分断の星
ー 分断の星 ー
ポイント・ゼロ奪取。
その一報は即座にノアへ届いた。
ノア艦橋にて統合司令ヒメナが告げる。
「進路変更!ポイント・ゼロ」
巨大な宇宙空母ノアは、
静かに舵を切る。
だが戦場は宙域だけではなかった。
太陽系全体でダヴィンチ派の活動が急激に活発化する。
情報戦に扇動、資金供給。
地球では特に顕著だった。
宇宙連合に不満を持つ政治家や連合主導経済に反発する企業体、独立を掲げる地域ブロック。
そして活動家。
「宇宙連合は地球を太陽系を搾取している!」
「奴ら神帝は選ばれた存在ではない!」
「神など詐欺師だ!殺せ!」
「引きずり出せ!謝罪させろ!殺せ!殺せ!殺せ!神など不要だ!」
デモが拡大。
宇宙港の封鎖わ領海・空宙圏の閉鎖宣言。
一部地域では連合関係者の拉致まで発生。
「やめてくれ!話し合おう!うわぁー!」
グシャ…
無惨に殺される者も…
秩序が軋み始める。
ノア艦橋に報告が次々と入る。
「地球圏で暴動拡大」
「ダヴィンチ派との関連濃厚」
「宇宙連合治安部隊、出動」
タカヤは窓の外を見つめる。
「……戦場は宇宙だけじゃないな」
ウォンは静かに答える。
「思想はより厄介ですから…」
ダヴィンチの狙い。
それは単なる軍事勝利ではない。
“連合そのものを内部から崩すこと”
撃ち合いよりも速く分断は広がる。
星は割れ始めていた。
聖地――ネオ・エリュシオン。
宇宙警察連合本部。
通称、宙警連。
巨大な円形執務室の中央で、
神帝マック・ファイヤは額を押さえていた。
机の上には山積みの報告書。
地球圏暴動拡大。
宇宙港封鎖。
拉致事件。
ダヴィンチ派資金ルート不明。
内部協力者の存在示唆。
「……はぁ、しんど…辞めたい…」
珍しく、深いため息。
副官が恐る恐る告げる。
「総監、月軌道治安艦隊より応援要請です!」
「木星圏でも暴徒化の兆候あり!」
「連合議会は即時鎮圧を求めています!」
ファイヤは椅子に背を預け、天井を見上げる。
「まだ何もしていない保護対象に攻撃などできん!」
(困った…困ったぞ…俺は立場上こう言うしか無い…)
静かに呟く。
「敵がはっきりしてる方が、まだ楽だ…」
宙帝なら撃てばいい。
海賊なら捕まえればいい。
だが今は違う。
相手は、市民。
怒り、不安、疑念がファイヤを襲う…
それを煽るダヴィンチ。
「ちくしょう…裏切りやがって……胃が痛い…」
拳が机を軽く叩く。
だが怒りよりも、疲労の色が濃い。
モニターには地球の映像。
燃えるデモ、叫ぶ群衆、封鎖された宇宙港。
ファイヤは立ち上がる。
その目は、もう迷っていない。
「鎮圧は最小限。発砲は最後の最後だ、情報部を総動員しろ。ダヴィンチ派の資金と通信を洗え!」
「治安は守る。市民を敵にするな!」
副官が静かに敬礼する。「ハッ!」
宇宙警察連合、全域警戒態勢へ。
ネオ・エリュシオンの空に、
警備艦隊が次々と浮かび上がる。
「保安業務もしんどいなぁ…」
(続)




