よく食べた後始まる伝説
「ふむ。」
レダースは今でも見るたびに驚いている。
レダースが栄養失調で苦しんでいるウルフラン村の住民たちに、なけなしの食べ物のようなものでしっかり食べさせてから3日が過ぎた。
獣人族の身体能力が卓越していることは知っていたが、食べ物をしっかり食べる前としっかり食べた後ではあまりにも違った。
ひとまず、レダースの前にいる竜族のミリティエがその例だ。
栄養失調から完全に回復したミリティエは、健康美が溢れんばかりに流れ出ている最中だ。
レダースの考えでは、今ならむしろミリティエがデュラハンを片手で持ち上げて玩具のように扱うように見える。
竜族自体が元々強靭な肉体派種族ではあるが、とりわけ魅力的なミリティエの上半身は、その双子の姉妹レクとレアでさえ嫉妬するほどだ。
「栄養失調。実に恐ろしい病だったな。」
レダースは栄養失調という病を改めて見るようになった。
ピアも全体的に最初に会った時より体つきが良くなっている。
そしてウルフラン村の住民たちは、レダースを村長レベルではなく、ほとんど主人様レベルで慕っている。
どうやら獣人族の特性上、獣の本能が残っているため、食べ物を与えた相手を主人として認識するのはどうしようもないことだ。
「ご主人様。魔王軍が討伐隊を送ってきそうですが、どう対処しましょうか?」
ミリティエとピアはすでにレダースを主人様と呼んでいる。
「レダースと呼んでくれると嬉しいのだけれど。」
「あっ!申し訳ありません。レダース様。」
レダースが訂正すると、ミリティエは自分の失敗を恥ずかしがる。
しかしレダースの左右に立っているレクとレアの痛い視線が即座にミリティエへ向けられる。
そのうえミリティエの隣にいる妹ピアの視線も穏やかではない。
「あなた、わざと間違えたでしょう?」
3人の視線がテレパシーのようにミリティエへ伝わる。
「そんなはずありませんよ〜。」
しかしミリティエは勝者の笑みとともにその視線を弾き返した。
竜族特有の鋼鉄の神経によってまったく気後れしておらず、むしろ自信に満ち溢れている。
レダースがウルフラン村を救ってから変わった点がもう一つある。
このエレダースでは経験値を積んでも体力が満ちていなければレベルアップすることができない。
そのためウルフラン村には、経験値は十分でも体力がなくてレベルアップできない獣人族が大勢いた。
すると今回、レダースが食べ物のパラダイスで飢え死に寸前だったウルフラン村を救ったことで、レベルアップが可能になったのである。
제2구간
レベルアップできなかった獣人たちが一気にレベルアップし、魔法スキルや戦闘スキル、または種族固有スキルを習得したことが、ウルフラン村の変わった点だ。
ミリティエはそれまで積み重なっていた20レベルが一気に上がり、竜族固有のスキルが解放される。
竜族固有スキルの中で今回ミリティエが習得したものはドラゴン変身スキルであり、このスキルを使用することでミリティエは完全なドラゴンへ変身することが可能になった。
そしてドラゴン変身スキルに伴う補助スキルとして、ドラゴン意識共有というスキルも共に解放される。
ドラゴン意識共有は竜族固有のテイマースキルで、ドラゴン系統の下位魔獣を手懐け、その魔獣と意識を共有する能力である。
最初の解放時には一度に1体の竜魔獣しか手懐けることができないが、スキルレベルが上がれば同時に複数をテイミングすることも可能である。
テイミングした竜魔獣を偵察に送れば、遠距離からあらかじめ現地の状況を知ることができるスキルであり、1体の竜魔獣だけでも手懐けることができれば、その1体だけでも様々な面で非常に有用なスキルである。
ピアの場合、20レベルまではいかなくとも10レベル上がり、すべてのウルフラン村の住民たちも少なくとも5レベル以上は基本的に上がった。
「おほん。魔王軍が来るまでどれくらいかかりそうだ?」
ともかくレダースが再び尋ねる。
レダースには賢者として、自分の心の中に立てた規則がある。
そのうちの一つが『女たちの喧嘩にはわざわざ割り込まない。』である。
たとえ原因がレダース自身にあったとしても、これもまた時間が解決することだと考え、とりあえず放置する。
「魔王軍の辺境要塞であるダーク・カリゴスからここまでは、3日ほどかかります。」
意識を共有している竜魔獣が空からダーク・カリゴスの状況をリアルタイムでミリティエに伝えている。
「ふむ。」
レダースは考え込む。
レダースには魔王軍と戦争したいという考えはない。
実のところ今も、あまりにも介入し過ぎたのではないかと少し心配している。
たとえデュラハンを倒したとしても、デュラハン自体は上級魔族ではないため、デュラハン一体だけで魔王軍が全戦力を動員してウルフランを討伐する理由はなかった。
今、辺境要塞ダーク・カリゴスから討伐隊を送っていることがその証拠だ。
もし魔王がレダースの正体を知っているなら、レダースに直接戦いを挑むよりも、アルカノスに魔王が受けた不利益に対する不当待遇申請書を提出するはずだった。
レダースの周りの4人がレダースの指示を待つ。
