命力があるが、かといって毒が効かないわけではない。毒が致死量に至れば当然死ぬ。

 マンティコアの毒がどの程度かはわからないが、早めに処置するに越したことはない。

「だめだ、棄権しろ」

「でも……」

 マイラは必死で訴える。

 相手はマンティコアだ。人数は一人でも多い方がいい。動きもギフトを装着すれば少しはマシになるはずだ。それにこの戦いは自分のために始まった戦いだ。皆自分のために戦っているというのに当の本人が棄権なぞ申し訳が立たない。


「私はまだ戦――」

「オレは誰だ?」

 マイラの言葉を遮りその目を見つめミノワは問う。

「ミノワタウロス……」

「そうだ! オレは荒ぶる牛魔王、ミノワタウロスだ! チャンピオンのオレがバケモノなんかに負けるはずないだろう」

「負けるはずない」とミノワは力強く言い放った。

「師匠……」

「オレを信じろ」

 マイラの目を見つめたままミノワはそう言った。

「……はい」

 思いの詰まったミノワの言葉にマイラは素直に頷いた。


「オモス、マイラを頼む」

 ミノワの言葉に傍にきていたオモスはマイラを抱えると控え室に向かい駆けだした。


お読みいただきありがとうございます。

もう少し続きます、次話もご一読いただければ幸いです。

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