ロンの覚悟
ー ロンの覚悟 ー
宇宙要塞ポイント・ゼロ。
総督執務室を出たあとも、ユーイ・ロンの足は震えていた。
「はぁ…私が……ヒメナ先輩を……
ダヴィンチ様は私を試すつもりね…」
キドウ・ヒメナ…
神軍学校時代、誰よりも尊敬していた先輩…
だが今はノア統合司令…敵だ…
覚悟はしていた。
神格再編連合に身を置いた時から、いつかはこういう命令が来ると。
だが……
「……くっ…覚悟していたはずなのに…
ノアにはヒメナ以外にウォン先輩にタカヤもいる…」
震えが止まらない。
恐怖なのか。それとも…迷いなのか…
背後から声がした。
「ロン様!準備が整いました。」
振り向くと、数名の戦闘員が敬礼していた。
全員、精鋭だ。だが人数は少ない。
皆んななんとも言えない顔をしてこちらを見ていた…
当然だろう。
あの宇宙空母ノアの統合司令の暗殺任務など成功確率もほとんど無い自殺行為だ。
ロンは小さく頷いた。
「さぁ……行こう…」
格納庫には、黒い艦体の小型艇が待っていた。
次元偽装輸送用潜水艦
宇宙連合の輸送潜水艦にを改造した特殊艦。
ロンは艦を見上げた。
(ダヴィンチ様は我々に帰って来いとは言わなかった…まぁ、誰にも言ったところを見た事ないけど…)
「刺し違えてでも…ヒメナを殺せ…って事か…」
それが命令だ…ロンはゆっくりと目を閉じた。
(ヒメナ先輩……)
軍学校の講堂…壇上で凛と立つ姿。
あの背中に憧れていた。
「……すみません…とは思いません…これが私の選んだ道なんです…」
ロンは艦に乗り込みハッチが閉まる。
「これよりノアへ向かう…普通行っても潜入は不可能、自殺行為だ…だから次のドックを狙う!長旅になる…気を引き締めていこう!」
「はい!」
乗組員達の揃った敬礼を見たロンは決意を固める。
「次元潜航、準備完了。」
「位相エンジン、起動。」
低い振動が艇を包む。
外の星々が歪み始めた。
オペレーターが言う。
「潜航カウントを開始!」
ロンは前方スクリーンを見つめた。
そこには宇宙空母"ノア"
「はい!三……二……一……!」
空間が裂ける。
「目的地を木星宙域に設定!潜航を開始する!」
……ロンは呟いた。
「待っていてください……ヒメナ先輩…」
その声は決意なのか、祈りだったのか、それとも…
数時間後…
「目的ポイントに到着!」
「本艦は木星衛星"エウロパ"の海中にてノアを待つ。」
「ロン様…ノアは来ますか…?」
「あぁ、来るよ…ノアは絶対に…」
(続)
--------------------------------------------------
公開情報
・次元偽装輸送用潜水艦
宇宙連合の輸送潜水艦にを改造した特殊艇。