「その、レダース様。村の人たちはみんな戦いたがっています。」
ピアがレダースの様子をうかがいながら慎重に村人たちの意見を伝える。
「まあ、それもそうだろう。毎回いじめられていたなら、今は復讐したい気持ちになるのも無理はないな。村の戦力は?」
レダースが尋ねる。
「戦闘能力基準で、狼族ベアウルフ戦士5名、狼族アーチャーウルフ10名、狼族偵察ウルフ5名、猫族アサシンキャット5名、猫族シャドウキャット5名、そして一般獣人族兵士30名です。」
すると双子の戦士のうちレクが答える。
「ウルフラン村全体人口の20%です。」
レアが付け加える。
ただし、レダースが見るに、ピアとミリティエは二人とも計算に弱いことが明らかだった。
すでにレクが数字を口にした時から、二人とも数字攻撃によってダメージを受け、会話の後半部分まで追いつけていない。
「これもある意味では、獣人族固有スキルと言うしかないな。」
レダースは、獣人族が計算できないことを悪く言う気はない。
ただ、獣人族という種族が持つ一般的な体質程度に考えておく。
「60人か。」
レダースは表向きには平然として兵士の数を口にしてみる。
だが内心では非常に驚いている最中だ。
それもそのはずで、昨日までは栄養失調で完全に無気力な村だった。
それが今日、少ししっかり食べさせただけで、いかつい最強精鋭戦士たちが60人も突然現れたのである。
「ああ。私はやり過ぎたかな。少し食べさせただけなのだが。」
ウルフラン村が活気に満ちているのは良いことだが、少しやり過ぎたような気がする。
しかし今になって後悔しても、すでに遅かった。
「それでも、せっかく健康を取り戻したのだから、わざわざ今回の戦いで村の住民たちを犠牲にする必要はないだろう。」
結論を出したレダースが口を開く。
「ですが。」
ピアとミリティエが異議を唱える。
「待て。今回の事件の原因を提供したのは、あくまでも私だ。だから責任も私が負う。」
手を上げて二人の言葉を遮った後、レダースはウルフラン村の住民が出る必要はないと断言する。
「ウルフラン村の参加は、ミリティエとピアだけで十分だ。」
レダースが笑いながら二人を見る。
「あ。」
ピアが安堵する。
「そうですよ~。私たちまで外されたら、本当にひどいんですよ!」
ミリティエもようやく寂しい気持ちが消え、明るい表情になる。
「では、決まったついでにすぐ行ってみるか。」
レダースは席から立ち上がると、すぐに呪文を唱える。
「コール。ダーク・カリゴス。」
すると部屋の中に次元門が現れ、扉が開いた。
ミリティエはあまりにも驚き、誰かに説明を求めたそうな様子だったが、レダースはすでに次元門の中へ入った後だった。
その後を慣れた様子でレクとレアが続く。
「お姉ちゃん。早くです。私たちも行きましょう!」
ピアはすでに経験したことがあったため、むしろ積極的にミリティエの左手を掴み、次元門へ導いた。
ミリティエがピアに導かれて次元門の中へ入る。
次の瞬間、魔王軍の辺境要塞ダーク・カリゴスの最上階にあるとある部屋の中に次元門が現れ、扉が開くと、レダースとレクとレア、そしてピアとミリティエが姿を現した。
「コール。ゲート解除。」
全員が次元門から出ると、レダースが次元門を閉じる。
次元門は最初からその場所になかったかのように素早く消えた。
「レダース様。ここはどこですか?」
ミリティエにとって、次元門を通じて別の地域へ瞬間移動したのは今日で1日目である。
もちろんピアも今日までで2日目であることは同じだ。
慣れていない二人は目を丸くしている。
「ふっ。いやはや~、いやはや~。だからアマチュアは駄目なのです。」
機会を逃さず、多数の瞬間移動経験者であるレクが、ピアとミリティエに誰が上で誰が下なのかをもう一度教育する。
「何ですって。」
レクの言葉にピアとミリティエがむっとする。
「みなさん、もうやめてください。子供でもないのに恥ずかしくないのですか?」
レアが全員を落ち着かせる。
実はレアは、レダースの前ではこの4人の中で自分が最もお姉さんであるという点をそれとなく強調している。
「お前のほうがもっと悪い。どさくさに紛れて自慢しようとして。」
レアをよく知るレクがすぐにカウンターを放つ。
「みんな、私たちの任務を忘れたのか。ここは敵陣だ。雑談は戻ってからにするように。」
レダースが緊張感のない4人をたしなめる。
「申し訳ありません、レダース様。」
すると4人の意識が現実へ戻った。
「それで、ここはどこなのですか?」
ピアが尋ねる。
「ゲート魔法は最も望む場所、あるいは最も必要とする場所へ連れて行ってくれる魔法だ。」
「今回の場合は。」
「そうだな。」
「我々が必要としている場所。」
「まさに魔王軍の辺境要塞ダーク・カリゴスの要塞司令官がいる場所ということになるな。」
レダースがそう言いながら振り向くと、そこにはダーク・カリゴスの要塞司令官がいる。
しかし要塞司令官は何かに熱中している状態であり、要塞司令官の後ろに現れた5人組にまったく気付いていなかった。




