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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十章 死の商人

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戦場に根を張る者


ー 戦場に根を張る者 ー


「専務!積み込み完了致しました。」


ぴったり三十分。

宣言通り寸分の狂いもない作業…まさに職人芸…


荷物は整然と甲板に並べられそのままノアの作業員へと引き継がれていく。


「積み込みご苦労…」


セレネが静かに言う。


「出航は二日後だ。皆、街にでも出てゆっくりしなさい…」


その声は、先ほどまでとは違い驚くほど優しかった。


「ありがとうございます!」


作業員達の表情が緩む。


ただ厳しいだけではない。


信頼される理由がそこにあった。


「積み込みありがとう…助かりました。あとはこちらで…」


ヒメナが軽く頭を下げる。


「あ、そうだ…」


セレネが口を開く。


「キドウ司令に、我が社から提案がございまして…」


「ん?なんでしょう?」


「まぁ、我が社の社長である我々の父の提案なんですが…」


「我々ヘリオス・アーセナル社は、太陽系中に支社を展開しています…」


「ノア側がよろしければですがコロニーに支社を建てることができれば……と…」


「へっ…そんな計画があったのね!」


リリアが目を丸くする。


「あぁ…」


セレネは淡々と続ける。


「ノアは自治権を持つ、立派な“国”…そして我が社の重要顧客、専用の窓口、専用の工場それらをここに置ければ双方に利益がある…との考えだ。」


「もちろん、無償ではありません…」


「土地は借地。月々十五億、兵器購入時には優遇措置を付ける…さぁ…どうかしら?」


一切の無駄がない提案だ…


ヒメナは腕を組みセレネを見る。


「まぁ…こちらとしてはええ話やな…

ちょうどこの前の会議で一般企業の誘致が議題に上がったとこやし」


しかしヒメナは一つだけ引っかかる。


「けどさ…なんで“うち”なん?」


セレネの目がわずかに細くなる。


「理由は二つ」


「まずノアは我が社の大切なお客様です。近くに窓口を置いておきたい…そして…二つ目」


一瞬空気が変わる。


「新兵器の試験よ。

ノアはね…太陽系で一番戦闘している船なの…

実戦データは何よりも価値がある。

月周辺では好き勝手に実験できないからね…

我々としては…非常に“ありがたい”のよ」


完全な本音。


「……あぁ、そーいう事か」


ヒメナは一度手を叩き小さく笑う。


「ノアは自治権持っとるしな!

確かにやりやすいわな!

いいよ、賛成!よろしくね」


セレネがわずかに目を見開く。


「あら…意外とあっさり決まったわね」


「話が分かりやすかったからな」


ヒメナは笑う。


「ほな、図面引いて建設始めよか…

で、責任者は誰?」


セレネは迷わず答える。


「リリアよ…妹をよろしくね」


「ふーん…責任者は私か…」


リリアは頷きかけた。


「……ん?って私!?なんで私なの!?」


完全に動揺する。


「あなた、どうせ宇宙を飛び回ってたまにしか帰って来ないんだから。

今と大して変わらないでしょう?」


「あぁ…あぁ……」


リリアの思考が止まる。


その様子を気にも留めずセレネとヒメナの会話は

すでに“次の段階”へと進んでいた。


取り残される、リリア。


だがそれこそが“ヘリオス家のやり方"


戦場に商売を持ち込みそして根を張る。


(続)


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