ごめんで済めば
ー ごめんで済めば ー
深夜…
聖地ネオ・エリュシオン。
宇宙警察連合本部 通称“宙警連”
正面ゲートが開く。
重い足音、肩に“死体”を担いだ男。
神帝マック・ファイヤ。
職員たちの視線が一斉に集まる。注目の的だ…
「ん?
「あ…神帝様?」
「……え?」
受付担当が固まる。
巡回警備員も二度見する。
「総督…だよな?」
若手捜査官が持っていた端末を落とす。
「あれ?帰ったんじゃ…てか、え?」
ファイヤは平然と歩く。
肩には宇宙手配中の過激活動家レオン一家の一角。
ゼノン・クライドの亡骸。
頭部は正確に撃ち抜かれている。
完璧すぎる一撃。
エレベーターホール前。
休暇上がりの大神官
カガミ・ココミが立っていた。
長い黒髪を揺らし、目を瞬く。
「……ファイヤ様、今日はあがられたのでは?」
視線がゆっくりと死体へ移る。
「え…その死体の人物って……」
ファイヤはにこっと笑う。
「宇宙手配中のゼノンさんだ! ごめん!やっちった…」
静寂。
三秒。
ココミの目が見開かれる。
「えっ!!今回の事件の重要参考人!ごめんで済めば警察はいらないよ!!」
館内に響く怒声。
職員たちがビクッとする。
ファイヤは少し肩をすくめる。
「だって……背後から狙われたんだもん…」
「何ですかその喋り方…可愛くありませんよ!
確保が最優先でしょう!?確保が! 大切な情報源ですよ!?」
「うん、そうなんだけどさ…」
ポリポリと頬をかく神帝。
「反射で“バーナー”出ちゃって」
「出ちゃってじゃありません!反射で脳天撃ち抜かないでください!!」
周囲の職員、必死に笑いをこらえる。
だが状況は笑えない。
ゼノンは重要人物、レオン一家の中核であり裏社会ネットワークの鍵。
その鍵は今、冷たくなっている。
ココミは深呼吸する。
「……状況説明を」
ファイヤは少し真顔に戻る。
「聖地内部に暗殺部隊が入ってる。
ゼノンはその一角だ」
空気が一変する。
「他の四人は?」
「まだいると思う…」
低い声。
「今夜は帰らない方がいいかもな…」
(はぁ…眠い…)
ココミの瞳が鋭くなる。
「総監命令を」
ファイヤはゼノンの遺体を医療班に渡す。
そして振り返る。
「宙警連、第一種警戒態勢」
職員たちが一斉に動き出す。
サイレンが低く鳴る。
聖地は、戦場になる。
ファイヤは小さく呟く。
「次は……半殺しにする」
ココミが即座に返す。
「“生け捕り”です!!」
少しだけ、笑いが戻る。
「ココミ様!報告です!レオン一家がネオ・エリュシオンを出ました!」
「なに…監視は継続…わかったね!」
「はい!」
(何で僕に報告しないのさ…)
ファイヤは少し不貞腐れていた…
(続)
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公開情報
・カガミ・ココミ 二十三歳 女性 from地球
神帝ファイヤに遣える大神官
ギフト"焼却"
宙警連 副総監




