↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

ハイエルフの誕生、ノクシズの奇跡

ノクシズ要塞の城門が、レダスが召喚したアトラスの拳の一撃によって後ろへ押しやられ、外れて落ちた。


倒れた城門の上にダークエルフが立ち、レダスの方を見ている。


「ダークエルフの要塞、ノクシズの司令官ティミリグスです。」


ソリアは淡々と言ったが、その表情は複雑だった。


「お前、もしかしてソリアなのか? これは意外だな。どうやってリッチキングの手から逃れたんだ?」


ソリアに気付いたティミリグスが驚いた表情を浮かべる。


「ここにおられるレダス様が助けてくださった。」


ソリアはティミリグスを睨む。


「なるほど。そうでなければ、お前をここで再び見ることなどなかっただろう。」


そしてティミリグスはレダスの方へ向き直る。


「先ほどの魔法は何ですか? 誰も使えないゲート魔法を使うこともそうですが。召喚した巨大な腕もそうです。すごいお方ですね。」


ティミリグスはそう言いながら、素早い速度でレダスとの距離を詰める。


「ふっ。知りたいか?」


「キィン!」


ティミリグスは姿勢を低くし、一瞬でレダスの目前まで迫った。


しかしレダスは、自分の目の前まで近付いたティミリグスに対しても余裕を失わず、まばたき一つしない。


レダスの返答と武器がぶつかる音が、ほぼ同時に響いた。


ティミリグスの突き出した槍は、レダスの額から手のひら一つ分ほどの距離で方向を失い、弾かれた。


レクはティミリグスより背が低いが、レアが肩の高さまで持ち上げた円形盾を足場にして盾の上へ上がり、右手に持った剣でティミリグスの槍を打ち払う。


レクが円形盾から軽く跳躍すると、レアは盾を構えたそのままの姿勢でティミリグスに向かって突進した。


ティミリグスは円形盾の鋭い縁を避けながら後退する。


そんなティミリグスに対し、レクは再び剣で上から下へ縦斬りを放った。


ティミリグスはレアの攻撃を避ける姿勢から即座に膝を曲げて後方へ転がり、レクの攻撃範囲から離脱した。


「パチ、パチ、パチ! なかなかやるな。」


しなやかなティミリグスの連続動作を見て、レダスは拍手をしながら率直に称賛した。


しかしそのおかげで、レクとレアの警戒レベルはさらに高くなる。


「攻防一体の槍術がマスターレベルだが、師匠は誰だ?」


「……」


レダスの問いにティミリグスは答えない。


「師匠もなく、一人で練習して到達できるレベルではない。」


レダスは再び尋ねる。


「エルフ村の族長カプト様です。」


しかし答えたのはティミリグスではなくソリアだった。


「ふむ。エルフ村の族長か。槍術をここまで完成させるとは。エルフは長生きするものだな。」


「昔、冒険者として活動されていた頃、趣味で千年ほど槍術を研究されたことがありました。」


レダスが感嘆すると、ソリアがカプトの冒険者時代の話を付け加える。


「レクとレアには両手の指を二本ほど折って相手をしろと言っていたが、それでも称賛に値する功績だ。」


「ありがとうございます。」


レダスに褒められ、ソリアは喜ぶ。


「ところで、同じ師匠を持つ同門だが、ソリアとティミリグスではどちらが実力が上なんだ?」


ティミリグスは高水準の槍術で、レクとレアの連続攻撃を一本の槍だけで防いでいる。


そして隙を狙ってレダスを攻撃しようとするが、その機会までは得られない。


「槍術だけを見れば、ティミリグスの方が私より上です。もちろん魔法は私の方が優れていますが。」


ソリアは槍術の実力不足を認める。


「ふざけたことを言うな。ソリア、お前は槍術だけでなく魔法も私より劣っている。」


耳の良い種族だけに、ティミリグスはソリアの言葉に反発した。


「違う。」


ソリアも引き下がらない。


「ふむ。ティミリグスの方がソリアより槍術に優れているということか。」


レダスは腕を組んで考え込む。


「私は退かない。お前たちエルフは、ダークエルフに不吉な呪いをかけ、一生奴隷にするつもりだったんだろう!」


「エルフを誘拐したのはお前だ、ティリス。」


