ゲート前で繰り広げられた会議
「はい。しかし最初は失踪だとは思いませんでした。森の中での生活ですので、強い魔獣の襲撃で命を落とすことは以前からあったことだからです。」
カフトが言う。
「では、いつから失踪事件だと分かったのですか?」
今度はピアが尋ねた。
「失踪したエルフの中にダークエルフが含まれていたため、おかしいと思いました。」
カフトの言葉だ。
「それはどういう意味ですか?」
ピアに負けまいとして、ミリティエが先に尋ねる。
「ダークエルフの失踪は明らかにおかしなことです。なぜならダークエルフは自分たちを穢れた存在と見ており、村の外には一歩たりとも出ようとしないからです。」
「なるほど。自主隔離か。」
レダースがうなずく。
「はい。誰かが強制したわけではありませんが、ダークエルフ自身がそう決めて守っていました。」
カフトがレダースの言葉に同意する。
「その後もティリスによるエルフの拉致は続き、そのようにしてティリスと共にするダークエルフたちの数も増え続けました。」
カフトは話を続けた。
「ティリスがダークエルフの要塞ノクシズの司令官だと聞いた。」
レダースが尋ねる。
「はい。その通りです。司令官になってから名前もティリスからティミリグスへと変えました。」
「それなら要塞の位置はすでに知っているはずだが、討伐隊を送る考えはなかったのか?」
カフトの答えにレダースが再び尋ねる。
「今のティリスの背後には魔王の支援があります。たとえプランタリス・マファリアのすべてのエルフを動員しても、魔王と直接戦うことはできません。」
カフトは不可能だと首を横に振る。
「そしてティリスと魔王の関係は、エルフを商品として引き渡し、その活動資金を受け取る関係になったということか。」
「はい。その考えで正しいです。」
レダースの推測が正しいと、カフトがうなずく。
「さらにダークエルフの要塞ノクシズと、魔王軍の辺境要塞ダーク・カリゴスは比較的距離が近く、ノクシズ要塞がダーク・カリゴスから援軍支援を受けられるという点も無視できません。」
カフトは真剣な表情で、戦略的にも二つの要塞が近いことを強調した。
「あ。」
レダースはその部分について何か説明すべきだったが、面倒だったのでそのまま流した。
頭の中にしきりに浮かんでくるルシファーのことも、レダース自身が隔離した。
「カフト様。実はダーク・カリゴスはすでにレダース様が――」
ソリアが当事者として、その事件を代わりに話そうとする。
「待った。事情はすべて確かに理解した。ひとまずこの問題は私に任せてほしい。今すぐノクシズ要塞へ行ってみよう。」
レダースはソリアの口を塞ぎながら立ち上がった。
すると察しの良いソリアがうなずき、口を閉じた。
「おお。レダース様が直接私たちを助けてくださるのですか。これほどありがたいことがまたあるでしょうか。すぐに戦士たちを再招集します。」
カフトは喜びながら急いで立ち上がる。
「いや。ノクシズ要塞訪問はここにいる人数だけで十分だ。ただしソリアをエルフ代表として連れて行こうと思うが、構わないだろう?」
レダースはまず父親であるカフトに同意を求める。
「はい。もちろんです。ご心配なさらず、ご意向のままになさってください。」
カフトはソリアの同行に賛成した。
「カフト様、ありがとうございます。レダース様にも感謝いたします。」
ソリアは謙虚に両方へ挨拶した。
しばらく後、レダース一行はカフトの小屋の前庭に再び集まった。
前庭はゲート魔法を使うのにちょうど良い広さだった。
「さあ。それではすぐにノクシズ要塞へ出発しようか。」
レダースは何気なく言ったが、一行の目は鋭く光る。
「その、レダース様。ゲート魔法で移動されるのですよね?」
ピアが尋ねた。
「当然だ。そこまで歩いて行くわけにはいかないだろう。」
レダースが答える。
「それなら今回も前回みたいに侵入するのですよね?」
ミリティエの目つきがさらに疑わしげに光る。
「そのつもりだが、何か問題でもあるのか?」
レダースは、なぜ急にそんなことを聞くのかという顔をした。
「ですがレダース様。いくら敵とはいえ、女性の部屋に勝手に入るのは、少し違うと思います。」
ソリアがレダースを見ながら慎重に自分の意見を述べる。
「あ。」
レダースはそこでようやく一行の目つきが変わっていた理由を理解した。
「レア。レダース様が幸いにも気付いたみたい。」
「レク。やっぱり長生きはしてみるものね。」
レクとレアはレダースのマナー力向上を祝福した。
「こいつら。それなら前回のリッチキングの時はどうして何も言わなかったんだ?」
レダースが問い詰める。
「女性の部屋とリッチキングの部屋を比較するのは失礼です。」
レクは、もっと筋の通ったことを言ってくださいという顔で首を横に振る。
「え? 今の発言、種族平等の原則に反していないか? リッチキングだって歴とした社会的地位と面子があるんだぞ。」
レダースが抗議する。
「レダース様。苦しい言い訳はレダース様ご自身をさらにみじめにするだけですよ。」
しかしレアは容赦なくレダースの言葉を無視した。
「ノクシズ要塞は正門から堂々と入るのが正しいと思います。」
ミリティエは今回は絶対に正門からだと主張する。
「まあ、みんながそう考えるなら仕方ない。ノクシズ要塞の正門から入ることにしよう。」
レダースが素直に皆の意見を受け入れると、皆は安堵のため息をついた。
「コール。ノクシズ。」
レダースが魔法の呪文を唱えると、次元門が一行の前に現れて開いた。
「では行こうか。」
レダースは先頭に立って次元門の中へ入った。
全員が通過した後、次元門は自動的に閉じて消えた。
次の瞬間、レダースたちはダークエルフの要塞ノクシズの正門前に立っていた。
「コール。ゲート解除。」
レダースがゲートを解除する。
要塞は即座に、突然現れたレダース一行に対して警戒態勢を取った。
レダースは周囲を見回した。
「何と言うか、暗くてじめじめして不気味な場所だと思っていたが、そうでもないな。」
日当たりの良い整った場所に位置するノクシズ要塞を見て、レダースは想像と違う印象に何となく拍子抜けした。
「レダース様。ダークエルフたちは肌が少し黒いだけです。魔族ではありませんので、無用な誤解はなさらないでください。」
ソリアがレダースの誤解を正した。
「そうか? 私の知っているダークエルフはもっと魔族らしい……いや。私が悪かった。」
レダースは何か言い掛けたが、そのまま口を閉じた。
ソリアは笑っていたが、その笑う目に浮かぶ殺気を到底無視できなかった。
「レダース様、それはいけません。些細なエルフの恨みも千年続くと言います。ましてや同族の名誉毀損に対する恨みがいつ終わるか分かりませんよ。」
ピアがレダースの差別的発言をたしなめた。
「そうだな。分かっている。」
そこへレクが飛来する矢を剣で機敏にはじき返す。
「のんびり話をしているためにノクシズ要塞の前に立っているわけではありません。」
「森の中でもダークエルフたちの動きが見えています。」
反対側から飛んでくる矢は、ミリティエが両腕だけをドラゴン変身スキルで巨大な竜の前脚に変え、一行を広く包み込むように守った。
そしてミリティエは鋭敏な感覚を利用しながら、森の中のダークエルフたちの動きも監視していた。




