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ミノタウロスじゃありません!  作者: name


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裏ドラ

「お前たちの負けだ降参しろ」

 周囲を見回したミノワは、端で戦いを見ていたチュンに向き直った。

 栄光の箱舟はオモスとサクヤがそれぞれタイマン勝負をしている。カイトやリーヴはオモスたちの戦いを見守っているが、リタイヤしたようには見えない。

 パーティーでの連携攻撃を得意とする彼らが、それぞれソロで戦っているということはその必要がないということだ。

 マイラも足を負傷しているが、相手の動きを見るに実力の差は明らかだ。

 それにマスクも外してる。時間切れというのは考えにくく、相手の実力を見極め自ら外したのだろう。

 いくらチュンが一戦もしてないとはいえ、ミノワと戦い更には体力を温存しているカイトやリーヴ、ギフトの使用時間を残しているマイラの相手をするのはさすがに無理だ。


「よそ見をしていてよいのかな?」

「なっ!」

 刺すような痛みに足元を見ると両足が凍り付いていた。

 それは両足にとどまらず下から上えと侵食し、ついに全身が氷に包まれる。


「油断大敵だぜ」

 その声の主は、先ほどまで意識を失い倒れていたドラだった。だが、驚くのはそればかりではない。逆立てていた髪は垂れ下がり、色も青く変色している。

 そのドラが氷の中のミノワを眺めながらほくそ笑んでいた。


「動けなくなるくらい痛めつけやがって」

 手足の動きを確認しながらそう言ったドラの足元には回復薬の空瓶が転がっていた。

 話し方も先ほどまでの怒鳴るよう大声ではなく、抑えたような話し方だ。

「久しぶりだな裏ドラよ」

 見た目が変貌したドラに観客は騒然とするが、チュンは驚くことなく言葉をかける。

「チュンか、その言い方は俺が偽物みたいで好きじゃない。この俺『氷点のドラ』こそ本当のドラだ」

 ドラが意識を失うと現れるもう一人のドラ。普段表に現れない裏モードのドラ、通称『裏ドラ』だ。

 本人は『裏』と呼ばれるのを嫌い『火点のドラ』に対抗し、自身を『氷点のドラ』と言っている。

 裏ドラになると変わるのは髪の色だけではない。なんと天職まで変化するのだ。

 今のドラは氷魔法を得意とするソーサラー、『氷点のドラ』だ。

 武器に頼った力任せの『火点のドラ』とは違い、その実力は同じソーサラーであるテンホーをも凌ぐ魔蛇随一のソーサラーだ。


 ドラは典型的な小心者の小悪党だ。大きな声で威圧するのも自分を強く見せるためだ。

 小心者故に狡猾で襲う相手を調査し、敵わないと思った相手には手を出さない。

 しかし、自分の強さを勘違いしているため相手の力を見誤り敵わない奴を襲うことも少なくない。弱い奴には容赦がないが、敵わないとわかると恐怖で気を失う。

 その時現れるのが裏ドラだ。ドラが勝てると踏んだ相手に裏ドラが負けることはない。そういった意味ではドラの目もあながち間違ってはいない。

 当の本人は裏ドラの存在を知らないため、気が付いたら倒れている相手に、自分はキレたら強いと勘違いしている。

 本人は武器の特性に加え一度火が点く(キレる)と相手を倒すまで止まらない自分に畏怖し『火点のドラ』と呼ばれていると誇らしく思っているがそうではない。

 本来の意味は力任せに大剣を振り回すことしかできないドラは『劣化版剣闘王』であり、劣化版が本家に勝てるはずもなく、ワーカー試験すら落ちるであろうドラのことを揶揄した『赤点のドラ』の意味だ。裏ドラの存在もあり『赤点』とは言うのは憚られ『火点』となったのである。

 そんなドラだが、今回のユニオン戦においてミノワの情報が少なくミノワの強さを測れなかった。

 イーたちを倒したこと、紹介所に乗り込み一人のワーカーを伸した程度の情報はあったが、イーたち程度を倒したところで何の目安にもならない。そもそも三人がワーカーになれたのは、試験で組んだ他のメンバーのおかげで、三人だけなら剣闘王に殺されていただろう。

 紹介所の件にしても無闇にワーカー同士が争うことなどないし、紹介所内なら尚更だ。おそらく騒ぎを起こしたミノワを窘めようとした低ランクのワーカーに不意打ちでも食らわせたのだ。そんなミノワはたいしたことないと他のメンバーを見てそう確信した。

 倒したとはいえイーら三兄弟程度に重傷を負う程度のマイラ、剣闘王の館から逃げ帰り診療所送りになった栄光の箱舟。『類は友を呼ぶ』ドラはミノワも同程度だと高をくくっていた。


「こんな戦いでお前を見るとは思わなかったぞ」

 裏ドラまで出てくることになるとは思わなかったチュンがそう言った。

 専用武器を持っているドラが、なりたてのFランクワーカーに、しかも素手の相手に敗れるとは思うはずもなかった。

 だが、結果は見ての通りだ。

 硬化のスキルだろうが、ドラの攻撃が通用せず、逆に剣を握り潰すほど力でドラを倒したのだ。

 他のメンバーにしてもそうだ。

 連携で双子圧倒し、あえて数的優位を活かさず二対二で戦っている栄光の箱舟。

 どのような恩恵があるかは不明だが、使う必要はないとギフトを外し、その言葉通りアンコのスピードも苦にしていないクレリックのマイラ。

 どちらも箕輪家のメンバーが戦闘を優位に進めている。

 想定外の展開にも、チュンに焦りの色は見えなかった。

お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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