「黙れ。親しげにその名前で呼ぶな。私はティミリグスだ。」


レダスが考え込んでいる間も、ティミリグスとソリアの口論は続く。


そしてティミリグスが目配せすると、森の中にいたダークエルフたちが姿を現した。


ダークエルフたちはレダス一行を半包囲する形で距離を詰め、近接戦を始めようとする。


「レダス様。後方は私たちにお任せください。」


ミリティエがドラゴン変身スキルを解除する。


ミリティエはこれまで森の中のダークエルフたちが放つ矢を防ぐため、ドラゴン変身スキルで両腕だけを竜の前脚へと巨大化させ、一行を広く覆って守っていた。


変身スキルを解除すると、竜の前脚だった両腕は元の姿に戻る。


ミリティエとピアは後方から接近するダークエルフの攻撃に備える。


するとレダスが大声で笑った。


「はははは。ダークエルフと呪いだと。」


緊張が高まる状況の中、場にそぐわずレダスが大笑いしたため、皆が戸惑う。


「レダス様?」


ソリアが皆を代表して尋ねる。


「いや、すまない。長く生きても解決できない問題があるものだと思ってな。まあ、言葉より実際に見た方が早いだろう。」


レダスは意味深な言葉を口にした。


「コール・ハイエルフ。」


そしてレダスはティミリグスに魔法をかけた。


変化は一瞬で起こった。


ティミリグスはダークエルフとしての属性を失い、ソリアよりもさらに白い肌を持つエルフの姿になっていた。


その変化を目の当たりにしたダークエルフたちでさえ、衝撃と驚きのあまり手に持っていた武器を落とす。


「レダス様。これは一体……」


ソリアもティミリグスの変化に驚いている。


長い長いエルフの歴史の中で、一度たりとも見たことのない出来事だった。


ティミリグスもまた、自分の変化した姿に戸惑っていた。


そして皆が答えを求めてレダスを見る。


「ハイエルフだ。本来ならとっくに種族進化していてもおかしくなかったことだ。」


「ハ……イ……エルフ。」


レダスの言葉に反応するように、今しがたダークエルフからハイエルフへ種族進化したティミリグスが、その言葉を繰り返す。


「そうだ。エルフはレベルが上がるか条件を満たせば、誰でもエルフからハイエルフへ種族進化できる。ただ、なぜかエラドスではその方法が失われているようだな。」


「それなら、私もハイエルフへ進化できるのですか?」


ソリアはティミリグスの変化を見て、驚き半分、羨望半分の視線を向けながらレダスに迫る。


「もちろんだ。レベルまたは進化条件さえ満たしていれば、ハイエルフへ種族進化できる。」


レダスはうなずいた。


「では、今すぐお願いします。」


ソリアは積極的に頼み込む。


「コール・ハイエルフ。」


ソリアの切迫感とは対照的に、レダスは大したことでもないように呪文を唱えた。


「成功したな。」


その言葉どおり、ソリアもティミリグスと同じようにハイエルフの肌の色を持つようになった。


「レダス様。本当にありがとうございます。」


ティミリグスに負けたくないソリアは、自分もハイエルフへ進化できたことで、喜びがさらに大きかった。


「エルフがハイエルフになるための種族進化条件を達成すると、エルフによっては目に見える特徴が現れることもある。このエレダスでは、ダークエルフという状態がその準備段階と言えるだろう。」


レダスは自分の考えを語った。


「では、私たちは皆ハイエルフなのですか?」


すでにレダスと戦う理由がなくなったティミリグスが再び尋ねる。


「まあ、種族進化の条件を満たしたのは事実だが、必ずハイエルフに進化するというわけではない。しかし個人差があったとしても、最終的にハイエルフになるという事実は変わらない。」


「それなら、もしかして?」


「ああ、分かった。ここで全員確認してやるから、とりあえずダークエルフを全員集めてくれ。」


レダスはそう言うと、ダークエルフ要塞ノクシズにいる全てのダークエルフについて、ハイエルフへ進化可能かどうかを一人一人確認した。


しかし、喜びに胸を躍らせる百五十人のダークエルフたちとは対照的に、レダスは翌日にはすっかり疲れ果てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。