晩餐会にて①
ー 晩餐会にて① ー
ー 木星衛星エウロパ 海中基地
「ロン様…キドウ・ヒメナは出てきますかね…」
ロンはモニターを見たまま答える。
「えぇ大丈夫…出てくるわ。」
「協力者より通信!モク・ゼルヴァインです!」
ロンの目が細くなる。
(来たわね……)
「こちらユーイ・ロン……状況は?」
低く落ち着いた声。
通信の向こうから返る。
「三日後の十三時頃――木星宮殿にキドウ、そして神帝モックが入る。そこを狙え…我が部隊もサポートする。しくじるな。」
ガチャッ――
部屋に沈黙が落ちロンは小さく笑った。
「……ハハ……ゼルヴァインの奴…実の妹まで消すつもりか…」
部下が息を呑む。
「それだけ王になりたいの…妹が邪魔なのよ。」
冷たい声。
「こういう奴は、使える。正直言って好きではないけどね…」
ー 宇宙空母ノア 艦橋
「ヒメナ司令!」
オペレーターが振り向く。
「三日後、十三時より――木星宮殿にて晩餐会の招待状が届いております。主催はモク・ゼルヴァイン王子です。」
ヒメナは少し驚いた顔をする。
「晩餐会……?なんか柄じゃないね……びっくりしたよ。」
「どうされますか?」
「参加で返信しといて、モックと行くよ。」
「了解致しました!」
⸻
ー 三日後 ノア格納区
「モック!そろそろ行くで!」
ヒメナが声をかける。
「お待たせしました、ヒメナさん!晩餐会なんて久しぶりなもんで……ちょっと緊張して……」
ヒメナが呆れる。
「あんたの実家やろ!」
「まぁ…そーなんですけどね…」
「あの…私も行っていいかな?
(晩餐会……楽しそう…行ってみたい…)
そこに立っていたのは冥王星のエルフ、バルサルナ。
「いいよ。一人増えたところで変わらんし。さぁ……行こうか。」
ノアから小型艦が発進する。
目的地 木星宮殿。
華やかな宴の裏で、
静かに刃が研がれていることを
誰も知らない。
ー 木星衛星エウロパ 海中
「そろそろ出航しよう…目的地、木星宮殿!」
ユーイ・ロンの声が、静かに響く。
(今日が最後です先輩…いや…キドウ・ヒメナ…)
「次元偽装輸送用潜水艦、出航用意!」
「重力安定装置、正常!空間偽装フィールド、展開!」
「全系統グリーン!出航可能です!」
ロンは前を見据える。
「さぁ行きましょう…出航…」
轟音と共に艦が水を裂き、そのまま一気に宙域へ。
ー エウロパ外縁宙域
艦橋は静まり返っていた。
誰も軽口を叩かない。
「あ、あの…ロン様」
副官が低く言う。
「今回の任務、最終確認を」
「うん…」
ロンは立ち上がる。
「任務は…宮殿へ潜入前に協力者と合流、体制を整えキドウ・ヒメナ及び神帝モク・モックの暗殺」
副官が"あえて"口にする。
「"拘束"では無く…“暗殺”でよろしいのですね」
「うん…ダヴィンチ様はそれを望む…」
「だが…状況によっては、拘束も許可する」
副官は理解する。
(ロン様はやはり……)
ー 艦内 機密区画
ロンは一人、端末を開く。
そこに表示される暗号文。
発信元――神格再編機関。
《対象:キドウ・ヒメナ》
《処理区分:排除》
「後悔はない…私は神格再編機関に入った頃に過去を捨てた…」
(ダヴィンチ様…あなたに全てを賭けます…)
「キドウ・ヒメナは…私が撃つ…」
誰にも聞こえない声。
ー 艦橋
「目標まで残り一時間です。宮殿周辺に哨戒艦多数ですが偽装フィールドに反応なし!」
「このまま潜り込みましょう…」
モニターに映る巨大な宮殿にヒメナがいる。
(会えますね、先輩)
「全員、戦闘準備、さて協力者モク・ゼルヴァインと合流しましょう…」
(続)
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公開情報
・モク・ゼルヴァイン 三十歳 男性
木星王の長男で神帝モク・モックの兄
皇位継承順位二位 妹のモックが一位




