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ミノタウロスじゃありません!  作者: name


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ミノワVS裏ドラ

「あんなふざけた格好をした奴にやられたのか? 相変わらず弱い奴だ」

 氷の中のミノワを見ながら裏ドラは言った。

「そう言ってやるな。硬化のスキルをもっておって、剣が通らんかったのだ」

「相性が悪かった」とチュンは庇ったが、火点のドラの不甲斐なさに苛立ち「あいつが弱いだけだ」と吐き捨てる。


 想定外でもチュンが焦ってはいなかったのは裏ドラがいたからだ。裏ドラこそ魔蛇のナンバー2であり、双子やアンコよりも強い。

 前衛の護衛もなしに魔法職に何ができると思うかもしれないがそうではない。

 裏ドラとドラは同じ身体をもつ。それは裏ドラにも大剣を振り回す力があるということを意味する。専用武器のため魔石の力は使えないが、ドラが馬鹿の一つ覚えで大剣を振り回して手に入れた筋力が裏ドラにもあるのだ。

 ソーサラーとしての実力はもとより、剣の扱いもドラより上手い。

 スピードこそ劣るが近接戦もこなせる魔法職という意味ではマイラと同じ、いや相手を倒すという点においては攻撃魔法が使えるソーサラーである裏ドラの方が適性は上だろう。


「魔石に頼り武器を振り回してただけだろ」

 ドラの活動中は裏ドラの意識は眠っているが、強さの程度は知っていた。なぜならドラが意識を失う原因を葬ってきたのは他ならぬ裏ドラだからだ。その中に裏ドラが手こずるような相手はおらず、その度に「こんなのさえ倒せないのか」と呆れていた。

 今回もそうだ。

 あんな裸同然の、武器さえ持っていない奴を相手に、逆にどうやったら負けるのか教えてもらいたいくらいだ。

 剣が通らないとチュンは庇ったが、その原因はドラにあると裏ドラは考えていた。

「腕に見合わぬ武器で調子に乗るからだ、バカが」

 切っ先の砕けた大剣を手に取り裏ドラは悪態をつく。

 ドラの専用武器は元々Cランクのワーカーが持っていたものだ。ドラはそのワーカーを殺害し武器を奪った。もちろん戦って奪ったわけではない。言葉巧みに近付き、相手の警戒が緩んだところで毒を盛り殺害した。そういうところはドラは狡猾で戦い方とは対照的だ。戦いでもそのような戦い方ができれば『赤点』と呼ばれることもなかっただろう。

 もっとも表立って呼べる二つ名がついたとも思えないが。

 奪った方法はさて置き、大剣に使われている魔石はDランクのワーカーが手に入れられる魔石ではない。

 そんな武器を持ちながら負けるということは魔石の力を引き出せていないからだ。

 剣の腕を磨くこともなく、力を引き出せていない武器を漫然と振るうだけ、裏ドラが目覚めるといつも壁など周囲は爆発で崩れていた。

 大剣の頑丈さをいいことに、遮蔽物があろうがお構いなしに剣を振り回していた証拠だ。

 専用武器とはいっても魔石の力を使えるだけで、それ以外は魔石のないものと変わらない。普通の武器同様手入れは必要だ。手入れをしなければ切れ味、耐久力が落ちる。

 だが、ドラは武器の手入れなどしなかった。刃こぼれして斬れ味が落ちようが爆発させれば関係ないからだ。

 ドラは気付いていなかった。剣も爆発に耐えていたことを、悲鳴を上げていたことを。

 自業自得。そのツケが今日回ってきたのだ。

 大方、大振りしすぎて地面でも叩いて切っ先が折れたのだろうが、手入れもせず技術も磨いてこなかったツケが今日出たのだ。

 

「他も片付けてくるぜ」

「すまんのう」

 !!!

 大剣を担ぎアンコの加勢に向おうと歩き始めたその時だった。

 ピキピキと何かが軋む音がした。何事かと振り返ると、ミノワを包んでいる氷にヒビ入っている。


「まさか!?」

 ヒビは全体に広がり氷の中のミノワの筋肉が隆起した瞬間、氷は粉々に砕け散った。


「生きているとはな」

 氷の中から生還したミノワに驚く裏ドラ。

「火傷を冷やすにはよかったが寒くなってな、って、お前は誰だ?」

 髪型と色が変わったドラをドラとはわからずミノワはそう言った。

「オレはドラであってドラじゃねえ。もう一人のドラ、氷点のドラだ」

 急にもう一人のドラと言われても意味がわからず戸惑うところだが、ミノワは「ミノワタウロスと箕輪弁慶みたいなものか」と納得する。


「ちなみに天職はソーサラーだ。テメーは?」

「オレはミノワタウロス、プロ――」

「ミノタウロスだぁ! テメー、ふざけてんのか!」

 馬鹿にされたと勘違いした裏ドラは珍しく声を荒げた。

「違う、違う。ミノワだ、ミノワタウロスだ」


「ミノワタウロスか。テメーのタフさ気に入ったぜ」

「お前の魔法もなかなかだったぞ」

「テメーひとりに時間をかけてる暇はねえ、悪いが本気でいくぞ」

 そう言って装備していた防具を外す。

「こんなもの重いだけだからな」

 身を守る鎧も魔法職にとっては動きを遅くする重りでしかない。

「死ね! アイス――」

 ドラが魔法を放とうとした時には、すでにミノワの姿はそこになく低い姿勢でドラの懐に飛び込んでいた。

 相手腹部を破壊するタックル、『タウロススピアー』だ。

 無防備な腹部への一撃にドラの意識は途切れた。


「モォォォー!!!」

 今度こそ本当にミノワは勝利の咆哮を上げた。


 地鳴りのような歓声が連続して続いた。

 ミノワが周りを見回すと他の戦いも決着がついたところだった。


お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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