キドウ・ゼンは仕事人
ー キドウ・ゼンは仕事人 ー
ジョージア・ロシア国境付近。
夜の山岳地帯。
静かな風が吹く。
一人の男が双眼スコープを覗いていた。
キドウ・ゼン。
宇宙警察連合 通称"宙警連"
神帝直属の戦闘員。
ノア統合司令 キドウ・ヒメナ の実弟。
通信機に小さく呟く。
「レオン一家…発見…と…」
通信を切る。
ゼンは静かに息を吐いた。
(さて…仕事やな)
山麓の道路を車が走る…
リーダー レオン・ヴァルクス が口を開いた。
「ロシアはもう少しだ…」
助手席の女がため息をつく。
カルディア・レイナ。
「宙警連の気配もない…少し休みましょう…
流石に疲れたわ…」
「はぁ…お風呂にも入りたい…」
後部座席の男が頷く。
オルフェ・ダリウス。
「俺も賛成だ。今日はホテルで一泊しよう」
隣の席の女――
ミラ・ノクティス は無言で頷いた。
レオンは少し考える。
そして肩をすくめる。
「まぁ…いいか、今夜はゆっくりして
明日ロシアで祝杯としよう」
彼らは完全に油断していた。
数時間後。
国境近くの小さなホテル。
レオン一家は宿泊していた。
1301号室。広いスイートルームだ。
彼らは武器を外し、くつろいでいる。
その頃ホテルのフロントに一人の男が立っていた。
帽子を目深に被った男…ゼン。
フロントマンに話しかける。
「ჩვენს საერთო ენაზე საუბრობთ?」
(私たちの共通言語を話せますか?)
フロントマンは少し驚きながら答える。
「はい…」
その瞬間。
ゼンはポケットから手帳を出す。
宙警連の身分証。
「さっき入った四人組の部屋番号…教えてくへんかな?」
ポケットから札束を取り出す。
「御礼金は…こんぐらい?もうひと束つけとくわ…」
ゼンは笑う。
(こういう時は現ナマが一番や…)
フロントマンは周囲を見てから小声で言う。
「……1301」
ゼンはニヤリと笑う。
「ありがとね、この事は他言無用で…」
ホテルの外。
夜風が吹く。
ゼンはホテルを見上げる。
「13階か…流石に高いなぁ」
軽く首を回す。
そして小さく呟いた。
「ギフト発動…浮遊」
次の瞬間。
体がふわりと宙に浮く。
静かに。
音もなく。
ゼンの体は空中へと上がっていく。
13階の高さ。
ホテルの窓の近く。
ゼンは外壁に立つように浮かびながら様子を伺う。
カーテンの隙間。
部屋の中では――
レオン一家が酒を飲んでいた。
笑い声。
完全な油断。
ゼンは小さく呟く。
「さぁ…そろそろ始めようかな?」
任務はレオン一家の殲滅とリーダー レオンの生け捕り。
ゼンの目が鋭くなる。
今夜…作戦は確実に実行される。
(続)




