天針
ー 天針 ー
(そろそろ始めようかな…)
夜。高層ホテル13階。
レオン一家の部屋では笑い声が響いていた。
「ハハハ!今日は平和だな。」
ダリウスが酒を持ち上げる。
「宙警連も最近は静かだ、私達を諦めたのかしら?」
ノクティスが肩をすくめる。
レイナは窓の外を見て言った。
「流石に…この高さなら奇襲も無理よ。」
部屋には油断した空気が満ちていた。
(はぁ…えらい油断しとるな…)
黒装束の男。宙警連神帝直属の戦闘員"キドウ・ゼン"
彼の手には、小さな金属の針が数本握られている。
長さはわずか五センチほど。
シャランッ シャランッ
(数も少なくなってきたな…帰ったら補充か…これ特注で高いんだよな…経費通るかな…はぁ…)
ゼンは指を軽く動かす。すると針が三本宙に浮いた。
(まぁええわ…ほな、バイバイ…)
ゼンは静かに呟いた。
「……天針」
針が空中で停止する。
次の瞬間 シュンッ!!
三本の天針が窓を貫き、一直線に飛ぶ。
音はほとんど無かった。
本当に一瞬だった。
レイナ、ダリウス、ノクティス
三人の胸を正確に貫いた…
ビシャッ …ビシャッ!プシャッ !プシューッ……
血が床へ広がる。
部屋は一瞬で血の海になった。
「え……え?」
レオンは理解できなかった。
さっきまで笑っていた仲間が
目の前で笑ったまま死んでいる…
腰が抜ける。
「な、なぜだ……」
レオンは震える声で言う。
「こ、ここは……13階だぞ……この辺じゃ……一番高い場所だ……」
「宙警連の気配も無かった……はずだ…」
恐怖で顔が歪む。
「誰や出てこい!!」
沈黙。
そして窓の外から声がした。
「はい。」
窓枠に立つ黒い影。
「私です。」
月明かりに顔が見える。
冷たい目の男。
「宙警連」
彼は静かに名乗った。
「キドウ・ゼンと申します。」
その背後で、再び天針が浮かび上がる。
レオンの顔が絶望に染まった。
通信機にノイズが走る。
「おーい……もしもし?聞こえる?」
大神官ココネの声だった。
「あのさ、リーダー、レオンの生け捕りは無しで…」
「えっ?なんで?どーかしたの?」
「潜入部隊より有益情報の入手を完了したと連絡が入ったの。その場で殺してください。」
ゼンは小さく息を吐いた。
「あ、そういう事なら……了解したよ。大神官様。」
ブツッ。
通信は切れた。
ゼンはゆっくりとレオンを見下ろす。
「あの…レオンさん……残念でしたね。」
指先の周りに、天針が数本浮かぶ。
静かに回転するそれは、まるで意思を持っているようだった。
「あなたの生け捕りは中止みたいです。」
「な、な、何で…?」
「詳しくは知らんが…上からの命令?」
一瞬の沈黙。
「あなたにはここで…仲間と共に…」
針が音もなく走る。
「死んでもらいます。」
ヒュッ。
次の瞬間、針がレオンの頭を貫いた。
バタン。
レオンの体が床に崩れ落ちる。
ゼンはそれをしばらく眺めていた。
(ふぅ〜…ミッションコンプリート……ってやつかなぁ。)
肩を回し、深く息を吐く。
「あー……疲れた。」
天井を見上げながらつぶやく。
「もう辞めたいな……
ねーちゃんのノアに乗るんだった…」
ポケットからタバコを取り出す。
「一本…いや、二本だけ吸って……帰ろ。」
(続)
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公開情報
・天針
ゼンの持つ武器、五センチほどの針のような物
ギフト"浮遊"で操り攻撃する。
使い捨て




